第1話:雨の邂逅(かいこう)
現代社会において、エネルギーとは数式で証明されるべきものだった。
力学、電磁気学、波動。教科書に整然と並ぶそれらは、世界の理を完璧に説明し、人類に支配の鍵を与えているはずだった。
二〇XX年。人類が『魔力』という名の異端を発見し、世界が熱狂に包まれるまでは。
「はぁ……。今日も模試の結果、散々だったな……」
一ノ瀬蓮は、激しくなる雨の中、塾の帰り道を急いでいた。
ビニール傘を叩く雨音だけが、耳元でやけに大きく響く。
どこにでもいる、少し内気な高校生。それが一ノ瀬蓮という少年だ。
近所の公園を通りかかったとき、彼は足を止めた。
街灯の淡い光に照らされて、一人の少女が立っていた。
透き通るような銀髪。
雨に濡れるのも厭わず、ただ静かに佇むその姿は、この世のものとは思えないほど完成された黄金比を描いている。
異国情緒という言葉では片付けられない、圧倒的な「神秘」がそこにはあった。
「あの……大丈夫ですか? 傘、入りますか?」
内気な蓮にしては珍しく、放っておけない衝動に駆られて声をかけた。
少女がゆっくりと振り向く。その瞳は、吸い込まれそうなほど深い――深淵のような青だった。
『………………そうね』
長い沈黙の後、鈴を転がすような、だが感情の読めない声が雨の公園に響いた。
その時。返事に詰まった蓮の視界が、突如として歪んだ。
公園の遊具が、木々が、アスファルトが。
古い映像が乱れるようにノイズが走り、次の瞬間、世界は一変した。
鼻を突く硫黄の臭い。
空を焦がす赤黒い雲。
そして――。
「……っ!? な、なんだ、あれ……!」
ビルよりも巨大な影が、空を裂いて舞い降りた。
鱗の一枚一枚が鈍く光る、伝説上の怪物――竜。
怪物が大きく口を開き、そこに絶望的な熱量が練り上げられる。
死を覚悟した蓮の前に、銀髪の少女がすっと片手をかざした。
『騒がしいですね。――消えなさい』
少女の指先から放たれたのは、光の奔流。
少女が行使したその力は、現代科学では証明できない圧倒的な「理」。
のちに世界を変えることとなる、本物の「魔法」だった。
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