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紅ヰ拳の執事様。  作者: 昕篠
その拳、異世界に届く。
8/12

八発目:その銃者、即堕ちにつき。

よわいわけじゃないんですよ。 瞬動なんて会得してるほうが悪いんです。







 飛来。 丹が気付いたそれは、12時間――それくらい程前に感じたばかりのスキルを誰かが使用した時に感じる、感覚。



 ピンと糸を張ったかのようなその頭に、チリッと燃えるような、刃物をぴたりと垂直につけられたかのような。

 その感覚は懐かしく。 だが、忘れることは無い。


 右手を左後頭部、耳よりも若干横程。 気配遮断で隠され、発砲音も飛来音も。本来なら薬莢が跳ねた時に奏でるだろうその音も、そして――心音さえ。

 スキルだろうか、装備品だろうか。 ――すべては程よく隠され、ノイズの向こうへ誤魔化される。



 先尖りしたその死を分かつ筈の鉄塊は、既に有る事にされたかのような速さをもって。


 着弾した。






 ――――丹の、掌に。



 着弾の刹那若干すらたりとも体が揺れることのなく、そのガントレットの手の中で曲がり、凹み。 衝撃を逃がそうと、手を逃げるように、指の隙間を縫うように――ズレる。

 本来であればその時点で流れ弾の様に掠めるはずのその歪み潰れた鉄塊(じゅうだん)は――もとよりそのつもりがあったかのように、薬指と中指の間へと収まった。




 ――続けざまに、2発目(おかわり)


 首を狙ったであろうそれは若干の揺れによって上へと修正される。

 着弾点は――――うなじ。


 受け取った鉛玉を持った手を下に。

 同じように歪み、つぶれるその鉄塊(なまりだま)


 人差しの指先で受け止めたはずのその塊は、受け止めきれずにわずかに横へ。

 髪の毛を数本、散らし。



 ――丹はニヤア、と。鳥肌が立つような笑みを浮かべた。






 ミトは。

 恐怖した。

 1発目、からの確率リロードスキルが運よく成功し、続けざまに撃ち付ける――だが、1段目からも若干下にズレたその鉛玉。


 1発目が防がれるのは想定内。

 だが――()()()は予想外。


 ニヤアと、狂喜を前面に映し出した化のようなあの笑み――それをスコープ越しに視認したと、同時。

 日の出が、始まった。




 ――すぐさま移動を開始。 滑り落ちるように宿の屋根を抜け――路地を足音をさほど立てずに走り出す。

 朝が迫るにつれ置きだした住人達。それに合わせ、上手く、人を使い、隠れればなと――――




「しっていたか」


 鳥肌。

 戦慄。



「まおうからは――」


 恐怖。

 絶望。



 そして――


「にげらァれねええんだぁアよオォオオォオオォ―――ッッ!!ヒャハッ!ヒャッハッ――はッひゃっはハッハハハハッ――――――!!!」



 絶対、

 絶命。





 ――ミトは、その飛来した笑みを浮かべたそれに対抗するすべを持たず。

 体を殴られ、意識が混濁し。

 黒いペンキをかぶせられたかのように――暗い重い底へ、沈んだ。




NEXT⇒九発目。 明日朝6時に投稿予定です。よろしくお願いいたします。

ちょっとずつ主人公をしつけてもらいましょう。 

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