指令
私達 魔女の一族が住むこの村には昔から
色んな指令が下されていた
例えそれがどんな指令でも 従うしかなかった
その訳は 殆どが王国からの御達しでその指令
を熟す事により私達魔女は生き永らえる事が
出来ているからである・・・
そして17歳を迎えた私に初めての指令が
村長から下された
それはこの国の王子暗殺だった
それを聞いた私は 呆然とした・・・
そんな私にお構い無く 村長はとても冷酷に
そして眈々と話を進めた
内容は 王子が戴冠式を迎える日迄に自然死と
見せかけて 王子を暗殺する事だった
村長は話を終えると 深く息を吐き私に言った
「初めての指令で 荷が重いのなら 手練れの
姐さんに頼むが どうするね?」
私は 俯いて 暫くの間 考えた
「分ってるとは思うけど 決して 失敗だけは
許されないよ」
私はゴクリと息を飲み 答えた
「やります」私は一言そう言って村長を見た
「そうかいよく言ったね 今日はもう遅いから
ゆっくり休んで 明日行けばいい」
村長は寂しそうな笑みを 浮かべながら
私の頭を撫でた
「はい 分りました」
立ち上がり 村長の部屋から出ようとすると
「恨むならば このオババを恨むといい」
その言葉に私は驚いた 村長が そんな事を
言うなんて 思いもしなかったからだ
村長の 何時もの口癖は
所詮 宿命からは逃れる事など出来んのじゃ
恨むならこの村に生まれた事を恨むんじゃ
そう何時も言っていたからだ
「私はこの村に生まれた ただそれだけです」
すると村長は俯いたまま
「魔女の村なぞに生まれなければ お前も女と
してもっと幸せになれただろうに・・・」
「これが私の 運命なんですよ」
そう言い残し 溢れそうになる涙を堪えながら
私は 村長の部屋を出たのでした
自分の部屋で横になって 考えた
村長はきっと魔女の血をひいて生まれた自分
を 誰よりも恨んでいるんじゃないだろうか?
そして その宿命を私達に背負わせる事になる
自分を きっと許せないのだろう
今迄こんな事考えもしなかったが さっきの
村長の言葉が そう思わせたのでした
そして私は 明日に備えて眠りに就いたのです
翌朝 私は支度を整えて 村長に顔を出した
「いいか 無理だと思ったなら 直ぐに知らせ
をよこすんじゃぞ」
「はい 分りました」「でも・・・」
「余計な心配はせんでええ その時は誰もお前
を責めたりはせんよ」
「は はい」その優しい言葉に涙が溢れ出した
「何じゃ何じゃ これからだと言うのに
泣いて どうするんじゃ 全く」
そう言ってそっと 私の頬に添えた村長の手を
握りしめると 涙がボロボロ零れ落ちた
私が 泣き止む迄村長は 何も言わず ただ傍に
居てくれた
そして暫くして 気を取り戻した私は 村長と
村人に別れを告げると 村を後にしたのでした