1ー2 選択肢
ドクン、ドクンと心臓が大きく、かつはやく動いているのが分かる。そう、俺は今危機的状況なのである。
目の前にいるのは二人の男。しかも武器を持っているのだ。いきなりそんな奴等に遭遇したら誰だってビビるだろう?
ここで自分はビビらないと思っている奴等に聞きたいことがある。
自分の見ず知らずの場所で、物騒な物もった奴が目の前に来たらどうする?それも美少女ではなく男だ。
それも明らかに何人も殺ってきた感じのオーラを出しているんだ。そのへんのDQNよりか怖いと俺は思うぞ。
ああ・・・喉が異常に渇く。唾を飲み込もうとすると何かが上がってきそうになるこの感覚。
そうだ。これは緊張だ。手足の感覚がいつもより重く、遅い。冷や汗の出る感覚が気持ちを悪くする。
初めてのバスケの試合の時もこうだった。コーチの自分の名前を呼ぶ声。それと同時に来る何かが俺を苦しめ始めるのだ。
だがこの感覚は次第に無くなり、中学最後の試合ではこんな感覚は消え去っていた。これが試合馴れという奴なのかもしれない。
「ほう・・・こいつが勇者もどきって奴なのか?おいケント!さっさと才能<スキル>を使いやがれ!」
「へ、へい!すいやせんクーガさん」
クーガ。そう呼ばれる大男はどうやらそのケントという男より上の立場のようらしい。
バンダナにヨレヨレの服。少し薄汚い格好だが、それが彼らのオーラを引き出しているのだろうか。
「じゃあいきやっせ。鑑定<サーチ>!」
ケントがそう言う。いや、そう唱えると言うべきなのだろうか。ケントの両目に緑の光が宿ったように光る。
と言っても雷とかみたいにピカッていう感じではなくこう、ポッてかんじで。蝋燭に火がついたあの感じに似ていると思う。
「おお!!クーガさん!こいつ才能<スキル>持ってやっせ!それも強化<ブースト>系統だ!」
「何!!?そいつはずいぶん良い奴じゃねーか・・・」
クーガはニヤリと笑うとその腰に下げている剣を抜き、俺の方に近づいてくる。ああ、やばい。いかにもピンチだな。
俺の体はまだ動かない。いや違う。これは動けないんだ。
恐怖という鎖。それが俺の足を、腕を、胴体を縛り付けているのかもしれない。
やばい、手汗が尋常じゃない。無論背中の汗もやばい。アニメとかで汗が流れるシーンがあるが、あれは本当に起こるものだと思う。
クーガの持つ剣。刀身の幅が広く、湾曲した片刃のものだ。おそらく山賊刀とか、そういう名前のものだろうな。それが俺の首に当てられる。
(ああ、剣が肌に触れるとこんな感触なのか。)
「おい勇者もどき。名前は?」
「・・・・・陸。狭間陸だ」
なんでこいつは名前を聞くのか分からない。でも首を飛ばされなくてよかった。そこだけは安心というか、つかの間の休息というか。
「・・・めんどくせー名前だな。勇者もどき。テメーは今日からリークだ。そっちの方が覚えやすい」
・・・は?なんでこんなおっさんに名前を改名されにゃいかんのだ?こいつ頭おかしいのか?
「おいちょっと待ってくr・・・「口出しすんじゃねぇ!!」
クーガの持つ剣が微かに揺れる。それは警告だ。次に口出しをしたら首が吹っ飛ぶのだろう。正直俺はまだ死にたくないのでもう口出しはしないが・・・。
「いいかリーク!テエーには選択肢が三つある!良く聞いとけ!!」
クーガと目が合う。これが人殺しの目。一切の迷いがない、人を殺すのに躊躇しない目だ。ああ、どうか良い選択肢がありますように・・・。
「まず一つ!俺等から逃げようとして首をぶった斬られる!」
うわ、まじかよこのおっさん。もしかしてこのままDEAD END直行なんじゃねーか俺?嫌だな。まだ彼女できてないし、魔法使いになってしまう可能性のある「アレ」だってあんだぞ!
「二つ!奴隷になって強制労働!」
奴隷!?そんなもん廃止になってんだろ!?やっぱここは異世界みたいな所なのか?いやでも、それだったらこいつらがこんな格好してるのも理解できるけどさ・・・。
「そして三つ!・・・俺らの仲間になる事・・・だ」
「・・・・・は?」
思わず声が出てしまった。何?仲間?なんだこいつら寂しがり屋なのか?確かに二人旅は寂しいとは思うがさすがに俺を誘うのっておかしくね?
「無論それ以外は無しだ!死ぬか、奴隷か、仲間か。これ以外にテメーの道は無いんだよ!!」
「ちょ、ちょっと待ってくだせぇクーガさん!こいつ確かにスキル持ってますけど、大丈夫なんですかい!?」
「うるせぇ!!テメーだってスキルの貴重さがどんなもんか知ってるだろうが!このバカが!!」
クーガとケントが何か言い合っているが、正直分からない事だらけだ。
こいつらの言うスキルだとか、貴重だとか、勇者もどきとか、謎のワードが多いんだ。困っちゃいますよ。
だが・・・ここで冷静に考えてみよう。
俺は武器なし。鎧なし。彼女なしの丸腰。情報もない。こいつらから逃げても生きていく自信がない。そう、ここは多分日本でもないだろうし、仮にどっかの田舎でも奴隷とかいうおぞましいワードは出てこないだろう。
異世界転生。もしくは召喚とでも言うべきか。こいつらが勇者なんたらとか言ってる事を考えると、多分そのジャンルだろう。
それに俺は死にたくない。奴隷にもなりたくない。ここで俺が選ぶ選択肢など、一つしかないんだ。
「・・・分かった。俺はあんた等の仲間になるよ。ただ、条件がある」
「ああ!!?条件だぁ!?」
俺を引き込むのがこいつらの目的なら、俺はそれに従おう。それしかまともに生きていけないし・・・仕方がない。
だが俺には今非常に必要なものがあるだろう?
「俺に・・・あんたらが持ってる情報を教えてくれ」
リーク。旧名、狭間陸。17歳。男。
本日を持って、こいつらの仲間になりました。
ここで皆様にお知らせでございます。
今回出てきた才能<スキル>の読み方についてです。簡単に説明するなら、読み方は「スキル」です。
なんと言いますか、漢字で書いたら才能。みたいな感じです。ほんと厨二設定ですいません・・・
なので鑑定<サーチ>は普通にサーチだけでよんでください。かんていサーチなんて読まないでくださいね。
文章がまだまだなので、今後向上させていきたいです。