第9話.レンタルとプレゼント
ある日私は、先生のファンの子が先生にCDを貸しているのを目撃した。
これは私もうかうかしてはいられないと、当時気に入っていたAJICOのアルバムを先生に貸してあげた。
先生はあんまり興味なさそうだったけど…(^_^;)
こんなこともあった。
ゴールデンウィークに入る前、私は先生に本を貸した。三代目魚武の本だ。
あまり本を読まない私も、一気に読んでしまうほど面白い本だったので、是非先生にも読んでほしいと思ったのだ。
同じ本を読むことで、先生との距離を縮めたかったのかもしれない。
先生は、
「面白そう。」
と言ってうれしそうに本を受け取ってくれた。
先生は私の友人が所属するバドミントン部の顧問をしていた。顧問と言っても名前だけだが。
友人には先生に本を貸したことを話していた。
ゴールデンウィーク中に試合があったようで、試合会場で先生が終始その本を持ち歩き読んでいたことを、友人が教えてくれた。
私はとても嬉しかった。
先生は、ちゃんと読んでくれてたんだ。
ゴールデンウィークも終わり、早速先生の授業があった。
授業終了後、先生に本のことを聞いてみた。
登
「先生、魚武読んだ?」
永坂
「あぁ〜、読んだよ。面白かったわ!
ちょっと待って。本持ってくるわ。」
そう言うと、先生は職員室までわざわざ本を取りに行ってくれた。
永坂
「はい。長い間ありがとうな。」
そう言われて嬉しかった反面、先生との繋がりが一つなくなった気がして、少し寂しかった。
その日の放課後、珍しく先生から職員室においでとのお誘いがあった。
ウキウキ気分で先生のもとへ行くと、先生はゴールデンウィーク中の話をし始めた。
先生には姉と弟がいるのだが、親戚の法事があり、その合間に姉弟で海を散歩したらしい。
「姉弟仲いいんやね!」
私がそう言うと、先生は少し照れながら、
「はい。おみやげ。」
と、きれいな貝殻を私の手に置いた。
「えー!!!!」
私は目をまん丸にして驚いた。
「その時に見つけたから。」
先生が、また照れながら言った。
「これ、私の為に拾ってくれたん?」
調子に乗って、こんな質問をしてみた。
すると、先生は、
「まぁね。たいしたもんじゃないけど。綺麗やったから。」
と言った。
登
「うれしいよ!買った物とかよりもうれしい!ずっと大事にするね!」
永坂
「大袈裟な(笑)」
登
「ちっとも大袈裟じゃないよ。だって、先生にもらった初めての物やもん!大事にする!」
そう熱く語る私を、先生はうれしそうに笑いながら見ていた。
そんな小さな幸せが色々あった前期(私の高校は2期生)の半分はあっという間に過ぎて、早くも夏休みに突入した。
普通ならうれしいはずの夏休みだが、受験勉強プラス先生に会えないというのもあり、憂鬱な夏休み……のはずだった。