63
「嫌いだったら別に嫉妬なんてしないだろ?誰でも好意的な人には自分を良く見られたいだろ?それと一緒」
「……」
「お前も本当は嫌いじゃないと思うぞ?」
「私はお父さんを嫌いなんて…」
「母さんの事」
「…………」
「本当は好きなんだと俺は思うぞ。相手が生きてるうちだぞ素直になるの」
「…………」
いつもなら直ぐに言葉を返せたと思うのにこの前のお母さんを思い出しちゃった
ずっと寝てる私の手を握ってくれてたお母さん
生きてるうち……お兄ちゃんはお父さんともう話す事も褒めて貰う事もないんだ
私は……
『弥生』
お母さんとは話せるし褒めて貰う事もこれからして貰えるかもしれない
けど…
素直になりたくても…
もう生きてない相手がいるよ
お兄ちゃん
「弥生ちゃん?」
「先生」
病院の入口付近の椅子に座ってると楓先生に話し掛けられた
この病院って狭くないのに…本当良く会うなぁ
「どうしたの…こんな所で」
「えっと……」
「お母さんのお見舞い…あ、診察?」
自分の頭を指して聞いてくる
「まぁ……そんな所ですかね…」
「………」
「………」
やっぱり…鈍そうな先生でも言葉に詰まるくらい怪しい返しだったかな
「何か悩み事でもある?」




