⑩ 兄妹の連携
ルナは先ほどとは比べ物にならない速さでウィリデに飛びかかった。
ウィリデは間一髪で避ける。
しかし、すでに避けることを見越してアストがウィリデに魔術を準備していた。
無詠唱の魔法?いや、魔術か…アストは魔族か!?
精霊の視えるウィリデはアストが魔術を構築する時に精霊が周囲にいなかったことを見ていた。
今時の子どもには珍しい、純血の魔族と同様に精霊のサポートだけで魔術を発動できるタイプだ。
氷の槍の先端が全てがウィリデに向く。
あまりにも的確な相手を読んだ上での連携。一歩ウィリデが違う行動をしていればルナも巻き添えに合っている。
兄妹だからこそ、こんな半身を危険に晒すことはしないはずだが、この二人は信頼・信用し合っているからこそできている。
「“氷の槍”」
アストが魔術を発動させた。
ウィリデは持っていた木刀で大量の氷の槍を叩き壊していく。しかし、氷系の魔術は何度も見てきたウィリデにとって、アストの魔術を壊すことなど造作もない。むしろ、ウィリデが相手にしていた者の方が強度が高く、槍自体も大きい。
そこで違和感を覚える。
おかしい、なぜ今になって魔術を発動させた。
ルナを庇うだけの防衛ならもう出さなくても良いはずだ。岩の方にルナが向かっている様子もない。
あるとすればこの槍が岩元へ行こうとするのを止めているくらいだ。
今なお構築され続ける魔術に、ウィリデは疑問を持つ。
はじめの会話はブラフ。目的は目眩しか!確実にオレをやりに来てるじゃねぇか。
槍に紛れ、ルナが飛び込んできた。
ウィリデは罠に嵌められたのだと気付かざる得ない。
周囲が槍でできた籠の中。ウィリデは少しづつ岩から離されていたのだ。




