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短パンうんこ  作者: 理科準備室
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3年生がドッチボールしているとなりで

体育かんに入ると3年生がドッチボールをやっていた。ちらりと見るともうゲームは終わりらしく、一方のチームのまだ当たっていないで内野にいる子は2~3人だった。どちらのチームの子もドッチボールに夢中で、その後ろのぼくに無かん心だった。

 でもそんな3年生たちにもうんこで便じょに急いでいるぼくを気づかれたくなかった。その子たちのずっと後ろの体育かんのかべ沿いのろく木のすぐそばをかけぬけていこう思った。ぼくはその時にもうおなかが痛くてもう思い切り走れなかった。走るとおしりがシゲキされて出そうだった。でも早く行かないともれてしまうかもしれなかった。ぼくはおなかに手を当てながらつま先立ち気味に小走りに行くのがやっとになっていた

 その間、この先に行くと校しゃとつながるわたりろう下がある。でもそこに行かずに左に曲がってさらにかべ伝いに行くと体育用ぐ室とその入口があって、その先に男女共通の手あらい場とその両わきに体育かんの男女べつ便じょがあった。

 きょ年の冬にこの体育用ぐ室の中にあったとび箱とたっきゅう台の間にうんこがしてあったのが見つかって大さわぎになったことがあった。

 そのときぼくも見にいったけど、体育用ぐ室に入るとちゃいろいズックの足あとがいくつも残っていた。そしてその先に行くと、はっきりとズックでふんだあとのある下りのどろっとしたうんこがゆかにひろがっていた。そのそばには紙のかわりにおしりにこすりつけたあとがあるドッチボールがころがっていて、少しもらしてうんこがついたパンツがぬぎすててあった。

 そのパンツは2年生の子の名まえが書いてあったけど、4年生のぼくにはその子のように体育用ぐ室ではできなかった。便じょに入って、さらにしゃがむ方に入って戸をしめてカギをかけてズボンとパンツを下ろして便きにしゃがめば、ぼくはラクになるんだ、そういう自分の姿をなんども想像しながら、ぼくは体育かんの便じょに向かった。前の休み時間の時のように、便じょにだれかいたらどうしようみたいなことは考えなかった。

 でも、手洗い場の前に来たとき、ドッチボールをやっていた方に笛が鳴った。最後の一人にボールが当たって試合終りょうになったんだ。そのときぼくはちょっと不安になることを思い出して立ち止まってしまった。昨日の昼休みにおしっこでここの便じょに入ったときに入口に入れないようにビニールのひもがはってあって「このおべんじょをつかわないで」と書かれてあったんだ。でも、もうガマンできないし、はいっちゃえとぼくは思った。

 すると白い体操ぼうをかぶった顔を合わせたことがない一人の3年生の子が息を切らして走ってきてぼくの前を横ぎって先に便じょにかけこんでいった。大か小かわからないけど試合中ずっとガマンしていたみたいだった。体育かんの便じょにはしゃがむ方は一つしかなかったし、その子が入った後入るのはイヤだけここに立ち止まっているわけにはいかないので、仕方なくすこしきょりを置いてその子の後ろについていった。

 その子は便じょの入り口に一ど立ち止り便じょ備え付けのスリッパをはくと、まっすぐ走って行った。昨日はってあったビニールのひもがなかったのはよかった。ぼくもスリッパをはいて入って行くと、その子は三つある小便きの一番左の前に立ちチャックを開けてちんちんをつまみ出そうとごそごそやっていた。しゃがむ方はその向かい側にあったけどその子が便じょにいる間に入る勇気はなかったので、一つ間をおいて一番はしっこの小便きの前に向かい、ぼくもふつうにチャックを開けてちんちんをつまみ出しておしっこするふりで、その子が終わるのを待つことにした。

 それまでガマンしていたらしいその子のおしっこは勢いが強くてじょーっとものすごい音を立てた、顔も気持ちよさそうだった。はやく終わってくれないかな、それだけを思いながら、ぼくもおしっこをしてみた。でも、ほんのぽたぽたしか出なかった。下りなのでおなかの痛みもひどくなってきて、これ以上出そうとするとおかしなところに力が入ってうんこも出そうだった。

 その子がおしっこしているあいだだけでもおなかの痛みを忘れようと、ぼくは仕方なく目の前のアルミサッシのすきとおるガラス窓を見た。すぐ外は空き地でその向こうはこの厚葉小の鉄きんコンクリートの本校舎だった。本校舎の目の前の1階は給食ちょうりしつになっていて、すりガラスの窓の向こう側で給食のおばさんが給食を作っているかげがはっきり見えた。2階は第一音楽しつ、3階は図書しつで、2階からぜんぜん合っていないたて笛の合そうの音が聞こえてきた。

あの図書室に国語の授業で本を読みに行ったとき、そこの窓から見下ろせば体育かんのこの便じょの中が丸見えになることにぼくは気づいた。そのとき、だれか目の前でしゃがむ方に入らないかなと期待してしばらく見ていたけど、今、同じ窓からだれかがこの便じょをのぞいていたら、ぼくはその子の目の前にもうすぐしゃがむ方に入ることになるんだ。そう思うとぼくの胸がドキドキした。

 そして、となりの3年生の子はおしっこが終わると、そそくさとちんちんを短パンにしまいチャックを上げて、はいているスリッパでバタバタと大きな足音を立てながら大急ぎで体育かんにもどっていった。いやだな、あの3年生は流すの忘れている、そう思いぼくもちんちんをしまいチャックをあげるとボタンをおした、あれ水出ないな、おしっこだからまあいいや、とそのときは思った。

 そして足音が聞こえなくなったのを確認するとぼくはふり向いた、すぐそこにしゃがむ方があった。そこはうすい灰色にぬられた木の厚い板で区切られていて、ふだんは戸が開いていて、使う時だけ内側から戸を閉めるものだった。

 この体育かんの便じょは本校しゃの教室の近くにあるのとちがって、おしっこでもあまり使う子はいないし、ぼくもたまに昼休みに体育かんでおにごっこしている最中におしっこしたくなったときに使うだけだった。そういうときはいつも「たんま、ちょっとおしっこ!」とかけこんでいくけど、ときどき、1年生から6年生までいろいろな学年の子が取り巻いていることがあった。もちろん、そのしゃがむ方にあるのはだれかがしていったまま流されていないうんこだった。

 ぼくも気になってその子たちの間からのぞくと、今ぼくの足元にある灰色のタイルにうめこまれた白い便きの底にあるのは、下りでおなかをこわしたときのやわらかいうんこじゃなくて、ふつうくらいか、ふつうよりかなりかたそうな小さなバナナかソーセージ2~3本あるのしか見たことがなかった。底のほうにはそこにたまっていた水に茶色いしるがにじみだしているのが見えた。

 たぶん体育かんで遊んでいる最中にうんこしたくなって、さっきのおしっこしていった4年生のように大あわてで便じょにかけこんで、友達にバレないように大急ぎでうんこして流すのを忘れたみたいだった。ときどきおしりふくのまで忘れたらしくペーパーがその上にのっていないとか、はみだして便きのふちや周りのタイルの部分をよごしてしまっているということもよくあった。

 そのうんこを残して行った子はもう体育かんで何事もなかったように友だちと遊んでいるかもしれないし、教室にもどっているかもしれないし、もしかすると知らんぷりしてしゃがむとこを取り巻いている子たちに混じっているかもしれないけど、それを見ている子たちはまるでそのうんこを残していった子がそこにいるかのように「だれ、こんなのしたの」とか「学校でうんこするやついるんだ」とか「きたねー」とか「くせー」とか口々に冷やかしていた。

 ぼくもそのうんこを見て何だか腹立たしい気ぶんになった。みんなの学校でうんこに行っていいのはおなかをこわして下りのときだけなのに、どう見てもおなかをこわしたときでないふつうのうんこで家までガマンできないで学校でしていく子がずるで許せなかった。こんなうんこだったらぼくだったらぜったい家までガマンした。しかもそのうんこをわざわざみんな見せるなんて犬か赤ちゃんだけで、すごくバカみたいに思えた。それでぼくもその子たちにならって「学校はうんこするところじゃないのに」とか「家までガマンできなかったの?」とか冷やかした。

 でも、ぼくはそれだけでなくいつも便きの両はじに黄色のペンキでえがかれてある足の絵も気になった。便きにしゃがむとちょうど目に入る位置に「おべんじょをきれいにつかいましょう」書かれた張り紙とともに、しゃがむ方を使う時はその足の絵の上に足を置いてしゃがむポスターがはってあった。便きのまわりのタイルは全体的に黒ずんでいてて少しきたなかったけど、たくさんの子たちが足を置いたせいか、その絵の付近だけ足の形によごれがうすくなってきれいだった。それは流さなかった子だけでなく、みんなが学校なのに、ここでこっそりうんこをしていった証こだった。

 ぼくはその足の絵と便きに残されたうんこを見るたびに、だれだか知らないけどそのポスターのように足の絵の上に足を置いてズボンとパンツを下ろし、そしてしゃがんでいるみんなの姿がいつも本当にそこにいるかのように目の前に現れた。その子は足の絵をふみしめながらうんこをおし出そうと必死にいきんでいた。すると茶色くて固いうんこのかたまりがぼとぼとおしりから便きに落ちた。そのときのぼくはうんこは出なかったけど、そのかたまりのくびれやごつごつした部分がおしりの穴を通りぬけるときの気持ちいい感じがぼくのおしりの穴にも伝わったような気がした。それは家の便じょだったらまだいいけど、絶対学校だったら感じてはいけないようなエッチではずかしい気持ちよさだった。おまけにおちんちんまですこしかたくなった。

 ぼくはそんな気持ちよさを感じたのがはずかしくなって、ますます「きたねー」とか言ってそれを冷やかした。ここでだれもうんこできないようにホルダーや上のたなにあるよびのトイレットペーパーをかくしたり便きにの前の方の水やおしっこのたまるところに落とすいたずらもときどきやった。同じいたずらでも他の子をたたいたりなぐったりするようなその子にとって痛くて傷つくことをされるのは自分も同じように痛いような気がしてぜっ対にやってはいけないことだと思っていたけど、うんこしようとしてここにきた子がトイレットペーパーがフォルダーにないのを見つけたとき泣きそうな顔になるのは想ぞうしただけでおかしかった。できたら、その場でおしりから出るまでがまんさせてみたいとか、一年生のころ、トイレットペーパーがなかったプールの便じょで手でおしりをふいて、ゆびについたうんこをかべにこすりつけてあるのを見たことをあるけど、それがまた見れたらおもしろいだろうなといろいろなことを考えて楽しんだ。

 でも、もれそうなのはぼくだった。それも想ぞうだけのときの固いうんこはエッチで気持ちよかったけど、いまのぼくのは下りのやわらかいうんこのせいか、ふつうのはき気なら口から出てくるものが反対におしりの穴から出てこようとしているみたいで気持ち悪くて仕方がなかった。おまけにおなかの痛みまで増していた。今、それをあの便きに出してしまえばラクになっておなかも痛くなくなるんだ。まだ何もない目の前の便きの底には、お なかの中のぼくのうんこが同じように便きの底に横たわる姿がちらついた。

 今、便じょにだれかが入ってきたり、あの三階のとしょ室の窓から見ていたら、どう見てもそんなぼくの姿はあのさんざんバカにしたあの子と同じことをしようとしているとこだった。そんなところが見つかったら、みんなにばらされて「うんこもらし」とずっと言われ続けるだろうな。それどころかみんなが集まってきて入っているところを下や上のすき間からのぞかれるかもしれなかった。

 でも、それをおしもどそうとおしりの穴をしめたら、胃の中に逆りゅうしてその場ではきそうになった。ぼくはもう何でもいいから出してしまいたいという気持ちの方がだんだん強くなっていくのを感じた。迷っているうちに本当にうんこがこの場でおしりの穴を通りぬけたら。その時ぼくは学校で本物の「うんこもらし」になってしまう。流さずにうんこをしていったあの子よりもっとバカになってしまいそうだった。しかも便じょのしゃがむところの戸の前でもらすのはいちばんかっこわるいうんこもらしだった。

 そのときちょうどあの三年生たちがドッチボールの試合を再かいする笛の音が聞こえてきて、ぼくも思い切ってしゃがむ方に入ることにきめた。

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