第5話.進展
先生と話すのが楽しくて、私はほとんど学校を欠席しなくなった。
次第に欲が出てきた。自分だけが特別になりたいと思うようになったのだ。
メアドを知りたい。先生とメールがしたい。
だけど前任校での話を聞いて、携帯教えてと気軽に言えるわけがない...。
登
「いいこと思いついた!」
名案が浮かんだ。
英語の試験の点がよかったら、ご褒美にメアド教えてもらう約束をしよう!
思いたったら吉日、私はすぐに先生のもとに向かった。
先生は承諾してくれた。
先生の思う合格点を採ったら携帯番号とメールアドレスを教えてもらえることになった。
私はめちゃめちゃ勉強した。英語ばっかり集中的に。
試験が始まった。
登
「…………。」
難しい!応用問題が難しすぎる!
教科書からの問題は、勉強の甲斐あってなんなくこなせたが、教科書外からの応用問題がめちゃめちゃ難しかったのだ。
90点台を目指していた私は、焦った。
応用問題だけで20点位ある。なんとか頭をフル回転して、試験用紙の空欄をうめた。
一つだけどうしても思い浮かばなかった欄があったので、人がイ〜ってしてる絵を描いてやった。
そんな感じで試験も終わり、私は次の日授業が終わると、一目散に職員室へと向かった。
登
「先生、採点もう終わってる?」
私は聞いた。
永坂
「終わってるよ。」
そう言うと先生は、引き出しから試験用紙を取り出した。
私の試験用紙を探し、
永坂
「はいっ。」
緊張の一瞬だ……。
"86点"
私がイ〜って描いた絵には、赤ペンで
"(笑)"
と書かれてあった。
微妙だ。実に微妙な点だ。
私は勇気を出して、先生にこう聞いた。
登
「これ…、合格点?」
すると先生は軽くからかった感じで、
永坂
「さぁ、どうやろ?」
と言った。
登『なに〜!どっちやねん!このリアクションはダメと考えるべきなんかぁ!!!!』
心の中で叫んだ。
登
「それは…ダメってこと?」
登、よく頑張って聞いた!
永坂
「う〜ん…どうやろなぁ(含笑)」
せっかく頑張って聞いたのに、またはぐらかされたぁ!!
そんなやりとりをしばらくした後、諦め半分でいつものように色々な話をした。
パンの歌の話とか(なんやそれι)。
ふと時計を見たら、7時になっていた。
7時を過ぎると永坂先生は帰りなさいとうるさい。
なのにこの日は、なんだかいつもより優しい。
永坂
「もう7時かぁ…。」
先生はおもむろに引き出しを開け、メモ帳を取り出した。
登
「あっ、それ前くれたピングーのメモ帳やん。」
私はいすに座り、くるくる回りながら言った。
そのメモ帳は、以前英語のことで友人と質問して聞いたことを、後になって訂正したことを書いて私達にくれたものだった。
永坂
「最後の1枚やぁ。」
ビリっ。
先生がメモ帳を破る音が聞こえた。
永坂
「はいっ。」
先生はその最後の1枚のメモ用紙を、私に手渡した。
登
「くれるん?やったぁ!!」
まだいすでくるくる回っていた私は、ただメモ用紙をもらえたと思って、くるくる回りながら喜んだ。
登
「ん!?……」
私は異変に気付いた。