60
「事故に遭った男の子の事……お兄ちゃん知ってる?」
お兄ちゃんならお母さんより教えてくれる率高いよね
「なんで?」
「え?」
「何でそんな事言うの?」
「何でって……気になったから…」
なんか……お兄ちゃんの声が……怖い
私の声は自然と小さくなる
しかも夕飯作りの手を止めてるし
「…そんな事考えるな」
「でも……やっと…」
やっと…来斗君の事を思い出したんだもん
やっぱりあのまま幽霊なんて可哀想だ…しかもよく解らないままなんて
少しでも来斗君の力になりたい
「やっと?お前は…あの時の事本当に思い出したのか?手だけじゃなく顔にも血が……」
「……っ……痛いよ……何……」
両肩をグッと掴まれる
お兄ちゃん?
「お前は思い出してないよ…全部なんて」
「…………」
「そりゃ、少しは思い出したかも知れないけど…全部思い出してたらそんなに冷静じゃないよ」
「全部って」
「思い出す前に病院行け俺からはそれだけ、この話は終わり」
「…………」
掴んでた手を離して私から向きを変えてまた夕飯作りを再開してしまった
普段は声を大きく出したり怒ったりしないお兄ちゃんを本気で怒らすと本当に怖い
これ以上は……駄目かな
「一番聞けそうだったんだけどさ……駄目だったよ」
夕飯を食べてお兄ちゃんがお風呂に入ってるのを確認して仏壇のお父さんに話し掛ける
「ねぇ、お父さんが居たら」
柔道をやる事に賛成してなかったお母さんの代わりに送り迎えや試合の応援はいつもお父さんが来てくれた
たまにお兄ちゃんも来てくれたけど
「身内で来斗君を知ってたのはお父さんだけだったのになぁ……」




