第3話.最初の失敗、そして接近
先生は話の途中、
永坂
「まっ、数学してる子もおるけどなっ」
と言った。間違いなく私のことだ。先生と目が合う。
心の中で、
登『違うよ、違うよ!ちゃんと聞いてるよ!ただ、照れてるだけだよ!』
と叫んでいた。
最初の授業は、失敗に終わったようだ…。
授業後、私は先生のことを好きになり始めている自分に気づいた。
心臓は、まだドキドキしている。
頭の中で否定しても、心は正直だ。本当の気持ちは隠せない。
それから私は、どんどん先生に惹かれていった。
先生と仲良くなる為にはどうすればいいか考えた。
授業回数は他のクラスより少ない。授業以外で、先生に接近するしかないと私は思った。
この考えは、正しかったのだろうか?
今思うと、正しかったと言える自信があまりない。
そう、私は、先生に近づきすぎてしまったのだ…。
後日、先生に自分の存在をしっかりと覚えてもらう為に、私は放課後職員室に行った。
英検のことを質問するという口実を作り、友達と先生の机に向かう。
まずは自己紹介。緊張して、やたらとテンションが高くなる…。
何度も名前を連呼して、早く覚えてもらおうとした。
かなりあやしい言動だった。
それから、休み時間や放課後を利用して、ことあるごとに永坂先生のところに行くようになった。
最初は緊張してうまく話せなかったけど、話していくうちに共通点が多いことを知り、すぐに仲良くなった。
いろんな話をした。先生は、前任校での話もしてくれた。
前にも書いた、門で先生を囲んだ悪達の中の一人が先生を気に入ったらしく、先生の携帯によくメールや電話をくれたのだという話もした。
彼の家は色々な事情を抱えた家で、それもあってか、彼は先生に依存していった。
このままではいけないと思った先生は、もう電話もメールもしてはいけないと言った。
裏切られたと感じた彼は、先生にイタ電をかけるようになった。
そんなことがあったので、先生は生徒には携帯を教えないと決めているのだ。
こんな話もしてくれた。
ある日の授業中、とある男子生徒が携帯で電話をしてうるさかったので、先生は優しく、
永坂
「それなおそうか?」
と言った。すると彼は立ち上がり、先生を殴ろうとした。ぎりのところで寸止めし、
生徒
「こいつびびっとんでぇ!」
と言った。それから先生は、精神的にかなり追い詰められ、買い物依存症や過呼吸になったのだそうだ。今は治ったらしいが。
もっと先生を知りたくなった。