始
むかしむかし。ある所に、一人の王が支配する平和な国がありました。
城下町は特ににぎやかで、笑顔の溢れる素敵な街でした。
ところが、そんな穏やかな日々も長くは続きませんでした。
ある時、力を付けた農村が王様に戦争を仕掛けました。
その村は特にとりたてて貧しかった訳でも、差別を受けていた訳でもありません。
ただ、“王様になりたい”という野心を持った若者がたった一人いただけ――
それから、世は騒乱の時代になりました。
たくさんの血が溢れ、たくさんの涙が流れ、たくさんの心が、死にました。
どうしてでしょう?
武器の性能が良くなったから?
確かに、その十数年ではるかに武器は強力に、強大になりました。
でも、鍬や鎌しかなかった時代でも、たくさんの人が命を落としました。
では、魔法がもたらされたからでしょうか?
いえいえ。魔法はむしろ、人々を守る為に、神からもたらされたとされています。
実際、ここ数年の戦死者数は2桁いるかいないかぐらいまで減りました。
では、どうしてでしょう?
それは――
その文章はそこで途切れていた。血に塗れたノートに書かれた、小説のような文章。
多分、その隣でペンを握りながら倒れていた男のものだろう。
あれ以来。
僕はたまに考える。
あの続きは、何だったんだろう、と。
これは人々がまだ神の存在を信じ、共に歩んでいた時代の話。
新連載スタートです。
どうぞ、皆様最後まで宜しくお願いいたします。