1ー8 異世界への適合
最近忙しいな・・・
俺の最初の仕事が成功した後、俺は街に向かった。理由はただ一つ。服装だ。
俺がこっちの世界に来てからは、ブレザーを脱ぎ去りネクタイはポッケに突っ込んで、基本シャツとズボンで動いていた。
そして前回、色々と無茶をしてしまい、ズボンは破れシャツもボタンが紛失するという失態だ。
スニーカーだってそうだ。もうボロボロになってしまっている。なので、早急に服が必要なのである。
「なあ頼むよおっさん。これ譲ってくれって・・・」
「なぁに!?こんだけ値切ってやったのにまだ欲しがんのかこのガキが!」
だからこうして服屋の店主であるおっさんと交渉という戦争をしているのだ。
俺の所持金は金貨一枚に銀貨五枚。現在の価値で15000円である。まあそれはどうでもいい。
俺が手に入れたいのはまず革のズボン。ズボンは頑丈でなるべく良い奴の方が絶対良いのだ。
下半身を守る防具にもなるのだから当然だ。俺は機動性と実用性を考えているのである。
次に選んだのは靴。そう、ブーツだ。丁度アキレス腱の付け根あたりまであるものだ。
こんな物騒な世界では頑丈かつ丈夫かつ長持ちのやつがいいのだ。戦ってるときに靴が壊れるなんて論外だ。
それにこのブーツは少し特殊で、軽く、丈夫で、通気性も多少はあり、かつどんな場所も一応歩ける、というすばらしいものなのだ。
そしてベルト。こいつは俺が以前手に入れた剣を引っ掻けるハンガーの様なものが着いている。だから買う。
これら全てを着用した俺の姿を表そう。
黒のブーツにグレーの革のズボン。腰には剣を二本、そして黒のタンクトップ。
この時点で機動力抜群なのは一目瞭然だ。だが上がタンクトップだけなのは非常に寂しい。
なので、俺は異世界なら誰もが憧れる「アレ」を手にいれたいのだ。
「頼むよおっさん!俺寒がりだからこんな上着じゃ風邪ひいちゃうって!!」
「だからって鎧と外套タダで手に入れようなんて思ってないよな?」
そう、鎧と外套。この二つだ。
第一に鎧がなかったら生存率が非常に下がる。これさえあれば安心できるし、目の前の敵との戦いに集中できるのだ。
第二に外套。これはフードも着いていてかつ、鎧を着た状態になった時のダサイ格好を最小限に隠すことができ、かつかっこ良くなれる冒険者の必需品・・・だと思ってる。だから買う。
「あ~あ。そういや、なんか肩が凝ってんな~」
「僕がマッサージいたします。いえ、させてくださいませ」
「ああっと、そういや最近部屋が汚れてんな~。掃除したくねーな・・・」
「おまかせください店主。この僕がすぐに片付けますよ」
「そういや、そろそろ買い出しいかねぇと母ちゃんに叱られちまうな」
「店主さん。それじゃあ僕が代わりに怒られますよ」
「そこは買い出し行くっていう流れだろうが!ほら、さっさとやれや!!」
とまあ、こんな感じで絶賛パシリだ。タダで手にいれるのは簡単な事ではないのだ。
「しょ~がねぇから、今回はタダでやる。だが次があるとは思うなよクソガキ!!」
「はい、もちろんでございますよ店主」
「ケッ!さっさと行きな!!」
大変だった。非常に大変だった。僕もう疲れたよ・・・とか言ってる暇はない。
俺が手に入れたのは革の鎧と茶色の外套である。これで俺も異世界の住人である。
鎧を身に付け、外套を纏う。試しにフードを被ってみると、なんだか不審者になった気分だ。おそらく髪の毛までは簡単に隠れてしまうだろう。
こうして俺は、服装がかっこ良くなったのだ。
アジトに帰り、みんなからはスゲー!なんて言われてちょっと嬉しかった。
服装を整えてから丁度二日後、クーガに俺は呼ばれていた。
クーガの所につくと、何やら真剣な表情で俺を見るクーガ。いつもの笑顔はそこにはなかった。
「リーク、仕事だ。今回は俺と二人で、だ。いいな?」
「了解っす。そんで、どんな仕事なんっすか?」
俺も口調が変わってしまった。クーガの前ではただのゴロツキに変化である。
「ああ・・・・今夜、この山道を通る商人の馬車を襲う。準備しておけよ」
その言葉に応答すると、俺は足早に倉庫へと向かった。無論自分の剣を取りに、だ。
だが俺は甘く考えていたのだ。誰かを「殺す」という行動を。人の命を「奪う」と言うことを。
多分次くらいにヒロインがでると思うよ