第9話
あら?考えてた話と違う話になってしまいました。
予告詐欺みたいになってすみません。
書き溜め無しでノリで書いてるのでこういう事もあると多めに見て頂けると助かります。テヘペロ
「勇者様が作った人形はゴーレムに似ていましたね。ゴーレムよりも人に近い形でしたが」
「ゴーレムって土とか泥とかで出来てて簡単な命令なら聞いてくれるって言うアレですかね?」
「そうですね。概ね間違いないです。土や泥以外に金属で出来てる物もあって、金属製ならより頑丈になりますよ」
まぁでも今は魔法の練習なので強度は別に必要ない。
先程作った物は大きくてバランスが取り辛く、すぐ崩れてしまった。
あと大き過ぎて可愛げがないと言うか…
イメージが大切と言うからには愛着が湧いた方が良い気がする。
小さい人形みたいなのがちょこちょこ動いたら石製でも可愛いんじゃないだろうか。
と、言う事で先程より大分小さく、掌サイズの石で出来た人形を作る事にした。
イメージを開始すると辺りの小石が集まり積み上がって行く。
足、胴体、腕、頭と下から形作って行き、小さい事もあってあっという間に出来上がった。
掌サイズの石の人形は春希のイメージ通りちょこちょこと歩いて来ると、春希の目の前で止まる。
「ゴシュジンサマ?」
「「喋った!!?」」
「ゴシュジンサマ??」
小首を傾げながら訊ねて来る様は表情は無くとも何とも愛らしい。
「勇者様、応えて差し上げた方がいいのでは?」
「ああ、うん、そうですね」
言語機能をつけた覚えはないのに話し出した事に戸惑いしかなかったが、コンスタンチンに促されて人形の問に応えた。
「うん、キミのご主人です。たぶん」
「ゴシュジンサマ!」
人形は嬉しいと言う感情を表すかの様にピョン!と跳ねた。
可愛い。
「えーっと。キミの名前は?」
「ナマエ? スミマセン、ワカリマセン」
今度はしょんぼりと頭を垂れる。
可愛い。
「名前の意味が分からないのかな?」
「そもそも名前が無いのではないですか?」
「ナマエ、ナイ! ゴシュジンサマ、ツケル!」
どうやら春希が名付けなければならないらしい。
春希は少し考えてから言った。
「えーっと、ゴーレムだから…『豪ちゃん』とか?」
「安直過ぎるのではないですか?」
「うっ。でも私の世界では『豪』は『すごい』とか『優れている』と言う意味があるので、良いではないですか!」
センスが無いのは自分でも分かっているのであまり突っ込まないで欲しい。
「ゴウチャン?」
「うん、そうだよ。キミは豪ちゃん」
「ゴウチャン!」
豪ちゃんはクルンと一回転してジャン!と右手を掲げたポーズを決めると一時キラキラとした何かが舞った。
可愛すぎる。
「名前を付けた事で従属になったようですね」
「従属?」
「主の命令に従う魔族や魔獣の事です」
「もしかしてこのキラキラがその印ですか?」
「そうです。しかしゴーレムが従属と言うのは聞いたことがありませんね…」
また何か珍しい事をしでかしてしまったらしい。
常識が無いばかりに申し訳ない。
「ゴシュジンサマ、メイレイ!」
豪ちゃんが命令をせがんでいる。
「じゃあとりあえず、ご主人様じゃなくて『春希』と呼んでもらえるかな?」
「ワカリマシタ! 春希!」
他の言葉は片言なのに『春希』だけめっちゃ発音がいい。
こちらの世界の人には『る』が少し巻舌になって発音し辛そうなのに豪ちゃんの『春希』はほぼネイティブだ。
「ホカニモメイレイ!」
豪ちゃんはもっと命令が欲しいらしい。
「えーっと、豪ちゃんは何ができるのかな?」
「スミマセン、ワカリマセン」
しょんぼりとした様子は本当に可愛い。
「もしかしたら具体的な命令でないと通じないのかもしれませんね。」
「じゃあ側にいて危険がないか見張っててくれるかな?」
「ワカリマシタ!」
コンスタンチンのアドバイスで具体的な命令を与えると、豪ちゃんはビシッ!っと敬礼した後、春希の足にしがみつきそのままよじ登り始めた。
足か腰、背中と登っていき肩に足をかけて頭の上まで登る。
頭の上で腹這いになって顔だけ前を向くと見張りを始めた。
マジで可愛い。
「そこで見張るの?」
「ココデミハル!」
石で出来てるのでそれなりの重さはあるはずだが殆ど重さを感じないのは不思議だ。
まぁ重くないから良いかと思っていると、丁度アナスタシアが修練場にやって来た。
「ハルキ様ごきげんよう。まぁその頭の上の愛らしい物は何でしょうか?」
アナスタシアが豪ちゃんに手を伸ばすと、豪ちゃんの目(正確には目と思しき窪み)が赤く光った。
「キケンキケン! コノヒト春希ネラッテル!!」
「「「えっ!?」」」
「狙ってるだなんて、私は、そんな! まだ何も!?」
アナスタシアは自分の目論見がバレたのかと思い慌て、春希は王女に失礼な言動をとる豪ちゃんに慌てた。
「何言ってんの豪ちゃん!? この方は敵じゃないから!」
頭の上から豪ちゃんを引っぺがしてアナスタシアを見せながら言った。
「ほら、こんな綺麗なお姫様が危険なわけ無いでしょ?」
「キレイナオヒメサマ? キケンジャナイ?」
「アナスタシア様すみません。その、生まれたてなので誤作動かと。」
「いえ、いいのですよ。ホホホ〜」
アナスタシアは目論見がバレたわけでは無いことに安心しつつ、春希から『綺麗』と言われて満更でもない様子だ。
「ほら、豪ちゃん謝って!」
「キレイナオヒメサマ、ゴメンナサイ…」
豪ちゃんはペコリと頭を下げた。
「あら、キチンと謝れるなんて、賢いのですね。で、この子はいったい何ですの?」
「勇者様が従属させたゴーレムです。」
「ゴーレムが従属する事などあるんですか?」
「勇者様が勇者様たる所以かと。」
「まぁ、そうなのでしょうね。」
そもそも勇者じゃないのでそうじゃないと思うが、それで納得して貰えるならそれて良いかと思う。
「アナスタシア様、勇者様にお話があったのでは?」
「そうでした! ハルキ様にお願いがありまして。」
「はい? 何でしょうか?」
「急な事で申し訳ないのですが、明日お義母様主催のお茶会に出席して頂けないでしょうか?」
「明日ですか? お茶会があると言う話は聞いていませんが?」
コンスタンチンが首を傾げる。
「はい、実はお義母様がハルキ様の事を色んな方にお話してしまったようで、皆様一目会いたいと…急に決まりまして…」
「その、私は作法とか分かりませんが大丈夫でしょうか?」
「明日はお庭で花を愛でながらアフタヌーンティーをする気軽な会なので作法などは特に気になさらなくて大丈夫なのですが…」
「が?」
「ただ、あの…質問攻めにはあわれるかと思います」
所謂女子会みたいな物らしい。
エカテリーナ様がどんな話をしたのかは分からないが、花を愛でながらと言うのはただの口実で、時の人である(偽)勇者を囲んで楽しもうという算段らしい。
何か自分に過分な期待をされているような雰囲気を感じる。
大丈夫だろうか?
女子会とは言っても王妃様主催で出席するのも貴族の奥様方やご令嬢だ。
何か失礼を仕出かしそうでやはり心配だ。
「えーっと、まぁ、分かりました。出席しましょう!」
「ありがとうございます! ハルキ様!!」
正直気は進まないがアナスタシアもエカテリーナに無茶振りされて困っているようなので断るに断れなかった。
「衣装ですが、本当なら誂えるべきなのですが何分急なのですので、魔道具の礼服を後でお持ちします。」
「分かりました」
衣装を誂えるなんて採寸などされると面倒な事になりそうなので、サイズを勝手に合わせてくれる魔道具は願ったり叶ったりだ。
「キケンキケン! コノヒト春希ネラッテル!!」
「えっ!?」
「豪ちゃん!!」
その夜、礼服を持ってきたエレナに豪ちゃんがまた反応し、
「こんな可愛い子が危険なわけないでしょう?」
とまた静止する羽目になった。
『可愛い』と言われてエレナも満更でもない様子だった。
〜次回プチ予告〜
春希初めてのお茶会