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ぺんだんと part1  作者: Erin
3/4

噂のあいつ

「~♪」


 鼻歌を歌いながら学校に向かう。


色々とスッキリしたせいで、逆にテンションが高くなってしまった。


ドサ!


「いったー」


案の定、門から少し離れたところで誰かとぶつかって転んでしまった。


「あっ、わりぃ。大丈夫か?」


ぶつかった相手は今学校で噂の不良、望月(もちづき)(しゅん)だった。


私とはクラスが離れていて、よく知らないけど、問題をよく起こすという噂は聞いた。


おまけにモテる。不良なのになんでモテるんだろう? 前からずっと疑問に思っていた。


しかも、不良のくせに金髪ではなく黒髪で理系男子にいそうな髪型だ。


「だ、大丈夫です」


「次は気をつけろよ!」


望月君はそのまま門の中に入った。


立ち上がろうとすると、望月君のハンカチが落ちているのに気づいた。


「あ! 待って!」


呼び止めようとしたけど私の声は届かなかった。


「また会ったときに返そう」





ガラガラ


いつもの調子で教室の扉を開けた。


いつもなら私が入った瞬間教室の空気が悪くなり、女子に嘲笑われるのに、


何も起こらない。


もしや拓斗と別れたからいじめがなくなったのか? それにしては情報早すぎない?


まあ、収まったのならどうでもいいか。


久しぶりに聞く賑やかさの中、私は席に座った。



1時間目からいきなりテスト返し。


「日高さん」


「はい!」


名前を呼ばれ、テストを受け取る。すると先生が気持ち悪いくらいの笑顔で私を見る。


「日高さんおめでとう! 学年トップだよ」


「え、うそ!?」


解答用紙を見てみると、なんと100点! うれしさのあまり、ちょっとにやけてしまう。


 4時間目までテスト返しが続いた。しかも全教科、オール90点代だった。


「日高さーん、テスト見せて~」


璃子たちが紙を勝手にとる。だけどそれを見た瞬間、隣で見ていた美雪たちも目を丸くした。


「ぜ、全部90点代!?」


「えええええええ!?」


クラスのみんなも目を丸くして私を見た。


「あのさ」


女の子たちがニヤニヤしながら話し出す。


「なんか、いままでちょーバカだと思ってたけど見直しちゃった!」


「え、ああ、ありがとう」


皮肉っているのか褒めているのかよくわからないけど、とりあえずお礼を言った。


こいつら絶対裏で何か企んでる……。





昼休みになり、裏庭で食べに行こうとすると璃子たちに呼び止められた。


「一緒にお昼食べよー」


「あ、うん」


咄嗟に了承したけど、どういう風の吹き回し!?


なんか今日のこいつら気持ち悪い。


結局教室で一緒に食べ、会話にも自然に馴染めたが、由梨は私に目も向けず話してくれない。


まず会話の内容が先生の悪口というのがタチ悪い。毎日こんな話題なのだろうか……。


ああ、裏庭で食べたい。




「2学期から専門委員が変わりますので決めたいと思います」


5時間目、委員会、係決めの時間になった。1学期は理科係をやった。仕事もそんなにないし楽だから。


(次は数学係にでもなろうかな・・・)


「委員長決めは推薦でいきます。推薦したい人いるか?」


ぼーっとしていると先生の声が耳に響いた。委員長か、私には関係のないことだ。


そう思って机にかまぼこ状態になろうとした。


「誰もいないのか? じゃあ先生が推薦しよう。日高、委員長やってみないか?」


「え!?」


突然先生に推薦された。断りきれない空気になっていたので、受け入れてしまった。


「誰も反対する人いないので委員長は日高に決定しました。じゃあ次は――」


なんて勝手な……。



掃除の時間、女子が私の周りを囲んだ。


「テストが全部90点代だったからって、いい気になってんじゃないわよ!」


「委員長になったからって偉そうにするんじゃないわよ! あんたが推薦された理由はね、点数が高かったからなだけなのよ!」


女子たちはそう言って、私を突き飛ばした。転んだ場所はぬれていて、制服が汚れてしまった。


わーなんて勝手な(2回目)。誰も反対していなかったのに。さっきまで一緒にお弁当食べてたのに。

やっぱり、なんか企んでいたのね。


「うわーっ、だっさ!」


みんなは笑いながら去っていった。その群れの中に璃子、美雪、まりがいた。


ほかのみんなと一緒に私を見ながら笑っている。


ほんと……女って恐い。


とりあえずトイレで汚れた制服を脱ぎ、体操服に着替えた。


家に帰る前に気持ちを落ち着かせるため、裏庭に向かう。


「ハァー、疲れた」


あの大きな木にもたれ、溜息をつく。やっぱり心の奥底では悔しかったのか怒りが収まらないのか、涙が頬をつたっていく。



ドサッ!


「え!?」


突然上から男子が落ちてきた。二階からだから死んではいないのだろうけど、恐る恐る近づいてみると、朝ぶつかったあの望月瞬だった。


「イッテー。ったくあいつらぶっ殺す!」


「だ、大丈夫ですか?」


心臓をバクバクさせながら声をかけてみた。すると望月君は起き上がって私をじーっと見つめた。


「な、なんですか?」


「おまえも大丈夫? 泣いてたみたいだけど」


「あ、」


素早く涙を拭う。


「ちょっと、色々あって」


「ふーん」


「あ! そういえば」


私は朝、望月君が落としたハンカチをポケットから取り出した。


「これ、ぶつかったときに落としてったよ。ちょっと汚れてるけど……」


「いや、元から汚れてたし、サンキューな」


「おーい瞬――、大丈夫か?」


上から望月君を呼ぶ声が聞こえた。上を見ると、望月君といつも一緒にいる藤原君がいた。


拓斗の名字も藤原だからちょっとドキッとしてしまう。


藤原って名字はいっぱいいるけど、なんか雰囲気似てるし親戚かもしれない。


いや、気のせいか。


「じゃあ、俺行ってくる」


「ああ、うん」


望月君はそのまま木に登って窓から教室に入った。


この大きい木のせいで、藤原君から私は見えなかった。一緒にいたらなんか噂されそうだし……。


「さてと、帰ろうか」


私はは立ち上がって背伸びをした。


あと2年。そう、2年なんかあっというまだ。私なら絶対、越えられる。


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