お別れ
そうね 一体誰なのかしらね?
(実権を握るのが目的なら 側近じゃない?)
側近か・・・やっぱりそうよね
(城に入るなら猫の方がいいんじゃない?)
そうね 私は鳥から猫に変幻して 城の中へと
入ったのでした
城の中は思ったより人が多かったので
人目につかない様 隅を歩いてると
開いてる扉から 話し声が聞こえてきた
「何だと! それは本当か⁈ 」
「はい 確かに そう聞きました」
その扉から そっと部屋の中を覗き込むと
以前城に潜り込んだ時 大臣と呼ばれていた
男性が 誰かと話をしていた
その誰かを見るのは初めての筈なのに
何故かどこかで見た様な そんな感じがした
二人の会話が気になった私は コッソリと
中に入り部屋の隅に行くと 物陰に身を潜めた
「本当に死んだのか?」
「はい 王子と瓜二つの青年が亡くなったと
診療所の者も町の者も そう言ってました」
「そうか・・・」
「それでどうしましょうか?」
「何がだ?」
「魔女達への報酬です」
「ああ 用意してたの物を 頼む」
「はい 」
男が部屋を出て行くと 大臣は鍵を締めて
ソファーに座り 小さくため息を吐いた
一人になったのを確認した私は 人間に戻り
「貴方だったのね」
そう言って大臣の前に 姿を現した
「だ 誰だ! 何時の間に!」
一瞬驚いた大臣だったが 私の格好を見ると
ああ そうか そう言った顔をしながら
「君が 依頼を受けた魔女なんだね」
そう 呟いた
「そうよ 私は貴方を許せない 許さない!」
すると 大臣が驚いた顔をして
「私を許さない?何故だね?」
「貴方があんな依頼さえしなければ 王子が
命を落とすような事は 無かったからよ!」
「命を落としたとは おかしな言い方を
するんだな 君が王子を殺したんだろう?」
「違う 私はやってない 王子は自分で薬を
飲んで 命を絶ったのよ」
「自分で薬を飲んで 死んだ? そ それは 一体
どういう事だね?」
慌てて言った大臣の姿を見て この人は悪い人
ぢゃないのかも? 何故か そんな気がした
そして王子が薬を飲んだ経緯を話すと
大臣は大きく息を吐き
「そうか 王子は君が好きだったんだな」
私には聞こえない位の声で 呟いた
「え? 何て言ったんですか?」
「いや 何でもない 君にも王子にも気の毒な
事を してしまった」
「貴方 まさかそれで許されるなんて
思ってないでしょうね?」
私はキッと大臣を睨んで言った
すると大臣は私を見ながら 軽く微笑むと
「そうだね 覚悟は出来ているよ」
何故だろう 大臣が悪い人に見えないのは
王子暗殺を依頼した様に思えないのは・・・
私には分らなくなっていた
どうすれば いいのか
その時 精霊が私に話しかけてきた
(何か 事情があるのかも しれないわね)
私もその通りだろう そう思ったけど
もうそんな事どうでも良かった
精霊さんは死なないでしょ?
(え?そりゃあ 命が無いからね)
良かった それを聞いて安心したわ
(貴女 何をする気なの?)
折角来てくれたのに お別れです
(ちょっと 待ちなさい!)
私が ここに来たのは 仇討ちの為!
そう心で呟くと 杖を掲げて 私は唱えた
「業火の炎よ 私をも包む炎で 全てを
焼き尽くせ!!」
その私の言葉を聞き大臣は ゆっくりと
目を閉じたのでした・・・




