秘密の思いは花にたくして エピローグ
僕が語れるのはここまでだ。想像をすることはできるけど、実際にどんな話があの時されていて、絵梨香先輩がどんな経験をしてきたのかは本人の口から語ってくれるまでわからないだろう。
あの事件の後絵梨香先輩がどうなったのかは事を大きくしたくないと初雪様の希望で本当に絵梨香先輩が勝手に転んで手を切ったということで処理された。殺人未遂にもなりそうなのに絵梨香先輩に処罰は何も下されていない。それどころか、なぜかこんなことが起きたのに噂にもならないのだ。
現在、絵梨香先輩は不登校とのことだ。通おうと思えばまたこの学校に通うこともできるし、この部活から退部していないから部活動を行おうと思えばできる。
もちろん、それほど強い精神を持っていたらだが、同性愛というのが桜月様や僕にばれただけであそこまでの行動に出るような人にそんなことはできないだろうが、会った期間は二度だけで簡単に判断はできないかもしれないが、落ち着いていて礼儀を重んじるような人をいったいそこまでしてしまったものは何だろう。
「私が話せるのはここまでです。」
もちろん僕の秘密にかかわるようなこと、お屋敷でのことは省かせてもらいました。
「え、そんなこと起きていたの?絵梨香先輩って一二年生にも慕われているあの絵梨香先輩?」
「ああ、恐らくそうだろうな。ちなみにちょうどお前の座っているところのあたりに血がべったりだったな。」
桜月様がそう言うと朝香さんは小動物よろしくビクッと反応し慌てて立ち上がろうとしたため思いっきり膝を机にぶつける。
よほど痛かったのかそれとも驚いたのか声にならない悲鳴とともに朝香さんは睨みつけるような目で桜月様に訴えていた。
「えーと、一応血は綺麗にふき取りましたし、汚れや傷がひどくなってしまったものは新しいものに買い替えましたので大丈夫だと思いますよ。」
「そういうことじゃなくって!ここに血だまりが出来ていたことが問題なのっ!」
「はい、気持ちはわかります。一応そういう説明をするべきかと思いまして。」
「ところで絵梨香先輩って不登校なんでしょ?いいの?」
「むろん私としては結果自分が傷ついただけで、一歩間違えればここにいる鬼灯や初雪が傷つくことになったかもしれないからそんなに甘くていいわけないと思っているさ。ただそれを真に決めることが出来るのは当事者である初雪だ。その一番の被害者である初雪が許すと言ったのだからそれ以上はないだろう。」
あのあと初雪様が一件の事について触れようとしていない何度か初雪様が何があったか、どうしたいのかを聞こうとしたが『私は彼女を許すわ、だからこの話は終りね』とそれ以上踏み込むことを許してくれない。
「さて朝香音姫、お前は既に後戻りできないところまで聞いてしまったが、ここにいるつもりなのか?まだ顧問の方まで入部届けがいっていないだろうから比較的簡単に入部を取り消すことはできるぞ。」
「ううん、後戻りできないからこそやる。だってきっと傷ついた心で猫の飼い主の相談に乗っていたわけでしょう。だったら私は力になりたいよ。」
「そうか、話し終えたことだし鬼灯帰るぞ。」
桜月様は本を読んでいて何も中身は話していないじゃないですか。
ほんと、とんだ警告でしたよベロニカさん。ベゴニアが示唆したものは。