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第50話


「おいらも入って大丈夫なんだな? 恐いんだな」


 魔王城に着いたがコモドは怖気付いていた。


「大丈夫、見た目より中は普通の城だし、意外と魔王も恐くないから」


「本当なんだな?」


「無理そうなら外で待ってる?」


「………ハルキ達と一緒に行くんだな!」


 コモドは少し勇気を出して春希達と一緒に行く決意をした。

 とりあえず門番にロスタを呼んでもらうと、ロスタが驚いた顔で迎えてくれた。


「あら、案外早かったわね」


 魔王と勇者を連れて来る約束をしてまだ1日しか経ってないので無理もない。

 ロスタは春希、勇太、コモドと順番に視線を動かし、コモドの所で動きを止めた。


「な、なんて事でしょう! あなた名前は!?」


「え? おいらコモドって言うんだな」


 ロスタなコモドに詰め寄りその手足をしげしげと見つめた。


「蛇の様に地を這いながらも手足があるなんて、なんて素敵なフォルムなの! 素晴らしいわ!!」


「あ、ありがとうなんだな」


「羨ましいわ〜 私にも手足があれば良いのに…」


 そう言えばロスタが変化を解いた時の姿は蛇だった。

 ロスタは手足に対して憧れを抱いており、蛇のようでありながら手足のあるコモドの姿は理想の姿らしい。


「おいらこんなに褒められたの初めてなんだな」


 皆と違う事で迫害を受けてきたコモドは思わぬ好意的な態度で嬉しそうだった。


「あの〜 そろそろ魔王様の所に案内して欲しいのですが」


「ああ、そうだったわね。昨日と同じ場所にいるはずだから勝手に行っちゃっていいわよ。私はコモドちゃんとお話してるから」


「おいらもロスタさんともっとお話したいんだな」


「それじゃあまあ勝手にさせてもらいます」


 すっかり意気投合しているコモドとロスタを尻目に春希と勇太は魔王のいる玉座の間へ向かった。

 昨日玉座の間の扉をノックするが返事がないので、春希はそーっと扉を開けて部屋の中を見てみた。


「おい、勝手に開けていいのかよ?」


「大丈夫みたい。誰もいないよ。中で待たせてもらおう」


 部屋に入ると直ぐに玉座が光り、魔王が現れた。

 恐らくだが部屋に誰かが入ると分かるようになっているのだろう。


「来たのか。早かったな」


 魔王の顔を見て勇太はギョッとした。

 話には聞いていたが、本当に春希と瓜二つだ。


「…なかなか興味深い格好をしているな」


 勇太は闇夜の衣を着ているし、春希は万が一時の為に通信の魔道具を被ったままなので二人合わせると売れない漫才師の様になってしまっている。


「好きでこんな格好をしているわけではありませんので」


「そうなのか? なかなか似合っているぞ」


 褒められてこんなに微妙な気持ちになる事も珍しい。

 そもそも春希達が戸惑う格好でも、こちらの世界の人達は身に着ける事に抵抗感を持っていないらしいので文化の差なのだろう。


「そいつが勇者か」


「はじめまして。前田勇太です。こちらではアレクセイと名乗っています」


 とりあえず第一印象は大切だと思い、勇太は魔王に頭を下げた。


「ハルキから話は聞いているな?」


「はい」


 勇太は頷いた。

 相手が戦うつもりが無いのであれば勇太とてわざわざ戦いたいとは思わない。

 平和が一番だ。 


「魔王様、話し合いで次代の魔王を決める事に関しては勇太にも了承を貰っているのですが、その前にお訊ねしたいのですが」


「何だ?」


「魔の森に現れた大きな魔物についてはご存知ですか?」


 春希は本題を切り出した。


「大きな魔物?」


 魔王は掌から黒い球体を出し、魔の森の様子を映し出した。

 いくつか場面が移り変わり、ついに大きな魔物を捉えて映像が止まった。


「…ああ、本当だな。何か生まれようとしている」


 魔王は魔物の事を今知った風だった。

 と、言う事は少なくとも魔王が意図して生み出した物ではないと言う事だろう。


「あれが動き出す前に何とかしたいのですが、弱点など分かりませんか?」


「弱点も何も、湯に浸かった事でかなりの瘴気が洗い流されて殆ど無効化されているぞ」


「え」


 確かに魔法の檻で捉えた時は真っ黒だったはずなのに今ではグレーっぽい色になっていた。

 温泉の効能が凄すぎる。


「湯で魔物を無効化するとはまったくお前は面白い事ばかりするな」


 そう言うと魔王は微笑んだ。

 滅多に表情が変わらないので意識しなかったが、笑うとなかなかのイケメンだ。

 自分もこう笑えばイケメンに見えるのか、参考にしようと春希は思った。


「春希ーーー!!!」


「うわっ!?」


 春希は突然誰かに後ろから抱き締められ振り返ると、そこには豪ちゃんがいた。


「豪ちゃん!?」


「豪ちゃん大きくなったよ!」


 春希が驚くのも無理はない。

 豪ちゃんはたった1日で体長3m程のビックサイズに進化していた。


「しかもお喋りも上手くなってない?」


「えへへ〜 凄いでしょ」


 片言でたどたどしい喋り方だったはずがすっかり流暢に喋るようになっていた。


「レベルが上がった事で言語能力も向上したようだな」


 段々賢くなってる気はしていたがやはりそういう事だったらしい。

 ただたった1日でサイズも言語能力も大きく変わってしまって、主としては結構戸惑う。

 困惑する春希の表情を読んだのか、しょんぼりと頭を垂れて見せた。


「春希は大きい豪ちゃん好きじゃないのかな?」


「そ、そんな事ないよ! びっくりしただけ!」


「本当?」


「本当だよ! すごく頑張ったんだね!」


「豪ちゃん偉い?」


「偉い偉い!!」


 春希に褒められて豪ちゃんは嬉しそうにくるくるとその場で回った。

 その仕草は自体はいつもの豪ちゃんと変わりないのだが、サイズが変わった事で迫力がすごいのとぶつかりそうで恐い。


「鍛えればもっと強くなるぞ」


「じゃあ次期魔王を目指したらどうでしょう?」


 魔王のお墨付きを頂いたので勇太がそう提案すると、魔王も異論は無い様子だった。


「ふむ、それも悪くないな」


「豪ちゃんは春希を守る事がお仕事だから魔王にはならないよ」


 だが本人は魔王の座に興味がない為難しそうだ。


「魔王様、とりあえず勇者は連れてきたので豪ちゃんは返してもらって大丈夫ですよね?」


「む、その言い方は気に入らんな。無理矢理引き止めた覚えはないぞ」


 建前的にはそうだし最終的には豪ちゃんがここに残ると言ったのだから仕方ないのだが、春希的には人質と等しいものだった。

 だが魔王が違うと言う以上、このまま豪ちゃんを引取って良いと解釈させて貰う事にした。


「それで、あの魔物はあのまま湯に浸からせておいていいのでしょうか?」


 勇太の質問に魔王が答えた。


「そのままにしておいてもいいと思うが…」


 その時、玉座の間にコモドとロスタが飛び込んで来た。


「ハルキ! 大変なんだな! アナスタシア様達が魔物に襲われてるんだな!!」


「えっ!?」


「例の魔物にか?」


 勇太が訊ねるとコモドは首を横に振った。


「それが違うみたいなんだな」


「魔王様、どうやらクレージが暴れているようです」


「あいつか。仕方のないやつだな。私も現場に向かおう」


 ロスタに耳うちされた魔王が現場に向かおうとするのを勇太が止めた。


「いや、それはちょっと待って下さい。私達の仲間と鉢合わせするとややこしい事になりますので」


「それもそうか… では姿を変えよう」


 そう言うと魔王は長い犬歯を持つ漆黒の虎の姿に変化した。


『どうだ。これならば分からないだろ』


「わー! 魔王様カッコイイね!」


『そうか、カッコイイか』


 豪ちゃんが虎の姿になった魔王を手放しに褒めると、魔王も満更でもない様子で尻尾が振れていた。

 姿は変わっても只者ではないオーラは隠しきれてないが、とりあえず魔王と春希が瓜二つだと言う事は隠せそうだ。


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