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第10話


 翌日、城中大忙しのようで皆バタバタしていた。

 エリナ曰く、本当に昨日の今日で決まったお茶会のようで全然準備が追いついてないとの事だった。

 と言うか急にお茶会に出席する事になった奥様やご令嬢達は大丈夫なのだろうか?

 ただでさえ女性と言うのは衣装に靴にアクセサリーに小物にメイクにと準備に時間がかかる上に、貴族ともなると一度袖を通したドレスは着ない!とか言いそうだ。

 ドレスが無いから仕立て屋さんに夜なべで作らせるとか、そんな無茶をさせてなければいいが…

 そんな無理して勇者に会ったのに偽物だったのでは割に合わないだろうなと、気の毒に思う。

 王妃様主催のお茶会に出席できるレベルの貴族ともなれば次に着る予定のストックドレスが常にあるのかもしれない。

 きっとそうだと思っておこう。


 春希がする準備と言えば準備された礼服を着る事くらいだが、お茶会は午後からだ。

 早くから着て衣装を汚したり皺になったらいけないので直前に着替える事にしよう。


 時間があるので魔法の練習でもしようと、すっかり定位置になった頭の上に豪ちゃんを乗っけていつもの修練場まで移動していると、なんと侍女に混じってアナスタシアまで走っていた。


「アナスタシア様!?」


「ハルキ様、おはようございます」


 春希が声をかけるとアナスタシアは足を止め、ドレスの裾を持ち上げて軽く腰を落とした。

 カーテシーと呼ばれる挨拶だ。

 流石王女様と言うべきか、今まで走っていたとは思えない優美さだった。


「アナスタシア様もお茶会の準備ですか?」


「ええ、まぁ…」


 王女様さえ走らせるなんて緊急事態らしい。


「私に何かできる事はないですか?」


「ええっと、そうですね。では相談に乗って頂けますか?」


 そうして春希はアナスタシアに厨房へと案内された。


「料理なのですが、お茶会や晩餐会などでは毎回何か目新しい物や珍しい物を準備しているんです」


「目玉ってやつですね」


「はい。料理長は新しい料理やスイーツのレシピはいくつかストックを作っていてくれていたのですが、ただ今回は急だったもので必要分の材料が揃わなくて…」


「因みに何が足りないんですか?」


「砂糖です」


 いくら王室と言えど砂糖は希少で、急に必要量を揃えるのは難しかったらしい。

 砂糖が足りないのは女子会としては結構致命的だ。

 お茶会なので軽食+スイーツという形になるが、料理長の新しいレシピのスイーツは砂糖を大量に使うものなのでそれを作ると他のスイーツの品数が少なくなってしまう。

 品数が少なくなるとエカテリーナが主催者のくせにケチったと思われ面子が潰れる。

 かといって品数を増やす為に甘さ控えめにするとこれまたケチったと思われてしまう。


「軽食で目新しさを出すのはダメでしょうか?」


「軽食ですからね、サンドイッチやキッシュで目新しさと言うのもなかなか…」


 恰幅の良い中年の料理長も頭を悩ませているようだ。


「まぁ、中の具が変わるだけですからね…」


 ふと、サンドイッチ用に準備されていたカット野菜が目に入った。


「……因みに野菜は沢山ありますか?」


 訊ねると料理長が頷いた。


「はい。晩餐にも使いますからね、野菜は常に潤沢にありす」


「じゃあ蓋のついた瓶はありますか?」


 蓋のついた空瓶を持って来て貰うと一番下にドレッシングを入れる、人参や胡瓜など硬いもの下に葉物など柔らかいものは上に、ミニトマトなど断面があるものは断面が瓶の側面に来る用に重ねて入れて行く。

 最後に蓋を閉めるだけで完成だ。

 所謂ジャーサラダと言う物だ。


「こ、これは!?」


「美しいですわね…」


 料理長とアナスタシアが目を見開く。


「これなら既存の材料でできますし、見た目も華やかです。何よりサラダはヘルシーで美容に効果ありですからね!中の具を変えて何種類か作ってもいいですね。選ぶ楽しさもあった方が良いでしょう。食べる時は瓶を振ってドレッシングを絡めて食べて下さい。」


「素晴らしいですわ!」


「春希、ヨクデキマシタ」


 アナスタシアだけでなく豪ちゃんにも褒められた。


「あ、瓶は先に煮沸消毒した方がいいかと」


「分かりました!」


 料理人さん達が一斉にジャーサラダ作成の準備を始めた。

 アナスタシアはどうにか乗り切る算段がついた事で安心したのか、リラックスした笑顔で言った。


「ハルキ様、ありがとうございました」


「いえ、私は異世界にある物をお伝えしただけですから」


「異世界には私の知らない物が沢山あるのでしょうね。また色々教えて頂けますか?」


「ええ、勿論」


 これほどの美少女のお願いを断れる人間がどれだけいるだろうか。

 春希は否応が無しに笑顔で了承した。


 お茶会への時間が迫ってきたので、春希は部屋に戻り礼服に着替える事にした。

 相変わらず魔道具の服は着るとジャストサイズになってくれるので非常に便利だ。

 ワイシャツと光沢のあるグレーのジャケットとパンツとベストと言うセットだが、ワイシャツは袖の部分がフリルになっており、ジャケットは植物の葉と蔦の様な刺繍がされている。

 ベストがあるのでまた都合良く胸が分かり辛くなっている。

 我ながらまあまあ似合うと思うがすこし物足りなさを感じた。

 こちらの世界の人は美男美女が多いので、印象が霞んでしまいそうだ。

 せっかく勇者を楽しみにして来たのに薄らぼんやりしたのが出てきたらガッカリされないだろうか?


「エレナ、化粧品ってある? あったら持って来て欲しいんだけど。」


「お化粧品、ですか?」


 エレナが不思議そうに首を傾げながら化粧品を部屋に運び入れてくれた。

 持って来てくれた化粧品の中からリキッドファンデっぽい物を使い肌色を整え、アイブロウパウダーっぽい焦げ茶色のパウダーで眉を少し濃いめに、そしてアイラインっぽい小筆でアイラインを引いた。


「異世界では男性でもお化粧をなさるのですか?」


 化粧に慣れた様子に見えたのだろう。

 実際化粧の濃い方ではないが社会人としてそれなりに化粧はしていた。


「皆じゃないけどする事もあるよ」


 周りには化粧をする男性はいなかったが、芸能人なんかはしてるだろうし、最近では男性用化粧品なんてのもあると聞いたことがある。

 あっちの世界ではそう珍しくないと言う事にしておこう。


「ハルキ様もされていたのですか?」


「まぁ人前に出る時はね」


 休みの日はスッピンと言う事もザラだったので嘘ではない。


「どうかな?」


「ハルキ様、素敵です…」


 髪はエレナに整えて貰い、全体の出来を訊ねるとエレナは頬を染めながら半ば放心状態で答えた。

 鏡で自分の姿を確認した春希自身もなかなか様になってるとは思った。

 と、言うか化粧の薄い宝塚と言う感じだ。


「背中に羽根でもつけたらまんまだよね…」


「羽根ですか!? それも素敵ですね!! すぐお持ちします!」


「いやいや! 持ってこなくていいから!!」


 春希の呟きを拾って羽を取りに飛び出そうとするエレナを慌てて静止する。

 危うく羽を背負ってお茶会に参加する羽目になるところだった。

 そんな恥辱は避けたい。

 と、言うか羽根をそんなにすぐ持って来ようとするなんて準備があるって事だよね?

 一体いつ何時使うつもりで準備しているのか謎だった。



予測詐欺第2弾ですみません(汗)

そこまで行き着きませんでした…

明日はきっと…


〜次回プチ予告〜

春希次こそ初めてのお茶会

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