1ー6 山賊稼業
ヒロインを出したい。一応ハーレムなのに・・・
俺がこの山賊団に入って、二週間近くになった。その間に武器を買ったりからかわれたり、ケントを殴ったりして過ごしてきたが、遂に俺達の仕事がやってきた。
そう、人殺しだ。
「明日の昼頃、この山道を商人が通る。馬車が二つ、おそらく街で商売してきた後だ。たんまりと金を溜め込んであるにちがいない」
日が沈みかけている頃、俺達はクーガに集められた。見張りを除いた全員が今、この広間に集まっている。その表情にいつもの笑顔はなく、真剣そのものだ。
「作戦としてはいつも通り、二手に分かれる。と、言いたいところだが、今回は少し変更する」
「それって・・・ヤバイって事ですかい?クーガさん?」
ケントはいつも通りの小者口調になっている。いつもの口調なら少しは格好がつくんだがな・・・。
「ああ。護衛が多いんだ。おそらく俺達の噂を聞いたに違いない。まあ、ぶっ殺すがな!」
クーガのその冗談で広間の空気は少し明るくなる。やはりボスはこういう素質を持っているのだろうか。
「今回は三つに分かれる。奇襲と、待ち伏せと、誘い込みだ。こいつらは俺達の事を知っているからそれを利用させてもらう」
クーガが説明した作戦は、まず奇襲する。しかしここではあまり護衛は殺さない。あくまでも山賊に襲われたと言う印象を与えるのだ。弓矢で威嚇。最低、馬車に矢を当てるだけでもいい。ここで奇襲班は逃亡、待ち伏せ班と合流する。
次に誘い込み。この商人達は絶対に通らなければならない道がある。そこに前もって待っている。だがここでは攻撃はしかけない。逃げるのだ。
今回の作戦で一番重要なのがこの誘い込み班だ。全員腕や頭に包帯を巻いて商人達が来るのを待つのだ。そう、相手が痛手を負っていると相手に認識させるというのだ。
おそらく護衛の何人かは来るだろう。なんせ誘い込み班はたった五人でやるのだ。相手の護衛は数が多い。全員が誘いに乗るとは考えられないが、もし来たら死人が出ると考えていいだろう。
ここでの目的は護衛の分割。馬車を守る護衛を減らすことが誘い込み班の仕事。と言うわけだ。
誘い込み班が逃げる先。そこに待ち伏せ班がいる。ここで誘いに乗った護衛を一気に叩く。無論三つの班全員で、だ。
そしてついてきた護衛を片付け、残りの護衛と宝の山が待つ所へ全員で行き、一人残らず殺す。
これが今回の作戦だ。なかなか合理的だとは思うが、局所的に危険が固まってしまう。誘い込み班は待ち伏せ班がいる場所まで命がけで逃げるのだ。それも待ち伏せ班が近くにいるわけではない。五分は逃げねばいけないんだ。
「今回の誘い込み。ここに入った奴は最悪死ぬ。その事を踏まえてここに誰を入れるかは考えてある」
ドクン、ドクンと心臓が鳴る。俺はどこに入るんだ。いや、俺は恐れているんだ。
一番危険な所に入りたくない。それは誰もが思っている事だ。だが自分が選ばれたら、そんな事を考えている。
どうか俺じゃありませんように。そう考えているのは俺だけではないだろう。なんせ致死率が高いんだ。ここにいる奴等で悪い奴がいないのは知っているが、やはり選ばれるのは嫌だろう。
そして最初の人間が決まった。小柄で足が速い奴だ。そいつは選ばれると自分が選ばれるのは分かっていた、という態度を取っている。次の奴も、その次の奴も選ばれている。そして、四人が選ばれた。
「最後のやつは・・・」
最後に選ばれる奴はきっとハズレを引いたと思うだろう。逃げ切れたと思った所に宣告されるのだ。精神的にキツイだろう。選ぶなら最初に選んでくれと思うだろう。
「・・・リーク。お前だ」
「・・・分かりました」
図体がデカイのに足が速く、体力もある。全くもって合理的だ。きっと護衛の奴等に目立つよう俺を選んだのだ。反論しようとは思わない。これが一番生存率が高いのだ。みんなが生き残る確率が高いのだ。腹をくくるしかない。
「誘い込み班は以上だ。お前らの仕事はただひとつ。走って走って走りまくる事だ。ちゃんと護衛さんを連れてきてくれよ。お前らが今回一番重要なんだからな」
「「「はい!!」」」
クーガの言葉を聞き、全員が返答する。その目に迷いとか、恐れとか、そういったものが感じられない。全ては明日を、みんなと、生きるためだ。
こうして、俺にとっては初めての山賊稼業が始まった。
「・・・・・奇襲が成功したそうだ。いよいよだな・・・」
腕や頭に新品ではない包帯を巻き、いかにも怪我人アピールをしている俺達の所に届いた報告。俺たちが作戦の要だ。失敗は許されない。
「・・・俺さ」
不意に誰かが口を開く。その正体は最初に選ばれた小柄な男だ。頭にバンダナをまいた一般的な賊スタイルの男だ。
「この作戦が成功したr「うるせえ黙れ!それ以上言うな!!」
あ、やばい。遮っちゃった。でも仕方ないでしょ。こいつあからさまに死亡フラグ立てようとしたもん。だから立てる前に止めねば!と俺は考えたわけだ。
「なんだよ新入り!俺の話聞けよな!」
「お前どうせあれだろ?重要なこと言おうとしたんだろ?言わせねーよバカが」
「ああん!!?テメェ喧嘩売ってんのか?}
「いいか!俺がいた世界には死亡フラグというのがあってだな、お前が今話そうとしたのh「来たぞ!目標だ!」
ああ、これが遮られる気持ちか。なんか悲しい気持ちだな。次からは口を塞ごう。
「新入り!へますんじゃねーぞ!」
「はいはい。もちろんそのつもりだって」
足音。それもかなり多い。金属が当たる音が徐々に近づいてくる。やばい、緊張してきた。
そして、奴等の視界に、俺たちが入った。
「いたぞ!!山賊共だ!!」
「殺せ!全員殺せえええええ!!!」
鎧を着た護衛や、身軽な格好をした護衛が俺達を親の仇のように怒濤の勢いで迫ってくる。
「お前ら行くぞ!」
「「「おお!!」」」
こうして、俺たち誘い込み班の、五分の短い戦いが始まった。