十一発目:その銃士、圧倒的憤怒。
まず慣れなきゃいけないのを忘れていました。
話せ――と言った後、現れたのはその姫さんとやら。
どうやら彼が一番良く、話を知っているそうだ。
彼によると――――自分たちはプレイヤーであったこと。
彼らはもともとワンパーティでクエストをしていて、ボス部屋から転移で戻ってきたところ、空気が違うことに気付いたこと。
――この世界はすべて本物であること。
その他、小さなことを丹はぼそりぼそりと喋る、その金髪ロングゆるふわヘアーに聞いていた。
時折質問をしては肩をビクッと振るわされるのは、少し気疲れしたが。
後、簡易的にだが自己紹介をしてもらった。
エリックは典型的な指揮官、そしてバフ&デバッファーで、ギルドのリーダー的なものを務めているらしい。
姫さんと呼ばれたそれは、所謂ネカマ――中身は男だったらしい。
最近になって女としての自覚が出てきて大変だったんだよねー、などとエリックと気軽に話しかけていたが――
丹は卒倒しかけていた。 なんだネカマって。あのゲームにもそんなのいたのか、と。
パッと見じゃキャラクターは完全に男女区別がされていて、キャラクリエイトの時のパラメーターを最大限にした男と、パラメーターを最小限にした女。
その2つが横に並ぶと、フェアリーとオークのような図体の違いのレベルで違うと言われていたくらいだ。
そして、何よりも、そのゲームではロールプレイが推奨されていたのだが、その職や恰好、性別に合わせたモーション補正が入るようになっていたのだ。
そのせいで、アバターが女だった場合、いくら男が胡坐のポーズをとり、くつろいでいるつもりだとしても、実際のモーションとしては足をそろえて正座でもしているか、崩してお話しているようにしか見えないのだ。
それも含めて、あの世界ではリアルの世界の性別を聞かないことがルールになっていた。
まあ、それはともかく――と、話を戻し始めるエリック。
如何したものかーというところで。
「……起きたのね」
全身つなぎじみた格好をしているその女。ミトが現れたのであった。
「あらお早うミト、こちらの人は丹。まだ鑑定以外には何も聞いてないけどね」
エリックが振り返るとそう言葉をかける。
丹はあああの時の銃女――と思ったが。
「ああそうか、武器取ったまんまだっけか」
ぼそりとつぶやく丹。
ミトはその時、顔を思い切り赤らめ――
「そうよこの泥棒変態淫行忍者もどき!さっさと私の返して! あと―――あと、あれはんなの!?エリックと姫から聞いたわよ――――」
大声で罵倒し始めたのだ。
これには思わず丹もアッハイ、としか返せない。
周りに何かおおわれているのだろうか、地下なのか。 暗くてあまり見えないその部屋では良く声が反響した。
おかげで丹はほとんど耳がマヒしているような状態に近く、若干そのキンと響く声に頭痛さえ覚え始めた。
そんな中、一つ話をしてみようと丹は言葉を紡ぎ出す。
「まァまて」
「何を待てっていうのキモオタ忍者もどき!?あのときわたしは気絶とかそんなものじゃなくただスタンした状態で麻痺してただけでされたこと覚えてるんだからね!?」
人の話を聞いていない。
丹自身もあの時のは思わずやってしまったことであって――特段罪悪感は感じていなかった。
わるいことではないだろう、と思っていたのだ。ゲームの頃であったならばセクハラとして訴えられて衛兵に連れて行かれるだけだったのだから。
「ご愁傷様だッてことだろ」
「ご愁傷さまじゃあーないでしょ!?だいたい目の前に女がいるからってそーいうことする!?猿とか叫んでたようなチンパンジーですかアンタはーっていってんのよ!わかる!?」
――――丹は自分に原因があるとも思わずに。
ある意味で丹も本人が苦手なマイペース側の人間である。
「ひとのはなしをきけ」
「そっちが聞いてないからこうして怒ってるんでしょ何言ってんの!?さっさと私のを返してよ!気持ち悪い!謝りもしないし! ――エリック!このキモオタ変態チンパンジー忍者もどきから私の取り返しておいて!?わかったわね!」
――そういって丹にキッと人睨みしていくと、その頭でも踏み砕かれそうな鋭い足さばきで部屋を離れていくミト。
エリックはミトがあそこまで激怒したのを見たのは久しぶりだったらしく。
姫さんと共にぽかんとしながら後ろを見ているのであった。
NEXT⇒12発目。 明後日朝6時ほどに少し多めの量を投稿予定です、よろしくお願いいたします。
章タイトルについてですが、最初はネタバレが強いのでキリがいいところまで投稿したら伏字を外す予定です。
あっまってていうかあれですのあれです、執筆現在PV1188にユニーク320人ってどういうことですかほんと有難うございます有難うございます(血反吐
これからもがんばって書い綴って参りますのでよろしくお願いいたします…!