九発目:そのNINJA、下心満載につき。
おやすみなさい。
そろそろいろいろな要素が出てきます。ちょっとだけ進むんじゃよ。
「ミトダウン――まあ、問題なし。 兵士の時と移動。ちょいと見てたけどいい手際だねえ……」
あの黒装束の物体――声からして男だろうか。
彼は2発目をかすらせ、不敵に笑ったかと思うと、今まで使用してなかったスキル―――瞬動を使ったのだ。
瞬動――――それは移動系スキルの中で、前衛などにはなかなかに人気があるベーシックなスキル。
その実態は、瞬間移動。
短距離よりもちょっと伸びたくらいの移動距離。そして動いた後の姿勢を制御でき、尚且つ次のスキルや動きまでの硬直時間が少ないというメリットだらけのように見える――が。
最大の敵はMP使用率が途轍もなく高いという事。そして、移動先で何があるかわからないという点である。
平凡な前衛が瞬動を使う場面。それはやはり第一に、危険回避で有ろうか。
防御力があり、HPも高くまとまっているお手本的な騎士プレイヤーがいたとしよう。
そういった人たちは、HPと防御力を上げるために盾と重鎧を基本的に装備する事が多い。
だが、そこに発生するデメリットは――火力不足と、移動速度の低下である。
普通の現実と区別がつかないようなリアルさを持つゲームでは、それこそ――探知系のスキルを持っていない、とでもしなければ――曲がり角から敵が飛び出て、地面にトラップが仕掛けてあり。
その場所をを踏んだら死ぬ――といった危険からは遠ざかる事ができる。 そして、パーティに1人はそういったものを入れるのがほぼ常識だ。
だが、爽快感を売りにするゲームは少し違う。
敵の攻撃は防御するものではなく――避けるもの。
つまり――敵の即死攻撃を避ける時などに、使われることが多いのだ。
それを彼は――――複数回、移動に使った。
これは―――彼の保有しているMP量が多いコトを。そしてそれを潤沢に使ってもなお攻撃スキルを使えるほどに。
まだ自分のMPには余裕があるぞ、と執拗にに見せつけてくるようなものだった。
――――そして、それを見て驚いた刹那。
彼はそう――空中を蹴ってみせたのであった。
それは――空中を飛び、自由次際に飛翔し、方向を変えて攻撃をするような者たちが使うような。
空中歩行であろうか。 方向転換であろうか。
いや、もはやそれはどうでもいい――――問題は、そのあとの行動である。
瞬動をその後直ぐ使い――空中を|走ったのだ。
その動き、正に廃人。
時計塔から日の出と共に飛び降りたと思ったら、短距離ワープからの空中をジャンプし方向転換。
そして短距離ワープを繰り返してすぐさま目の前にたどり着く。
あとは――殴る。
実に単縦明快である。素晴らしい。
だがそれは――褒められたことではない。
実際ミトは顎を殴られて脳震盪でも起こしたのか、真正面から下に少し下がるような殴りを、顎に受けて沈んでいる。
効率が良すぎるのも、問題というものである。
――そして、一息。
「ミトに接近――イチ――――ゼロ。 ――良いよ。 姫さん。やっちゃって」
――それは、許可を出すのであった。
――――丹はミトを殴ったのち、インベントリーに、そのライフルを回収。
そして気絶したミトを―――にぎにぎしていた。
どことは言わない。 そう、言ってはならない。
にぎにぎしているのだ。 そう、柔らかい物を。
それなりにとはいえ――あまり主張されてはいない、が。
それを現在――丹は、死ぬほど体感していた。
殴った瞬間から直観していたのだ、顎の関節のずれ方と、顔の肉尽き。
あとは肩幅と、だぼっとして隠れてはいるが骨格。
脱がしやすいと思ったつなぎのような洋服の下にはぴっちりとした、ラバースーツのようなものを着ており、どうやって脱がすのかが丹にはわからない。
それでも――柔らかいそれと全身の温度を体感するには十分だった。
「ひょおお……ふへ……ふへへへ…………」
非常に気持ちが悪い。
非常に、だらしがない笑みで――でれっと、していた。
気持ち悪い。
うしろからゆっくり歩いていたそれは。丹の姿を確認する――
「気持ち悪すぎ……――あっ」
と、同時に。
しゃべってしまった。
「おォん!?」
「アッハイ」
あっと声を出した瞬間に手に持つものを全力で振りかざした、"姫さん"。
声がしたと同時に全力で振り返る丹、急な回転でゴキゴキと骨を鳴らして首を曲げた先には――――金属バット。
刹那。
鈍い、響いてはいけないような音が――路地裏に響いた。
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そして累計ユニークが200も超えてしまいました!!皆様本当に有難うございます。
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