四発目:そのNINJA、行動を始める。
ちょっとずーつ物語が動きます。
「――――寒ッむ!?」
屋根に出た丹。
あまりの寒さに身を震わしてしまう。
足元の装備としては厚い布で足元を覆っているようなもので、寒さとしては感じない。
ガントレットも厚い布の上にはめているので寒さはない――のだが。
「冬の初め――ってところか」
雪こそ振っていないものの、深々と染み渡るその寒さ。
ブルリ、と体を一つ、震わせる。
目の下に広がる街は、ところどころに小さな光がぽつぽつと点在していた。
先ほど素っ裸に剥いた兵士に対して少しだけ憐憫を浮かべながら、思考の隅に捨て。
数百メートルもあるかという地上に降りようと努力を始めたのであった。
――――騒がしくなる城内。
なぜならばそれは、何かあってはいけないはずの王城にて爆破事件が起きたからである。
――謎の不審人物を隔離していた塔が半壊。それだけでも大事件だというのに、その謎の人物はは、先ほど確認兵士の話によるといないというのだ。
その、限りなく限界にまで高められた武具と共に。
時は遡り、昼。
城を掃除しているメイドによって一人の男が保護された。
全身黒色に染められた礼式用に近い服を着、その手と腰に実用性は皆無に見えるが、その実畏怖に満ちたオーラを放つ武具を抱えたその男。
白い肌は女性にも引けを取らず、その整えられた顔は神の作る造形に等しい。
男には珍しい、少し長い、純白の髪と、瞳孔を確認した際に見られた、火炎のように紅い目。
――それは、世に出回る中で呼ばれる言葉でいう悪魔の色であった。
それが男だと何故わかったのか、それは案の定全裸にしたときにわかった下のモノの確認である。
剥いた兵士に男の気がなかったのが、不幸中の幸いであろうか。
昼頃に保護されたその男は、悪魔の色で構成されているその外見もあり、全裸に引ん剥いてから牢屋に入れられることになった。
今回起きたのはその――悪魔が入れられているという檻での出来事だった。
兵士は夜中、熟睡中だというのに超大音量の報告によってたたき起こされ、臨戦態勢を布く事になる。
そしてそれから約半日後。
「――――ドーモ、モブヘイシ=サン。 丹デス」
夜中、臨戦態勢を敷いてから1時間といったところか。 中庭を警備していた兵士はその言葉によって半分寝かけていた意識を強制的に戻すことになる。
「――ッ! 誰だ、貴様――――」
その言葉を皮切りにその兵士は動かなくなった、殺してはいない。 おそらく、きっと。
「どいつもこいつも反応しかできねえクズばっか、対人としてどうかと思うぜ……ってな?」
刹那。後ろから切りかかってきたその兵士の太刀筋を読み、半歩横にズレて右手を上げ、斜めに構えた瞬間――絶妙な力加減の先、シャリン、という音を立てて受け流す。
受け流されるとわかりきっていたらしいその兵士は、そのままななめ上に反すように切り上げる。――が。
その反した剣は手によって捕まれた。
圧倒的な握力と、その防御力。 兵士の剣など鉛同然だと言わんばかりに―――折曲げる。
「――ンッなバカな」
一兵士であるそれは、このような状況はさすがに想定していなかったのだろう、兵士による戦術は基本物量作戦による押し潰しである。
まさか主要なメインウェポンである剣を壊されるとは思っていなかったらしく――狼狽えた。
その瞬間、スッっと後ろに忍び込んだそのNINJA。実しやかに首筋にチョップを繰り出した。
鎖帷子などで防御されていたであろうそれは、ガントレットが構成されている素材に強度で勝てなかった。
「――とりあえず、謎のこの世界……どうして来ちまったのか。調べねえとな」
ぼんやりと呟く人影。 そしてその傍らには無残にもへこみ、ガチャリと音を立てて倒れこむ兵士。
呟いたその人影は、赤い目がわずかに発光し、赤く光る拳を握りしめるNINJAの様な何かであった。
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