第4話.告白
それからすぐ、私は先生に告白をすることにした。
あれは5月だったろうか?
永坂先生への気持ちを確信した私は、少しでも先生に特別に見てほしくて、自分の気持ちを伝えることにした。
もちろんいい答えなど期待していない。
先生にとって私は一生徒でしかないのは分かりきっている。
しかし、告白すれば少しは特別視してもらえるかもしれない。これは告白するしかないだろう。
だが、いざ告白となるとなかなか勇気が出ないもの。
少し部活が早く終わった私は、友人の優子に相談することにした。
以前から先生への想いは優子に伝えていたが、告白すべきかどうか第三者の意見を聞こうと思ったのだ。
帰り道の公園で、私達は話をした。
優子
「もう登の中で気持ちは固まってるんやろ?」
登
「うん。」
優子
「じゃあ言うしかないよ!!」
登
「…今から、言いに行こうかな?」
優子
「それやったら行こう!」
色々話して私達は学校に戻ることにした。
職員室前で、私はなかなか前に踏み出せずにいた。ドアが開けられない…。
そんな私を見て、優子が私の背中を押す一言を言った。
優子
「今ここを開けないとなんにも始まらへんで!!ここから始めないと!!」
私は思い切ってドアを開けた。
先生は自分の席に座っている。
登
「先生、ちょっと来て!」
永坂
「ん?何?」
登
「いいから来て来て!」
周りの先生が不思議そうな目で見る中、私と先生は職員室を出た。
先生はずっと、何?何?と言っている。
誰にも見られないように、私は二階の廊下に先生を連れて行った。
6時頃だったろうか、辺りは薄暗くなっていた。
永坂
「何?どうしたん?」
登
「ん...、あんな...、えっと...。」
なかなかうまく言葉が出ない。
私がもたもたしていると、教室に電気がついていることに気付いた。誰かいる。
これはまずいと、急いで近くの教室に入った。
薄暗い教室に、先生と私二人。静かな空気が流れる。勇気を出して、私は口を開いた。
登
「急にごめんな。...あのな...、ん...。先生のことが、...好き...です。」
やっと言えた。心臓は今にも爆発しそうだ。先生はキョトンとしている。
登
「びっくりした?」
永坂
「うん...。」
登
「気付かんかった?」
永坂
「うん。全然分からんかった。なんか見せたいものでもあるんかなぁと思ったわぁ。」
登
「えー!絶対気付かれてると思ってた。だって、毎日先生んとこ行ってたやん。」
永坂
「でも分からんかったわぁ。」
そして先生は、私の告白に対しての返事をしてくれた。
永坂
「ん...、僕と君は教師と生徒やんか?だから、そういう風には思われへんわ。」
この返事は予想していた。なんせ私は、一度中学の先生に告白している。
登
「そう言うと思った。」
永坂
「それに多分、それは一時的な感情やで。まわりにいっぱいおるやん。僕オッサンやで。」
登
「それも言うと思ってた。」
先生は笑った。
永坂
「なんか、見透かされてるなぁ(笑)」
登
「うん。お見通しやで!」
ふられているのに、なんだか幸せな時間だった。
登
「彼女は...おるの?」
永坂
「彼女はおらんけど、仲のいい人はおるよ。実習で一緒やった人。」
多分、先生はその人のことが好きなんやろうなぁ、と感じた。少しショックだった。
それから先生は、自分の恋の話をしてくれた。
大学の時の淡い恋の話。
一回生の時、四回生の人と付き合ってた話。
1時間以上話していただろうか。辺りはすっかり暗くなっていた。
永坂
「前の学校におった同い年の先生がな、生徒と付き合ってたんよ。なんかな、教師と生徒って対等な立場じゃないやろ?
教師は自分のいい部分しか見せへん。
職権乱用な感じがして、その時僕は絶対生徒とは付き合わへんって決めてん。」
登
「そっか...。元生徒も?」
永坂
「うん。元生徒も。」
登
「絶対ない?」
永坂
「絶対とは言いきられへんけど。」
登
「じゃあ、頑張る!私はなかなか諦めへんで☆」
我ながらなんとプラス思考な発言ι
先生は笑っていた。"ガラッ"
ドアが開いた。そこには教頭先生が立っている。
登『え〜っ!!』
私は心の中で叫んだ。
電気もついていない真っ暗な教室。教師と生徒二人きり。
なんともあやしいシチュエーション。
まずったと思った。
永坂
「ちょっと話があったんで。もう帰ります。」
先生がなんとかごまかしてくれた。
永坂
「遅くまでごめんな。気ぃ付けて帰りや。」
私が呼び出したのに、先生が謝ってくれた。
本当に優しい。
玄関まで送ってもらって先生と別れた。