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第8話


「ステータス開示」


 春希は鏡の前でステータスの確認をしていた。

 鑑定スキルでステータスを確認する場合は対象を視認しないといけないので自分は鑑定できないのかと思ったら、鏡で自分の姿を見ながらすればいいとコンスタンチンに教えてもらったのだ。

 ただしステータス画面が頭の上に出る為ステータス画面も反転し、鏡文字を解読する必要がある。



須藤 春希 Lv.11


HP:2300/2300

MP:4500/4500


適性:魔人


【スキル】

自己治癒:C+

鑑定:D

威圧:E+

魅了:E+


 昨日のスライム箱ぶっ刺しのおかげでレベルは一気に11になっていた。

 どうもHPよりMPの方がステータスの上がり方が早い。

 魔法とかそっちの方が適性があるのかもしれない。

 まぁ適性は相変わらず『魔人』なのだが。


 ん? 魅了が上がっているような?

 ま、いっか。


 威圧が変わってないなら特に気に止める必要はない。

 春希はステータスを閉じた。


 コンコン、とノックの音がしたので急いでライダースジャケットを羽織り返事をした。


「どうぞ」


「ハルキ様おはようございます。お召し物をお持ちしました」


「おはよう、エレナ。ありがとう」


「………」


 着替えを受け取ろうと手を出すと、何故か妙な間が開いた。


「………あ、もしかして着替えも介助するつもりでした?」


「はい。仕事ですので…」


 昨日も散々聞いた台詞だが、幾分かトーンダウンしている感じだ。


「あー、着替えも自分でしますのでー」


「そう、ですか…」


 あからさまにしょんぼりするエレナを見ていると凄く申し訳ない気持ちになってきた。


「エレナ、あの、誤解しないで欲しいんだけど、別にエレナが嫌とかじゃないんだからね?」


「本当ですか?」


 やはり自分が嫌がられてると思っていたらしい。

 エレナが上目遣いで確かめる様に春希を見る。

 アナスタシアの様に超絶美人と言うわけではないが、エレナはエレナで親しみやすい愛らしさがある。

 うさぎとかリスとかそう言った小動物系で思わず可愛がりたくなってしまう。

 春希はエレナの頭にポンと己の手を置くと言った。


「うん、ただ介助される習慣がないだけなんだ。だから気にしないで」


 そのままヨシヨシと頭を撫でると、エレナの頬が見る見る間にピンクに染まる。


「そうなんですか」


「あ、でもこちらの服は着たことないから、着方だけ教えて貰えると助かるかな?」


 パッと見ワイシャツやズボンの様な見慣れた物もあるが、いくつか見慣れない物もある。


「はい! ご説明しますね! とは言ってもハルキ様の服は全て魔道具ですから簡単です」


「服に魔道具とかあるの?」


「はい、魔物の毛や皮で出来ていて防御力や身体能力を向上させてくれるです。サイズも着用者が動きやすいように自動的に体に合わせてくれるんですよ!」


「へ〜便利だね」


 ワイシャツ、パンツ、下着、靴下は普通通り着れば良いらしい。

下着はパッと見ももひきだ。

 おじさんっぽくて嫌だけどノーパンよりマシだろう。

 革のブーツも履けば自動的に適度なサイズになってくれるとか。

 あとは革でできた胸当てと手の甲と手首をカバーするサポーターの用な物だが、これはそれぞれの部位に当てると勝手にくっついてくれるらしい。

 本当に便利だ。

 特に胸当てが助かる。

 これがあれば胸が押さえつけられるので慎ましいサイズの胸はほとんどあるかないか分からなくなるだろう。

 助かるが女心としては悲しいものだ。


 着替えの為エレナに一旦部屋から出てくれるように頼むと凄く悲しい顔をされた。

 仕事熱心過ぎるのも考えものだ。


 着替えが終わり、部屋で簡単に食事を済ませると春希は修練場に出た。

 学生時代に所属していた陸上部の練習を思い出しながら軽く体操と柔軟を済ませてちょっと走ってみようかと思い付いた。

 スターティングブロックの代わりに地面に穴を掘ってそこに足を引っ掛けて屈む。

 クラウチングスタートで飛び出すと体がいつもより軽く感じられて思ったよりスピードが出てしまい、バランスを崩していきなりすっ転んで転がった。


「あっ!!!」


「あだっ!!! っすみません!」


 転がった拍子に誰かにぶつかり、慌てて起きて謝るとぶつかった相手はコンスタンチンだった。

 長い金髪のイケメンが顔を歪めながら膝をついて腰を擦っていた。


「勇者様、いったい何をしてるんですか!?」


「すみません。ちょっと体を動かそうと思って…」


「変わった構えでしたが突進して相手を倒す体術ですか?」


「いえ、単に走ろうとしていただけで…あの構えで走るとスタートダッシュが早くなるんです。何故か思ったよりスピードが出てしまって、バランスを崩しましたが」


「ああ、急激にレベルが上がりましたからね。体が上がった身体能力に適応しきれてないのでしょう。よくある事です」


「そういうものですか。あの、本当にすみませんでした」


 今だに腰を擦っているコンスタンチンに手を差し出すと、コンスタンチンはその手を取って立ち上がった。


「いえ、もう大丈夫ですよ。体がもう少し慣れるまで体術は置いておいて魔法の練習をした方がいいかもしれませんね。勇者様はMPがお高いですし」


「魔法ですか!」


 それは是非身に着けておきたい。

 春希は俄然テンションが上がった。

 人違いで召喚され帰る事も出来ず、女性としての尊厳を傷つけられまくりで踏んだり蹴ったりな異世界召喚だが、メリットと言えば魔法が使える事くらいだろう。


「勇者様は」


「あの、そろそろその『勇者様』と言うのは辞めませんか?『春希』と呼んで頂きたいのですが」


「いえ、勇者様は勇者様ですので」


「でも、」


「勇者様が勇者様でなければ困るんですよ!!」


「…そうですか。」


 コンスタンチンがあまりに必死なのでそれ以上言えなかった。


「それで勇者様は『魔法』と言うとどんな物をイメージされますか?」


「えーっと、物が手を使わずに動いたりとかそんな感じでしょうか?」


「ほうほう。それは『念道』ですね。魔法と言うの『イメージを具現化する力』ですので『魔法』と聞いてパッと浮かんだイメージはその人にとって再現しやすい魔法である事が多いです」


「へー、そうなんですか。じゃあ例えばそこの石が浮くと思えば浮くんですかね?」


「簡単に言うとそうですね。ただ」


 そうか、浮くと思えば浮くんだ。と、思った瞬間小石がふわっと浮いた。


「あ、浮いた」


 他にもいくつかの石を浮かせてそれを積み上げる様子をイメージすると本当にその通りになった。

 ちょっと楽しくなって石を人の形になる様にドンドン積み上げてみる。

 そしてそれがトコトコ2足歩行する事を想像すると、2、3歩歩いてガラガラと崩れ落ちた。


「あ、失敗しました。これはイメージ不足って事ですかね?…コンスタンチンさん?」


 反応のないコンスタンチンを見ると口が半開きのまま固まっていた。


「そんな、いきなり無詠唱だなんて…」


「コンスタンチンさん、大丈夫ですか?」


「勇者様ーーー!!!」


「!!!?」


 コンスタンチンに声をかけるといきなり抱き締められた。


「勇者様! 私、感激しました!!!」


「何するんですか!? セクハラですよ!!!」


 コンスタンチンの腕から抜け出そうと暴れるが、細いのに案外に力が強い。

 ギュウギュウ抱き締められて全然抜け出せる気がしない。


「普通無詠唱魔法は得意な魔法を反復して使用する事で使えるようになるんです。それでも杖だったり魔法陣だったり何か媒介が必要になるのですが、それもなく! 流石は勇者様ですね!」


「呪文とかそう言うのがあるって事ですか?」


コンスタンチンの腕から抜け出す事を諦めて訊ねる。


「そうですよ! 初めて魔法を使う際は簡単な魔法でも長い呪文が必要になります! 使い慣らして行って徐々に呪文を短くしたり複雑な魔法にしたりして行くものなのです!!」


「そうですか…」


 もうなんでも良いから早く離して欲しい。

 春希は遠いところを見ていた。


「もしかしてそうやって魔法を使うというのは子供でも知ってる常識だったりしますか?」


「そうですね。魔法使いを目指さない者でも何らかの形で魔法を使っている所を見る事があるので、誰でも知ってると思います。」


「魔法がイメージだと言うならその常識が無詠唱魔法の障害になってるのではないでしょうか?」


 魔法を使うのに呪文が必要だと言う固定概念が呪文がないと魔法が使えないと言うイメージを固定化させてしまっているように感じる。

 その点春希は何の固定概念もなく、むしろ異世界から人間を連れてこれるぐらいだから出来ない事は何もないくらいの感覚でいた。

 魔法に関しては常識のなさが上手く作用したのかもしれない。


「なるほど。一理あるかもしれませんね。ただ呪文を唱えれば魔法が発現できるので呪文も初心者の取っ掛かりとしてはやりやすいんですよね…」


「それよりそろそろ離れませんか?」


「ハッ! 申し訳ありません! つい、感動のあまり!!」


「感動したからと言って抱き着くのはもう止めてくださいね」


 ようやく開放されたが念の為釘を刺しておく。

 相手は自分を男だと思っているので他意はないとは分かっていても、コンスタンチンの様な金髪イケメンと密着してドキドキしないわけではない。

 心臓に悪いのでやめて欲しい。


「で、勇者様『せくはら』とは何でしょう?」


「本人の同意なく猥褻な行為をする事です」


「猥褻? そんな!? 男同士ではありませんか!!」


「…男同士だからこそ嫌な事もあります」


「なるほど。それもそうですね」


 これだけ密着されても女だと気づかれないなんて地味に傷付くが、今はバレてない事を喜ぶべきなのだろう。


 そして抱き合う2人(春希が一方的に抱き着かれてるだけだが)を物陰から青い顔をしてエレナが見ていた事を2人は知らなかった。


いつの間にかブックマークをして下さった方がおられました。

本当にありがとうございます!

誰も見てくれないだろうと思って書き始めたので、とても励みになりました!

どこかの誰かの束の間の楽しみになったら嬉しいです。


〜次回プチ予告〜


春希魔法の練度を高める。

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