冒険者パーティを追放された俺だが、そんな俺を追いかけて来てくれた優しい彼女が…… って、タイトルであらすじを説明するスタイルは、ショートショートだとオチがバレるから使えないじゃん!
正直、”なろうテンプレ”を少し馬鹿にしていたのですが、それを反省して、応用を自分なりに試してみました。
冒険者パーティを追放された。
それで俺は夜中であるにもかかわらず一人でいる。荒野を照らす目の前の焚火は暖かった。が、ちっとも優しくは感じない。焼いている肉はいい匂いをさせていた。腹は減っているが、少しも食欲は掻き立てられなかった。
どうやら、自分でも思っている以上に俺は落ち込んでいるようだった。
俺がパーティを追放された原因は明確だった。リーダーのキーザスの装備品やアイテムや宝石やらを俺が盗んだ事にされてしまったからだ。
断っておくが、濡れ衣だ。
俺は絶対にやっていない。
俺には俺に相応しい装備やアイテムがある。宝石にだって興味がない。あいつの物を盗む理由なんかまるでない。
「クソッ!」
俺は吐き捨てるように言うと、まだ半焼け状態の肉を食いちぎった。血の味が口の中に広がる。
その時、背後から迫って来る気配に気が付いた。
モンスターか、盗賊の類かもしれない。俺は傍らの剣を握ると素早く振り返った。
「誰だ?」
ところが、そこにいたのは見知った顔だった。
「アレス。わたしよ」
同じパーティにいたフレアだ。
火の魔法が得意で、近接戦闘もこなすオールラウンド・ファイター。頼りになる一人だ。
「フレア…… どうしたんだ?」
俺がそう尋ねると、フレアは「ごめんなさい」と謝って来た。
「皆があなたを責めている時は庇えなかったのだけど、どうしてもわたしにはあなたが盗みをしたなんて思えなくて……」
フレアは切なげな許しを請うような視線を俺に向けていた。どことなく艶っぽく思えなくもない。
「それで追いかけて来てくれたのか?」
俺の問いにフレアは「ええ」と軽く頷いた。何気ない仕草からは、彼女の健気さが伝わって来る。
俺は自然と胸に温かいものがこみ上げて来るのを感じていた。そのままフレアは俺の隣に腰を下ろす。
軽く肩にもたれかかるようにして口を開いた。
「ねぇ…… わたし達二人で冒険者パーティを組まない? あなたもわたしもオールラウンドで戦える。きっと、二人きりでもやっていけると思うのよ」
俺はそう言うフレアをじっと見つめた。
真っ暗闇の中、焚火の灯りに照らされた彼女の顔はとても美しく思えた。まるで天使のようだ。一緒のパーティになってしばらく経つがこんな優しい女だったなんて思っていなかった。もっと、狡猾で強かだと…… 彼女となら、うまくやれるかもしれない。
ところが、そう俺が思いかけていたところで声がかかったのだ。
「騙されないで!」
声のした方を見ると、そこには特徴的な大きな眼鏡をかけたトトという女賢者がいた。近接戦闘は得意ではないが、遠方からの支援魔法や攻撃魔法には長けていて、薬作りの能力はかなり重宝する。
トトを見ると、フレアは言った。
「あら? あなた、どうしたのかしら? あっちのパーティで薬を作って、他の男達の面倒を見てあげなくちゃ駄目じゃない。きっと困っているわよ?」
なんだか声が上ずっているように感じられた。それを無視して、トトは言う。
「わたし、見たのよ! フレアがキーザスの装備品を盗んで、アレスのリュックの中に入れているのを!」
フレアを見てみると、目が泳いでいるのが分かった。語らずとも分かる。つまり、俺に濡れ衣を着せたのはフレアだったのだ。
トトは何も言えないでいるフレアを一瞥すると俺に駆け寄って来た。
「ねぇ、アレス。多分、フレアはあなたに取り入る為にやったんだと思うけど、そんな悪賢い女が信用できる? できないでしょう? わたしと二人でパーティを組みましょうよ!」
トトは俺の腕を掴むと媚びるような視線を送って来る。どうやら彼女も俺を追って来てくれたようだ。
確かに彼女の能力は役に立つし、それに性格だって大人しくて可愛い。俺の気持ちはかなり揺らいでいた。
が、そこで再び声がかかったのだ。
「ちょっと待って!」
すると、今度は青い衣を身に纏った氷の魔術師のルーが現れた。彼女は速射連撃の魔法が得意で、中間距離の戦いではパーティ内でも右に出る者がいない。
ルーは言う。
「知っているでしょう?アレス。悪賢いのだったら、そこにいるトトも同じ。そんな女を信頼しては駄目よ!」
それを聞いて俺は思い出した。
確かにトトは奸智に長けている。相手を騙すような戦略を立てるのは大抵はトトだ。
「あら? 何を根拠に言っているのかしら?」
そう言ったトトの瞳の色は、眼鏡の奥に隠れてしまっていた。トトが誤魔化す時のいつもの反応だ。
「わたしは見ていたのよ。あなたがキーザスのアイテムを盗んで、アレスのリュックに入れるところを。
つまり、あなたもフレアとまったく同じ事をしたのよ! それなのに堂々と自分は信頼できるみたいに嘯いちゃって、図々しいったらありゃしない!」
それにトトは何も返せない。
どうやら本当の話のようだ。
ルーはそれから俺を見ると言った。
「アレス! そんな女達とパーティを組んだりしな方が良いわ! 組むんだったら、このわたしよ!」
俺の心はそれで更に揺らいだ。ルーは彼女達に騙されるかもしれない俺の事を心配して追いかけてくれたのだろう。
なんて優しいんだ。
が、そんなところでフレアが言うのだ。
「それだったら、あなたも同じじゃない」
――へ?
フレアは腕を組みながら、ルーを見据えている。ルーはその言葉を受けて、頬を引きつらせた。
「どういう事?」とトトが尋ねると、フレアは答えた。
「ルーは宝石を盗んで、アレスのリュックに入れていたのよ。それでアレスに罪を着せた」
それを聞き終えると、三人の女達は互いに見つめ合った。三竦み…… ではないかもしれないが、そんな感じだ。
俺は尋ねる。
「つまり、お前らはそれぞれがそれぞれ、悪事をするところを見ていたって事だよな? どうして、その時に言わなかった?」
すると、三人は同時に答えた。
「だって、どうせパーティからは追放になってもらうつもりだったから、都合が良いと思ったんだもん!」
俺は叫んだ。
「なんで、そんな事をしようと思ったんだ?」
「だって、あのパーティ、邪魔者のこいつらがいるから、アレスと一緒になれないじゃない!」
俺がその返答に頭を抱えたのは言うまでもない。
――そうして俺の疑いは晴れたのだが、俺はもうあまりあの冒険者パーティに戻りたいとは思えなくなっていた。
だって、この女ども、なんか怖いから……
もっとドタバタにしないと面白くないですかねぇ?




