迷子
「場所が分らないんですか?」
話し掛けられて 私は内心ホッとした
良かった これで部屋まで行けそうだわ
「町に来るのが初めてで 道が分らなくて」
そう言いながら顔を上げ 私は驚いたのだった
そこには 私の着替えをガン見していた あの
青年が居たからだった
「あぁ!あなたは着替え覗いてた人!」
するとハッとした顔をして 後ずさり
「そ そんなつもりは・・・すいません!」
そう言って 逃げ出そうとする 青年の腕を
私は両手でガシッと掴んだ
「ひぃっ すいません すいません」
「覗いたのは もういいわ 許してあげる」
「え? 本当に⁇」
「その代わり!」
「は はい!」
「この場所を教えなさい!」
私は住所の書いた紙を 青年に突き出した
青年はその紙をジッと見て 答えた
「分った じゃあ早速行こうか!」
「この場所分るの?」
「うん 大丈夫!任せて!」
良かった これで何とか辿り着けそうだわ
私はホッと胸を 撫で下ろした
青年の後を歩いていると
「この町に来るのは 初めてだよね?」
「え ええ そうだけど」「でもそれは私が
迷ってたから そう思ったんだよね?」
私が問うと 頭を掻きながら
「まあ それもあるんだけど・・・」
「え?何? 他に何かあるの?」
すると こちらを振り向いて 言った
「俺の顔を見ても 驚かなかったからだよ」
「え?」この時は何を言ってるか さっぱり
分らなかった
青年は 私の不思議そうな顔を見て クスッと
笑うと 前を向き指をさして
「ほら あそこに見える建物だよ」
それは小綺麗な煉瓦造りの建物だった
「まぁ 素敵な建物〜」
その建物に近付いた時 さっきまで 笑ってた
青年の顔が 急に険しくなり
「君は何処から 何の用事で町に来たの?」
そう冷たい視線と口調で 言い放ったのです
青年の急変した様子に 私は驚いた
「私は南の方から ここには旅行に どうして
急にそんな事を?」
「あ ゴメンよ 変な事聞いて ここを借りてる
殆どが 嫌な貴族連中だったから・・・」
「貴方は貴族の人達が嫌いなの?」
すると顔色を変えて 私を見ながら
「まさか・・・君は貴族なのか?」
私は その言葉に思わず吹き出し 大笑いして
「そんな訳ないじゃない 第一私が貴族に
見えるとでも言うの?」
私はお腹を抱えながら そう言った
すると青年はマジマジと私を見ながら
「いや 全然見えない」
「それはそれで 何かムカつくわ」
「え?何か言った?」
「いや 何も 送ってくれて有難うね」
「こっちこそ あれはわざとじゃないから」
「ああ もういいわよ じゃあね」
そして青年と別れて 部屋に入ったのでした