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「いい?大人しくしてるのよ?」
「わかってるよ…そんなに言わなくても…」
退院する為に帰りの準備をしてる私にお母さんは何度も同じ事を言う
「何度も言わないと貴女はわかんないでしょ?」
「……はいはい」
珍しく心配してくれてるかと思ったら…やっぱり只のお小言じゃん
予定通り私は翌日退院する事になった
「お兄ちゃん迎えに来るから待ってなさい」
「近いのに」
たいした荷物類がある訳じゃない
多分普通だったらお母さんはこんなに世話を焼かないと思う……それはそれで悲しいけど
頭の痛みより私の記憶を心配してる
「弥生!お兄ちゃんが迎えに来たぞ!」
「………」
『お兄ちゃん』をいやに強調して……元気の固まりみたいな人だよ
「弥生、昨日も言ったけど…お母さんが退院したら病院に行くからね?」
『良いわね?』と念を押す様に私の手をギュっと握る
「………」
「じゃ帰ろう……っと!」
「あっ……すみません」
私の鞄を持ってお兄ちゃんが病室を出ようとすると楓先生とぶつかった
「楓先生」
「間に合った…弥生ちゃん退院おめでとう」
「おめでとうって…たった1日ですよ…それに誰から聞いたんですか?」
「1日でも退院は退院だよ、おめでたい事だから……弥生ちゃんが昨日会った先生に聞いたんだよ」
昨日会った先生?
『カウンセラーよ』
「あ!あのカウンセラーの女の人」
「そう、同期なんだ、それで聞いたの」
「……それだけ?」
「え?」
あんなに綺麗な人と同期の関係だけかなぁ……でも楓先生の食生活は乱れまくってるし
「じゃなくて!先生…あの…千春ちゃん…」




