第五話 盗賊への備え
どれを選ぶか・・・、うん、レイスとカースソードは無しだ。
レイスは盗賊の中に魔法を使えるやつがいなかったらレイスを選んだけど、残念ながらいる。
カースソードも俺が使おうかと思っていたが、俺は前線に出る気はないから必要ない。
配下のアンデットに持たせようとも思ったが、ちゃんと剣を扱えるのか分からないのでやめておいた。
残るはグール、スケルトン・アーチャー、スケルトン・ソルジャー、この中で相手が人間だった場合、一番勝てる可能性が高いのはスケルトン・ソルジャーだ。
だが距離があいているか壁さえあればスケルトン・アーチャー、傷さえつけることができればグール。
・・・よし、決めたスケルトン・アーチャー二体、グール一体にしよう。
残りのDPはそこらにいるゾンビなどを配下にするのに使う。
そうと決まればさっそく生み出す。
ダンジョンコアから三つの赤い光が飛び出しそれぞれの形に変化し、三体のアンデットが現れた。
良かったちゃんと武器は持っている。
これで武器が別料金だったら終わっていた。
残るDPは11。
8DPを使いダンジョンにいるゾンビを新たに二体使役する。
残りDPは3。
少し悩んだが俺は残りのDPすべてを使って弓と矢20本を生み出した。
「お前たち命令だ。武器を持った状態でダンジョンのこの部屋の入り口に並んで中にいるゾンビを出さないようにしろ。スケルトン・アーチャーとグールはあと新しく使役したゾンビは俺についてこい」
ダンジョン内にいる集めてきたゾンビは囮として使う。
具体的にはダンジョン内に入ろうとした瞬間に野良ゾンビたちを外に出れるようにして一斉に盗賊たちに襲いかからせる。
そして配下のアンデットが野良ゾンビを盾にして攻撃する。
野良ゾンビは約30体、できればこいつらに気を取られているうちに数人倒しておきたい。
俺はダンジョンの外に出るとダンジョンの入り口から近くの死体置き場に行った。
この死体置き場はダンジョン内で倒したゾンビの死体?によってできている。
ダンジョン内にあると邪魔だからとりあえず外に出して放置してたのだ。
そこで俺は命令を出す。
「ゾンビとグールはここで死体に紛れて待機、盗賊がやってきてダンジョンの中にいるゾンビと戦い始めたら背後から襲え。あとグールは最初はゾンビの後ろにいろ。盗賊が前にいるゾンビを斬った時に本気で攻撃をしろ。それまでは目立つような真似はするな」
これで盗賊は不意を突かれるはずだ。
ただのゾンビだと思って油断していたらグールの攻撃で倒せる。
相手がアンデットに詳しくなくてバレなかったらだけど。
これで挟み撃ちの状態で不意を打つことができる。
他にも不意を打つ方法はいくつかある。
一つはゾンビに隠れて弓での攻撃、相手はゾンビしかいないと油断しているからかわせないはずだ。
もう一つはゴーストを地中に隠れさせて攻撃する方法。
後は、できるかどうか賭けになる方法が一つ。
俺はグールを配置したらダンジョンの中に戻り一番奥まで進んだ。
「ゴーストは俺の近くに来い。スケルトンもだ」
ゴーストとスケルトンはダンジョンの入り口からダンジョンの奥に配置した。
ゴーストは最初に使うのはもったいないから、そしてスケルトンは荒野では珍しいから見せない方が警戒されないと思ったからだ。
作戦としては最初に盗賊たちをダンジョンに入れて、中に閉じ込めているゾンビに攻撃させる。
次に攻撃されている盗賊の後方からゾンビとグールで挟み撃ちにする。
ゾンビはすぐに倒されると思うが、ゾンビだと思っていたやつが急に素早く動けば一人は倒せるはずだ。
グールはそのまま頑張ってもらって何人か毒を流し込んでほしい。
これで盗賊の数は7人、グールの頑張りによっては6人になる。
盗賊は自分たちの後方で攻撃され仲間が死んだら振り向かざるをえないだろう。
その隙に弓を射る。
狙うは魔法を使える盗賊、あいつさえいなければゴーストが一方的に攻撃できるはずだ。
あと、弓を生み出した理由は俺が使うからだ。
軍人の時は魔法ばかり使っていたが俺だって弓ぐらい使ったことはある。
的がそこまで離れていなければ当てることはできる。
三か所からの攻撃すべてをかわすことはできないはずだ。
これで盗賊は5人か6人になる。
そこからはゾンビの盾があるうちにどれだけ盗賊を殺せるかだ。
集めた野良ゾンビと配下のゾンビを合わせれば50体ぐらいいる。
盾が無くなるまでに残りの盗賊を殺し切れるかがこの戦いのカギだ。
ちなみにダンジョンの中で戦うのはDPを回収するためだ。
集めてきたゾンビと盗賊、配下のアンデットが死んだらDPが溜まる。
溜まったDPを使えばランク2のアンデットをまた生み出せるかもしれないからだ。
はあ、こんな作戦で盗賊を倒せるか?
だんだん不安になってきた。
そもそもこのダンジョンは狭くてアンデットがすし詰め状態だ。
こんなのを見れば盗賊はダンジョンに入ってこないかもしれない。
一番最悪なのは、野良ゾンビがダンジョンからでないように抑えている配下のゾンビだけを、魔法で遠くから倒して野良ゾンビをダンジョンの外に出された場合だ。
こうなったらダンジョンの奥で構えることはできなくなり俺も一緒にダンジョンから出ないといけなくなる。
一ヶ所からしか攻められないからゾンビがまとまって壁として活きるが、二か所以上から攻められるとゾンビが分散されてしまう。
そうなれば各個撃破されて終わりだ。
・・・こんなことを考えるのはやめよう不安になるだけだ。
弓の練習をしよう、少しでも練習して勘を取り戻さないと。
盗賊が来るまで弓を撃つ練習をしていると盗賊たちの声が聞こえた。
ついに来たか、絶対に生き残ってやる。
「おい、まだ着かないのか」
「もうそろそろですぜお頭。かなり近い」
「そうか」
この荒野に入ってからもう何百体ものアンデットを殺した。
俺様は大丈夫だが子分はかなり疲れてやがる。
怪我はしてないが動きが鈍くなっていつもより弱くなっていやがる。
この調子だとこの荒野から帰れるのは半分ぐらいか?
まあ取り分が増えるからいいか、こいつらの代わりは探せばいくらでもいる。
だがこの魔法の才能があるやつは死なねえように気をつけねえとな。
そんなことを思いながら進んでいると奇妙なものが目に入った。
「なんだあれ?死体が積み上げられている!」
「うわっ」
「あれ、全部死体か!」
荒野の中でアンデットはいくらでも見たが、あんなふうに積み重ねられているのは初めてだ。
明らかにここは異常だ。
だがこれで分かったぜ。
「間違いねえ、あそこが魔力の中心だな!」
「ボス違いやす、あっちの洞窟が魔力の中心ですぜ」
魔法の才能がある子分が死体の山の横にある洞窟の方を指さした。
「そ、そうか、おい、さっさと行くぞ!!」
クソッ、恥かいちまったじゃねえか。
今の大声でアンデットとか集まってこねえよな?
まあ、いい急ぐか。
「待って下せえお頭、この死体の山調べないんすか?」
「こんな不気味なとこに長い間居られるか、さっさと魔力の原因を調べに行くぞ、ほら行け!」
「分かりやした」
洞窟の入り口はあまり大きくねえから並んで通れるのは2、3人が限界だな。
とりあえず子分を3人先に行かせて様子を見るか。
魔法の武器の中には危険な物もあるからな、先にあいつらに触らせて安全かどうか確認しねえと。
すると洞窟の奥から子分の声が聞こえた。
「ゾンビだー--!」
たかがゾンビで何を言ってるんだ?
あんなの余裕で倒せるじゃねえか。
「お頭、数が多い。助けてくれ!」
「ぎゃあああぁぁぁ」
洞窟で反響した悲鳴が俺に届く。
今ので一人死んだな。
いくらゾンビが雑魚でも数が多ければ負けるか。
洞窟の入り口は下り坂になってるからここからだと洞窟の奥が見えねえな。
「ちっ、しゃあねえな。おめーら行くぞ。俺様についてこい!おい、お前だけはここでアンデットが入ってこねえように見張ってろ」
「分かりやした」
俺様が洞窟の坂を降りて暗い中見えた光景は、子分の一人がゾンビにかみ殺され残りの二人は背中を壁に当てて戦っている姿だった。
暗くて分かりずれえが洞窟の中はゾンビだらけだ。
クソッ、なんでこんなにゾンビが居やがるんだよ!
これも魔力の影響か?
まあいい全部ぶっ殺してやる。
手に持っている斧を斜めに振り下ろす。
それだけで一体のゾンビは真っ二つになり、二体のゾンビが数体のゾンビを巻き込んで倒れた。
「雑魚が、こんなのいくらいても関係ねえ!さっさと倒して魔力の原因を探すぞ」
「グハッ、お頭。う、しろ、だ」
今度は後ろから悲鳴が聞こえた。
なんだ?見張りを命じた奴の声だ。
もしかして見張りが死んだのか。
入り口の近くにはあまりアンデットはいなかったぞ。
数体程度のアンデットで死ぬほど俺の子分は弱くねえ。
ランク2以上のやつがいるのか?
あいつ、魔法を使えるやつは子分は前線より後ろにいる。
俺様と一緒に外に出るより、ゾンビしかいねえここの方が安全か。
「おめーらはここでゾンビをぶっ殺しとけ、俺は外に出る」
「分かりやした」
坂道上り始めるとちょうどあっちも来やがった。
来たのは二体どちらもゾンビだ。
こんな奴にやられるとは思えねえ、まだ上にいるのか?
とりあえずこの雑魚は邪魔だな。
「死ね」
ゾンビを一回の攻撃で倒したいが、ゾンビの間隔が開いているから無理だな。
一体目のゾンビを斬る。
それを合図に後ろにいたゾンビが急に走り出し俺様に襲いかかった。
速い!間合いに入りこまれた!
「オラッ!」
襲いかかってきたゾンビを膝蹴りで距離をとる。
クソッ、膝をひっかかれた。
ゾンビを斬って腕が振り下ろされている状態になったところを狙われた。
俺様に隙ができてから本気を出しやがった。
こいつはアンデットのくせに頭がいい、そして雑魚じゃねえ。
だが俺に勝てるほど強くはねえ。
不意さえ突かれなければひっかかれたこともなかった。
また飛び掛かってきたが、今度は首のところを斬ってやった。
急に襲いかかってきた時は驚いたが、結局ただの雑魚だったな。
「ガッ、ア」
また悲鳴が聞こえた。
まったく、どんだけ死んでんだ?
さっさと戻らねえとな。
「なんでこうなってやがる?」
戻った時には、子分の半分が死んでいた。
俺がいない数十秒でだ。
その間にこれだけ死ぬのはおかしい。
いったいこの洞窟はどうなってやがる。