表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/7

第四話 来訪者達

 人の群れがやってきた。


 その報告を聞いた瞬間かかないはずの汗がダラダラと流れ落ちた気がした。

 俺はアンデットと話せるわけではない、だが伝えようとしている内容がなんとなく分かる。

 これは俺がアンデットだからではなくダンジョンマスターだから起こった現象だと思う。

 なぜならダンジョン外のアンデットに試してみた結果意思疎通はできなかったからだ。

 恐らく配下のアンデットしか意思疎通はできないのだろう。


 そして配下の魔物はダンジョンマスターに絶対服従だ。

 だから嘘をついている可能性はない。

 ・・・嘘だろ、早すぎるだろ!


 まだ戦争が終わってそんなに経っていないはず、まさかもう一年経っていたのか!?

 そんなはずない、もし軍隊が来たのならこの霧を吹き飛ばすはずだ。

 それに俺の種族はフレッシュゾンビだ。

 新鮮な死体ではないとなれない種族だからそんなに日は経ってないはずだ、・・・多分。


 もし仮に前回の戦争からあまり日が経ってないとしたら、今来ている何の目的があるんだ?

 遺品を探しに来たのか?それとも生き残りを探しに来たのか?

 まさかこのダンジョンに気づいたわけではないよな?

 だとしたらまずい。


 相手が軍人だった絶対に勝てない。

 軍人は最低でもランク3、そして平均はランク4の強さを持っている。

 このダンジョンすべての戦力で戦ったとしても奇跡でも起こらない限り勝てない。

 そして絶対に奇跡的は起こらない。

 なぜなら軍人は最低でも6人一班で行動しているからだ。

 例えどんな奇跡が起きようと軍人6人相手に勝てるわけない。


 はあ、こうなればダンジョンに隠れて相手がダンジョン目的でないことを願うしかないか。

 それぐらいしかできることないし。

 そういえばゴーストは人の群れと言っていたけど具体的にはどれぐらいの規模なんだ?

 班か、分隊か、小隊か、まさかか師団並みの戦力じゃないよな?


「おい、ゴースト人の群れは何人いた?」


 ゴーストからはよく分からないと伝えてきた。


「もしかして数を数えてないのか?」


 またしてもよく分からないと伝えてきた。

 まさかと思うが、数という概念がないのか!?


「数って知っているか?」


 ・・・、そうか知らないのか。


「じゃあ俺たちより多いか?それとも少ないか?」


 少ないと伝えてきた。

 少ないのか。

 今は配下18体と俺を合わせて合計19体これより少ないということはやってきたのは班か小隊ということになる。

 ギリアニス帝国は6人を一班とし、そこから三個班で一個小隊、三個小隊で一個中隊、三個中隊で一個大隊といったふうに3倍になるごとに単位が増えていく。

 だから中隊規模の敵が来ているわけではない。

 ゴーストが数え間違えているという可能性もあるけど、・・・まあどっちも勝てないから一緒か、・・・はあ。


 相手の大体の数が分かったが、まだ足りない。

 もっと情報が欲しい。


「その人の群れはどっちから来たんだ?」


 するとゴーストは東の方向を指した。

 帝国のほうから来たのか。

 俺が死んだ場所は確か荒野の中央ぐらいだったはず、いや逃げた時に移動したからやや帝国よりだったかな?

 まあ詳しい場所は分からないけど今はあまり関係ないか。


「それで距離はどれぐらいある?」


 少し遠いか・・・、具体的な数値を言ってほしかったな。

 はあ、これ以上詳しい情報を知るには俺が直接見に行くしかないか・・・、嫌だな~。

 見に行くしかないか、傍から見たらただのアンデットだし、遠くにいたらわざわざ襲ってこないだろう。

 強くないし注目されないはずだ。

 もし仮にアンデットが嫌いで、視界にいるアンデットをすべて倒さないと気が済まない人がいたとしても、倒すべきアンデットが多すぎてここまで来れないだろう。


 そして遠くからでも軍人だったら軍服でどの兵科なのか分かる。

 それでもし歩兵団や騎兵団などといった魔力適正が低い兵科だったらダンジョンに気づかないかもしれない。

 魔力適正値が4以上あればダンジョンなんてすぐにばれるが、逆に4未満であればバレない。


 生き残るために少しでも相手が何者なのか情報を集めなければいけない。

 もし仮に4以上の兵科だったら、・・・無駄だと思うけど迎え撃つ準備をするか。

 よし、行くか。











「クソッ、せっかく監視部隊に高い金を払ったのたいしていいもんねえじゃねえか。それに襲ってくるアンデットが相変わらずうぜぇ」


 毎年恒例のイベントである大戦争、その跡地で俺様たちはアンデットに襲われながらお宝を探している。

 今年は帝国が負けたらしいが賊の俺たちには関係ねえ。

 お宝と言っても帝国兵や皇国兵の遺品だ。

 そこらの兵はたいしていいもん身に着けてねえが、兵科によってはいいもん身に着けているからなあ。

 そして貴族の場合は装備にたんまり装飾品をつけていていい金になる。

 どっかにお宝とか落ちてねえか。

 そんなこと考えていると子分の一人が話しかけてきた。


「お頭、なんだかここら辺おかしいですぜ」


「何がおかしいんだ?」


「なんだかこう、この辺りの魔力が変なんだ」


「そうか。おい、おめーらは何か感じるか?」


「何も感じませんぜ」


「俺も」


「俺もだ」


「そうか、まあこの中で魔法の才能があるのはお前だけだから仕方がないか。で、何があるんだ?」


「分かりやせん。でも、何かがあるはずですぜ」


「もしかしたら強力な魔法の武器があるかもしねえな。よし、その魔力の中心にいくぞ!」


 強力な魔法武器だったら数年は遊んで暮らせるぞ。

 今日の俺様はツイてるぜ。











「なんだあいつら?」


 ゴーストに案内されて人の群れを見た所に行くと統一感のない服を着た男が8人いた。

 てっきり軍人だと身構えていたがあんな服装の軍人なんていない。

 あれは、盗賊か?

 この荒野は数多くの帝国兵が見張っている。

 ただの盗賊程度がその包囲網を突破できる訳がない。


 恐らく見張りの兵士を買収したんだろう。

 ただの盗賊だったら大丈夫か、と安心した矢先盗賊の内の一人が集団の真ん中にいる男に何か話した。

 すると話した男を先頭に俺のダンジョンがある方向に真っすぐ進みだした。


 おい、なんで盗賊なんかに魔法の才能を持っているやつがいるんだ!?

 それになんで盗賊がダンジョンを攻略しようとするんだ?

 おとなしくどっかの旅人でも襲ってろよ。

 はあ、こっちに来るってことはダンジョンに気づいたのか。


 でもまだ軍人よりはましだ。

 軍人はランクが高いが盗賊はそこまでランクは高くない。

 今だってアンデットを倒すのに二回攻撃していた。

 ランク1程度のアンデットを一撃で倒せないということはランクは2ぐらいか?

 だったら今の戦力でも勝てる可能性がある。

 急いでダンジョンに戻って準備しなければ。


 俺は走ってダンジョンの方に向かう。

 さいわい盗賊たちは進路上にいるアンデットを倒しながら進まないといけないので追いつかれることはない。

 俺は走りながらどうやってダンジョンを強化するか考えた。


 現状の全力はゾンビ11体、スケルトン5体、フレッシュゾンビ1体、ゴースト1体、そして俺、たったこれだけだ。

 それにたいして相手はランク2程度の強さの盗賊が8人、そしてそのうちの最低一人は魔法の才能を持っている。

 武器は剣や斧、棍棒などで遠距離武器はない。

 集団の真ん中にいるやつがおそらくあの盗賊のボスだ。


 ランク差が一つ高い相手と一対一で戦っても勝率は0%だが、十対一で25%、十五対一で50%そして二十対一でやっと勝率100%になる。

 でもこれはあくまでも真正面から戦ってなおかつ相手が逃げない場合に限っての話だ。

 それに武器や装備の質、相手の状態、相性、連携の練度、周囲の環境などによって勝率は簡単に変化する。

 だから不意を打ったり、罠にかけたりすればランクで負けていても一対一で勝てる可能性がある。


 どうする?単純に数で押しつぶすのなら最低でも120体は必要だ。

 絶対に勝つなら160体、いや、もしあの盗賊の中に一人でもランク3がいたらもっと必要になる。

 でもそんな大量に生み出すほどのDPはない。

 やっぱりランクが高い配下を生み出すしかないか。

 クソッ、生み出すことができるアンデットを調べておくんだった。

 ランク2のアンデットはいくつも思いつくがDPまでは分からない。

 とにかく今残っているDPを調べないと。


 俺はダンジョンにたどり着くと、ダンジョンに溜まっているゾンビたちを押しのけながら。ダンジョンの奥に置いているダンジョンコアを握りしめた。

 今あるDPは・・・156か。

 スケルトンにDPを使いすぎた。

 でも、ゴーストが人間を見つけた時に配下のアンデットをダンジョン内に集めて、集めてきたアンデットを倒すように命令したおかげで少しだけDPが増えている。

 とりあえずランク2でできるだけ安くて強いやつはいるか?

 急いで見つけ出さないと。


 ざっと見たところ候補がいくつかあった。

 一つはグール、ゾンビの進化先だ。

 ゾンビと見た目はほとんど変わらないが、ゾンビと比べ力と素早さがかなり高くなり、五指には鋭い爪がついている。

 そしてその爪には毒があり斬りつけれられた者は動きを鈍らせゆっくりと死へ向かって行く。

 生み出すのに必要なDPは45。


 次はスケルトン・アーチャー、スケルトンの進化先だ。

 スケルトンよりも少しだけ力が強くなり骨が硬くなっており、弓の扱いが上手い。

 そして装備は胴体に革鎧と弓と矢筒で非常に軽装だ。

 だが貴重な遠距離攻撃ができるアンデットだ。

 必要なDPは50。


 次はスケルトン・ソルジャー、スケルトン・アーチャーと同じスケルトンの進化先だ。

 スケルトン・アーチャーと同じ様にスケルトンより強くなり、剣と逆三角形を伸ばしたような盾、あと胴体部分に革鎧を装備している。

 必要なDPは50。


 次はレイス、ゴーストの進化先だ。

 ゴーストと新しい能力とかはないが、全体的にゴーストの能力が上がった。

 相手がもし魔法などの攻撃手段が無ければ一方的に攻撃できる。

 必要なDPは65。


 次はカースソード、無機物系のアンデットだ。

 さっきまでの候補と違ってこいつはランク1だ。

 名前の通り剣の形をしており、普通の鉄の剣よりは頑丈で切れ味も少しだけいい、だが自ら動くことはできない。

 そのため攻撃方法はこの剣?を所持している者の生命力をゆっくり削るだけだ。

 あとこのカースソードで作った傷が治りにくくなるといった効果がある。

 だが生命力がないアンデットが持てばデメリットのない剣だ。

 必要なDPは6。


 候補はこの5つだ。

 本当はもっといい物があるかもしれないが今は時間が無いから俺が見たことある中で厄介なやつを選んだ。

 どれだ、どれを選べばいい。

 俺は頭を必死に働かせどうすれば生き残れるのか考えた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ