盗賊狩り
「お、お頭!こっち来てくだせえ!」
「ったく、なんだ。くだらないことだったらぶっ殺すからな」
お頭と呼ばれた大男は気だるそうな足取りで下っ端と思われる男の元へ行く。
彼らは世でいうところの盗賊であった。
「はーん、これはこれは」
そこには裸で転がるとても可愛らしい少女がいた。
体はところどころ傷がついており、胸が上下していることに気がつかなかったら死んでいると勘違いしてもおかしくはない。
「結構俺の好みだな。何があったのかは知らねえが、こんなところに転がってる裸の女、なにもしねえってわけにはいかねえよな」
グヘヘヘと男たちが品のない笑い声を上げる。
「それじゃあ楽しませてもらうとするか」
「お頭ぁ、俺たちにもちゃんとまわして下さいよ」
「うるせえ。ぶっこわれた後好きにさせてやるよ」
「そ、そんなああ」
じゃあやるか、とリーダー格の男が少女へと近づこうとしたその瞬間、ものすごい轟音が鳴り響き、男がいた場所の地面は抉り取られたようになっていた。
もちろんそこに男の姿はない。
いや、正確には少しある。
そこに立つスケルトンが右手に持っているもの。
それは先ほどの男の首だった。
「ひ、ひえええ。お頭あああ!!」
「な、なんだこいつぁ!?」
突然の出来事に盗賊たちは慌てふためき、大声を上げる。
対してスケルトンはなにやらひとりでぶつぶつと言ってから右手に持っていた男の頭を握りつぶした。
破裂音とともにあたりには鮮血が舞い、その血しぶきは少し離れたところにいるほかの男たちの元まで飛んでいった。
それを見た男たちは我先にと逃げ出す。
こんなときでもしっかりと四方へと散り散りに逃げていくことからもそれなりにべテランの盗賊であることが伺える。
私は残りの数が4人であることを改めて確認すると、正面に逃げていった奴の前まで空間魔法の転移を使って飛ぶ。
そして驚きのあまり声を出せずにその場に立ち止まる盗賊の顔を掴み、先ほどと同じように握りつぶす。
そのまま残った体を反対側に逃げていった盗賊めがけて投げつける。
光速に近い速さで飛んでいく男はもう一人の男にぶつかって鈍い音と共にはじけ飛ぶ。
それを確認することなく私は残りの男二人の走っていく姿を確認し、ある魔法を使う。
「重力磁石」
魔法の効果対象に指定された二人の男はまるでお互いの体が磁石になったかのように引き合い、逃げようと足を動かすも互いに反対方向に逃げていたために後ろに引っ張られ、ついには耐え切れず元いた場所へと引きずられながら戻っていった。
私も即座にその場へと転移すると、体を密着させている男たちの腹を抜き手で突き刺す。
「あ、あがががあぐぎゃあああ!!」
「ぐああああ」
男たちが悲痛な悲痛な叫びを上げる。
私はそれを気にも留めずに、記憶干渉の魔法を使って二人から情報を引き出す。
彼らからもたらされた情報によって私はこの外の世界の情勢を理解する。
ここは北、東、西、南、中央とある大陸のうちの東大陸。
東大陸は他の大陸に比べて気温が安定し、養分に富んだ土であるため作物が育てやすい環境となっている。
そのため他の大陸と比べると人口が少ない代わりに農業や鍛冶などといった生産業が盛んである。
鍛冶もまた気温の変化などに大きな影響を受けるため、腕のある鍛冶師が多く存在するのもまたこの東大陸であった。
その他にも世界通貨である銅貨、銀貨、金貨、白金や最寄の町のある方向なども手に入った。
そこまで理解した私は自分に貫かれたまま今にも死にそうになっている盗賊の男二人に止めを刺そうとして、考え直す。
これは自分の新しく知りえた能力、生殺与奪を使ういい機会なのではないだろうか。
せっかくだから能力値とスキルを全て奪ってみるか。
そう考えた私は生殺与奪の発動を頭の中で念じてみる。
すると自分の中に何かが流れ込んでくるような不思議な感覚に襲われる。
盗賊たちに解析の魔眼を発動させながらその経過を見ていくと、彼らの所持していたスキルがひとつひとつなくなっていき、能力値も減り続けてついには全てのパラメータが枯渇してしまった。
腕にぶら下がっている男たちはまるで本当に枯れてしまったかのようにやせ細って死んでいた。
私は彼らの腹部を貫いている腕を抜くと崩れ落ちる盗賊たちには目もくれずに、解析の魔眼を発動させる。
効果対象はもちろん自分である。
オーバー・スカル・エンペラー(Lv500)
HP:100825/100825
MP:5647195/5673435
攻撃力:22672
魔法攻撃力:7648880
防御力:22195
魔法防御力:2760550
速度:985276
精神力:1522344
装備 なし
スキル
「超越者Lv2」「魔道士Lv8」「モンクLv☆」「魔物使いLv1」「盗賊Lv3」「剣士Lv2」「暗殺者Lv2」「罠師Lv2」「炎魔法Lv8」「水魔法Lv8」「雷魔法Lv☆」「風魔法Lv☆」「氷魔法Lv☆」「闇魔法Lv☆」「重力魔法Lv5」「時空魔法Lv3」「空間魔法Lv7」「麻痺無効」「睡眠無効」「石化無効」「毒無効」「魅了無効」「混乱無効」「呪い無効」「炎熱無効」「氷結無効」「移動阻害無効」「腐蝕無効」「解析の魔眼」
おお、新しいスキルがこんなに簡単に手に入るなんて。
能力値の上昇は微々たるものだが、スキルさえ手に入れられればなんら問題はない。
しかし最初の男たちも殺す前にスキルをとっておくべきだったなと私は少し後悔した。
「ああ、そういえば落としたイースを拾いに来たんだったな。まったく、あいつは確かこっちに・・・」
私の視線の先には、先ほどまで満身創痍で倒れていたイースがぼろぼろの体のまま四つん這いになっていた。
彼女は待っていたのだ。
その背に乗るべき主人の帰りを。
椅子としての役割を果たすために、動けるはずもない体に鞭を打ちながら。
私は無言でイースの元へと歩み寄り、その背にそっと腰掛ける。
彼女の背は傷だらけになりながらも、その座り心地の良さを私に改めて実感させてくれる。
だがやはり元の美しい体のときの方が座り心地はよりよい気がする。
私はイースを魔法で回復させながら指を彼女の体の胸からお腹にかけての部分を優しくなでる。
その度にきゃあ、と声を上げるイース。
その反応が面白くてついつい私は笑みをこぼしてしまっていた。