転生者問答
現世のみんな、クラリアの冒険者達、俺は今ーー
竜に乗って空を飛んでいます!
「そろそろ飛空艇とすれ違う! 風で振り落とされんなよ!」
「了解! でも飛空艇なんてものがあるのになんで竜に?」
「こっちじゃ小型化は出来ていない、莫大な魔力がかかるからな。ギリギリ個人で持てるレベルの飛行手段が手懐けた竜に乗ることなんだよ」
可愛らしい鳴き声を上げて正面の飛空艇を竜が回避する。うぉおおぉぉぉぉ、これはかなりジェットコースター。アルバにはローラーコースターって言わないと通じないか。
恐る恐る下を向くと巨大な都市が現れた。クラリアの様子から中世の城をイメージしていたが幾つか高層建築が目立つ。
「なんだこれ!?」
「技術系に詳しい転生者の遺産だ。俺達の他にも転生者は何人かいる。お前に会いたがってるのも転生者だ」
おっと、もうすぐ着く、とアルバは言うと手綱を強く握り締めた。そして竜は急降下する。
「ああああああああぁぁぁ!」
叩きつける風圧に押しつぶされそうになりながらも必死にしがみついた。これに初めて乗ろうと思ったやつおかしい。こんな危ないもん乗れるわけねえだろうが。
「着いたぞ、この屋敷の主がお前のーー」
「やったぞ、やった! 地面だァァァァ!」
「おい!」
着地と同時に俺は転がるように地に足をつけた。数時間ぶりの大地、無事に生きて移動できた。するとーー
「ようこそ、王都レーヴァンに。私は転生者の寄り合いを運営している成瀬礼珠、こっちではレイスで通ってるからそう呼んで」
現れたのは同い年くらいの白髪の美少女、それもモデルとかマドンナみたいなタイプでは無くある種の神秘すら感じるタイプの。
「あ、俺はハルキ、伊達遥輝だ。よろしくな!」
俺は状況に促されるまま自己紹介を口にした。とりあえず迷ったら言っておけば良さそうな単語を並べた可もなく不可もないものだ。
「じゃあハルキ、質問していいかしら? 簡単な一つの、ね」
なんだろうか、転生者だから……強き者の責務とかそういうものを問われるのだろうか。それとも覚悟か。どちらにせよ今の俺に迷いは無かった。
「ああ、なんでもいいぜ!」
「アナタは何故この世界に転生させられたか分かる?」
結構意外なところを突かれた。何故転生させられたか、か。確かに神様は何も言って無かったな。でも力をくれるくらいだ、俺の知識を基に推理すると魔王討伐だろう。逆にそれ以外考えられない。
「魔王を倒すためか?」
異世界転生と言ったらチートで魔王討伐! 俺はノリと勢いでそう突きつけたがレイスは俺の返答を聞くと見るからに不機嫌になった。アルバが竜を撫でながら口を挟む。
「レイスの嬢ちゃん、そいつ来てすぐだから優しくしてやれよ、な?」
アルバの言葉を鑑みること無くレイスの口から出た言葉は威圧とか憎悪とかそういう負の感情が詰まった忠告だった。
「何も知らないアナタに一つ教えてあげる。私たちは道化、ただただ神様を楽しませる為だけに転生させられたの。分かったならーー」
ギリっと歯が欠けるんじゃ無いかと思うほどにレイスは噛み締めて俺に吐き捨てると屋敷に戻って行った。
「分かったなら自分を特別だなんて思わない事ね。後は頼んだわアルバ」