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退院

その青年の両肩に 手を置き医者が口を開いた


「涙は辛い時や悲しい時にだけじゃないんだ


嬉しい時にだって 出るんだよ」


そう 言ったのでした







すると青年は不思議そうな顔をしながら


「嬉しい時にですか?」


「ああ 嬉しい時にも 出るんだよ」


そんな二人の会話を聞いている内に


いつの間にか 私は眠りに就いていた






そして再び目を覚まして 顔を横に向けた時


ベッドにうつ伏せ状態であの青年が


眠っていたのに 私は驚いた


その時看護婦が入って来て 青年を見ながら


「殆ど眠りもせずに ずっと貴女の傍に


居たのよ」「心配だったんでしょうね」


そう言って青年に そっと毛布を掛けた








その光景を青年の寝顔を 見ながら


私は 王子の暗殺の為に この町に来た


それが私の使命・・・分っている・・・


そんな事を考えながら 寝顔を眺めてると






突然青年が 目を覚まし 慌てて上半身を


ベッドから 起こしながら


「す すいません いつの間にか寝てました」


「それより貴方 ちょっと 出て行ってくれる


かしら」


看護婦がそう言うと青年は目を擦りながら


「ど どうしてですか⁈ 居たらダメですか?」


「別にいいけど じゃあ体を拭くのを


手伝ってもらおうかしら? 」






すると青年はガタンと派手な音を立てて


椅子から立ち上がり 真っ赤な顔をしながら


病室から 飛び出して行った


その青年の姿に 看護婦と目を合わせて


私達は クスリと笑った






そして看護婦が 私の体を拭きながら


「彼氏いい子じゃない 大事にしなさいよ」


「いえ そんなんじゃ・・・」


「あら そうなの?」


「はい・・・」


それから会話は途切れて 無言のまま


体を拭き終えて 私は着替えを済ませた






「わざわざ有難うございました」


「これも仕事よ 彼にもお礼言ったの?」


「いや だから彼じゃ・・・」


すると看護婦は肩を竦めて


「失って気付いても 遅いのよ」


寂しそうな瞳で そう言い残し 病室から


出て行くと入れ替わりに 青年が入って来た






「少しは 良くなった?」


「有難う」「それと 貴方に色々迷惑を


掛けてしまったみたいで ゴメンナサイ」


ベッドに座ったまま 一礼すると


両手を横に何度も振りながら


「迷惑じゃないから 大丈夫だよ」


微笑みながら 言った青年を見て 胸が痛んだ






私が俯いて黙ってると 再び青年が口を開いた


「良くなったみたいだし 今日は帰るよ」


「ほ 本当に有難ぅ」


すると青年は ニカっと笑い 手を振りながら


病室から 出て行った







それから半月が過ぎ 私は無事 退院が決まり


荷物を纏めると 先生達にお礼を済ませて


診療所の廊下を キョロキョロしながら


歩いてると 体を拭いてくれた看護婦に


バッタリ出会った


私が軽く会釈をして お礼を言うと






「この前の彼は 来てないの?」


「来てないですよ」


「あら 寂しいわね」


「べ 別に そ そんな事ないですよ!」


「意地を張るところを間違えないようにね」


「そ そんなんじゃないですから〜!」


「はい はい じゃあお大事に〜」


看護婦は 高らかに手を上げて去って行った






来るわけないじゃ無い 私が今日退院


するのだって 知らないんだから


いや別に来て欲しいなんて 思ってないし!


そうよ だって私は・・・


そして診療所から 出ようとした時だった






入り口の門にもたれ掛かっている 青年の姿が


私の目に映った 青年はこちらに気付くと


嬉しそうに手を振り始めた


私は驚き その場に佇んだのでした






























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