プロローグ
「よう!神一緒に帰ろうぜ。」
1学期最後のホームルームも終わり、帰ろうとしたところに声がかけられる。
声の主は菊地 悠人。俺の幼馴染で、小学校からクラスがずっと一緒で、家族ぐるみの付き合いがある。
「いいぜ。」
「おお。それで、やっとこの日だな。今から楽しみでしかたねえよ。」
「そうだな。」
こいつが言ってる楽しみなことというのは、今日からサービス開始のVRMMOだ。その名も『Creation Fantasy Online』。略してCFOだ。
悠人はβテストプレイヤーで、その特権で、誰か一人招待できるらしく、そして俺が誘われたというわけだ。
俺は最初はあんまり興味がなかったのだが、話を聞いてみると、今までのVRとは格が違うとのこと。自由度の高さも、グラフィックの鮮明さも、今までプレイしてきたゲームよりも格段に上だと言う。しかし、その程度なら俺は特に気にしなかっただろう。なんとこのゲーム、時間が加速するらしい。しかも4倍も。つまり、ゲーム内に1日中いても、現実では6時間しか経っていないというわけだ。まあ、そういうわけで俺もプレイすることにしたと言うわけだ。
「それじゃあ、ゲームの中でな。」
「おお。」
ゲームのことを話していたら、家の前に着いた。ちなみに悠人とは家が隣だ。
そして、ゲームの中で会う約束をし、それぞれ家の中に入る。
「ただいまー。」
まあ、誰もいないんだが。親は海外に春から出張中。冬まで帰ってこない。
「さて、まだ時間はあるな。」
サービス開始は午後3時。
今は12時。昼食をとり、洗い物と軽く掃除をして、風呂で念入りに体を洗う。
そして、2階の自室に入る。そこには、最新のVRカプセルギアが設置してある。身体全体を特殊なスライムで包み、よりスムーズな情報伝達が行える…らしい。さらに生命維持装置付き。
ちなみにこれは俺が株で稼いだ金で買ったものだ。
どうせやるなら最高の環境でやりたかったからな。
悠人のやつにもうらやましがられたから、買ってやろうとしたら、名残惜しそうにしながら断ってきたな。まあ、そうだろう。
これ1台で1億したからな。とてもじゃないが、CFOのソフトとは釣り合わない。
さて、あと5分か。丁度いい時間だな。起動して待っているか。