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巣立ち

それから数週間後……


全ての羽が生え変わると、雛達は巣を飛び立って行った。


「…………お前達……いっぱい食べて大きく強くなるんだよ。

冒険者なんかに負けるんじゃないよ。

風邪引くんじゃないよ!!!

行ってらっしゃいーーー……」


その言葉は、届きはしないが雛達には伝わったであろう。


そう思いながら……俺は、風に飛ばされていた。





風に飛ばれ……街に着いた俺は、路地裏で

ボロ雑巾の様になっていた。


誰にも拾って貰えない現実に絶望し……

クリーニングの魔法すらかけない姿は、まるで学校で使い古されたボロ雑巾その物。


そこに、ちらちらと雪も降って来た……


「ぁぁ……この雪に埋もれて春までは、太陽すら拝めなくなるのだろう……」


すると、何処からか声が聞こえて来る。


まぁ、路地裏では珍しくもない。


至る所で窃盗やら揉め事、喧嘩が行われている。


「また、誰かが喧嘩でもしているのか?」



「おい! フィン、役立たずのお前は、装備と服を没収だ!!!」


「そうだな! そのぐらいしねーと、俺達の気がおさまらねー!!!」


「ごめんなさい。ごめんなさい。

次は、ちゃんとしますから服だけは勘弁してください。」


白髪の10歳前後の少年が謝るが、数人の大人達は許す事なく装備から衣服まで取り上げた。


「寒い……雪も降ってます。

お願いします……服だけは勘弁してください。

本当に死んでしまう」


「ごちゃごちゃ、うるせーな!!!

お前なんか死んだって誰も困んねーんだよ!」


そう言って大人達は、すがりつく少年を動けないくらいに痛めつけて、その場からいなくなった。


そして、数分後……ヨロヨロと立ち上がった少年は、寒さで凍える体を両腕で抑えながらトボトボ路地裏を進んで行った。



「…………何だアイツ!? 何で裸なんだ?」


もしかして、さっきの喧嘩でも身ぐるみでも剥がされたのか?


『あの少年であれば、拾う可能性が非常に高いと思われます』


「……確か!!! これは、仙台一隅のチャンス!!!

まずはクリーニングで自分をキレイにして!

それから……それから……気づいてもらう為に……」


オォォーーーノォォォーーー!!!


「雪が邪魔して、気づいて貰えない!!!

どうすれば……どうすれば!?

だ……大賢者!!! 何か良い策はないか!?」


『一緒に少年が気づいてくれる事を願いましょう。』


「…………ふざけんなーーー!!!

こんなチャンス! もう二度と無いかもしれねーんだ!!! しかも、願う!?

誰にだ!!! 神にでも祈るのか!!! 

俺は、俺をこんな姿にした神になんぞに死んでも願うもんかーーー!!!」


すると、上に覆い被さっていた雪が溶け始めた。


「……何だ!?」


『興奮した事で雪が溶けたのだと思われます』


「なにーーー!!! それだ!!!」


それから俺は、ありったけ騒ぎまくった。


少年に声は、聞こえる事は無かったが雪を溶かす事には成功した。


そして……


「……寒い…………寒ぃ…………ぁれ……これは、何だろう……?」


少年は、道端に落ちていた布切れを持ち上げると……


「…………服……?

全身タイツ………………………………………………

………………………………………………………………

………………………………………………………………

背に腹は変えられない…………………………。」


「…………今悩んだよね!?

この状況で、悩むものなの? 

にしても、この子……悩み過ぎじゃね!?」


そして、少年はドクロが描かれた全身タイツを着ると


「……こんなに薄いのに、凄く暖かい……」


その言葉を残して、壁に寄りかかると

そのまま寝てしまった。


「おい! まて、少年……こんな所で寝ては本当に死んじまうぞ!

起きろ! 起きろ! 起きろ! 起きろーーー!!!」


「zzz……」


「大賢者! 何かいい方法は?」


『身体操作で、この者の体を動かす事が出来ます』


「それだ!!!」


そして、俺は眠った少年の体を乗っ取ると……言い方が悪かった。


少年の体を借りると、立ち上がり少年の為に宿を探す事にした。


しかし、路地裏を出る前に


「大賢者……いくら他人の体でもドクロの全身タイツは恥ずかしい。

何かいい方法は無いか?」


『羽毛を摂取した為に、ダウンコートになら変身可能です』


「ダウンコート……今の季節にピッタリじゃないか!!!

あの子達の羽毛がこんな所で役に立つとは……

あの子達を一生懸命育てて良かった。」


そんな事を思いながら少し涙を浮かべると、ダウンコートに変身した。


「よしッ! これで恥ずかしくないぞ!!!」


『…………。』


「なに?」


『いえ、結構です』



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