9月8日
くっそーーーーーって思う。
今しじみことぼくは悔しい思いでいっぱいである。
こういう書き方をするとこれはただの日記になるのであまりしたくはないのだが、もうどうでもよくなった。
それくらいぼくは悔しい。ほんと、くっそーーーーーって感じ。
今日は土曜日、脚本の学校がある日だ。ぼくはこの日、いつも通り学校に向かった。
いつも通り学校に着いてやどかり先生の話を聞いて、pdfにまとめられた世界観の描き方とか内面の葛藤の作り方とかを音読したりした。いつも通りだ。
けれど、そのあとにある各々が書いた脚本の読み合わせで、ぼくはとても悔しい思いをした。
ぼくは1ページ半の脚本を考えに考えて、そのあと考えに考えた。そして絞り出して提出した。
それが、あまり皆には伝わらなかった。
とくにいがぐりはよくわからずに読んでいたらしくて、ぼくは打ちのめされた。
ぼくが脚本を書いてる大きな理由の一つとして、人に自分が何をしたいのか伝えたい、というのがある。
だからいがぐりがよくわからんかった、という発言はぼくの心を打ち砕いた。
このとき、いがぐりが書いた脚本もあまり人に伝わっていなかった。ぼくもあまりよくわからなかった。だからぼくといがぐりは違う。
そう思ってもいい。だが、ぼくはたった六人しかいない皆さんを無下にしたくない。死んでもしたくない。
だからぼくはいがぐりが納得するようなものを書きたいと思う。
でもいがぐりは中々によくわからない人だ。結構謎が多い。脚本を見ていて、あんまり人と会話したことないのかなと思う。失礼だが、思うには思う。
あ、これは最近ちょっと思ったが、脚本も芸術の一種なのかなーって。
プロの人の脚本とか見るとそう思う。これのどこが脚本やねんと思うのがある。それでも許される世界なのだ。
で、だ。ぼくは色々考えた。何が自分に足りないのか。どうすれば人はぼくの話を読んで、いいなー、と思ってくれるのか。
まずは、プロの脚本を模写することだと思う。
例を挙げるならシナリオ誌。今手元には三冊ある。これを全部模写してみて、脚本をどうやって書いているのかを理解する。
今まで、そういうのを軽んじていた。だって日本語だし。文法も知ってるし、小説も書いたことあるし、大丈夫だろ、みたいな。
それがいけなかったのかもしれない。だって考えてみてほしい。
小説はぼくが小さい頃から傍にあって、読んだり書いたりしてそれなりには知識というか、こうなんじゃね、みたいなのがある。
だが脚本にはそれがない。もちろん、小説と脚本は似てるので、小説を応用すれば書けるかもしれない。
でも、それはあくまでかもしれないであって、というかそれで人に伝わらなかったのだから、考え方を変えるしかないのだ。
昨日はなろうの小説を動かそうと決めて、今日から模写もしなければならない。やることは山積みだ。
それに、今回出された課題に中に小説を書くというのもある。六百字だが、それなりに難しそうだ。でも、やってみる。とにかく、やってみる。
つい先日、ぼくは恥ずかしながら二十三になった。
まだ、二十三だ。まだ、吸収が必要だ。いろんなものを、色んなことを、考えなければならない。
ちなみに模写のことは写経というらしいので、次からは写経と表すことにする。
それにしても、この脚本の世界は面白い。読む人が違うとこんなにも違うものなのかと。
なるほどなーと思うことも多いが、え、それってどうなの、と思うことも多い。
それにしても言いたい。今回ぼくの脚本のダメ出しというか、ぼくの詰めの甘さを指摘したうに。彼女はぼくの脚本や他の人の脚本の指摘はして、自分のはまったく見せようとしない。
卑怯すぎる。高みの見物気取りかこの野郎。まあ、一生人の作品に意見し続けていればいいさ。
……なにこれただの愚痴日記やん。こんなんでいいのかね。
まいっか。
最後にぼくが書いたお題が忖度の脚本をここに載せておきます。
ぼくが散々悩んだ挙句あまり伝わらなかったものですが、誰かの胸に届けば幸いです。……いや、それは無理か。
以上、今日一日分のしじみの気持ちでした。
「いきたいところ」(任意)
作・しじみ
【登場人物】
新田聡(18)・新田久子(45)・倉持健吾(18)
O 病院の一室(夜)
げっそり痩せている新田久子(45)、手を震わせながら鉛筆でひらがなの練習をしている。字は汚くて読めない。
O ×××高校・聡の教室(日替わり・昼)
模試の結果を見る新田聡(18)。志望学部の欄はすべて医学部。判定はすべてA。それを丸めてゴミ箱に捨て教室を出る聡。
その後を追いかける倉持健吾(18)、ゴミ箱の前で一瞬立ち止まるが。それだけ。
○ 帰り道
健吾「はぁ? 東京に行かない? なんで」
聡 「……わかんだろ」
健吾「いやでもお前志望校全部東京のほうだ
ったろ、今回の模試」
聡 「それは俺の実力をちゃんと測るためだ
からな。ここらの大学書いたって絶対A」
健吾「じゃあお前どうすんだよ」
聡 「病院から一番近いとこ受ける」
健吾「……え、確かあそこって医学部――」
黙って先を行く聡。背中が小さく見える。
健吾「……あぁくそ!」
来た道を逆走する健吾。先に進む聡。
O 病院の一室(夜)
書き続ける久子。字が上手くなっている。
○ 帰り道(昼・数週間後)
家の方角に向かって歩く聡。追う健吾。
健吾「お前病院は! もうやばいんだろ!」
聡 「……もう忘れた。行き方」
○ 病院の一室
震える手で手紙を書く久子。
久子「でき……た」
そのまま眠りにつく久子。息を引き取る。
風が吹き、手紙が窓の外へと飛ばされる。身を乗り出して掴む健吾。中を見る。
健吾「……そっか、わかってたんだ」
健吾、聡の模試の結果を捨てようとする。が、ゴミ箱は手紙の失敗作でいっぱい。
健吾「……ほんと、不器用な親子だな」
○ 無我夢中で走る聡
○ 病院の一室
眠る久子を前に歯を食いしばる聡。
聡 「これからどうすりゃいんだよ……!」
そのとき久子の手に手紙が握られているのに気づき手に取る。震えた文字で、
『とうきょうにいってもしっかりね
うえからみてるよ』
聡 「(泣き崩れながら)うん……うん……」