⑰ 魔獣の森でサバイバル-8
ルナ視点に戻ります。
「【止まりなさい】」
一気に目を開ける。
赤い、紅い、真紅の瞳が敵を捉える。
語気の強く、低い声がルナの口から出る。
先ほどの自己紹介の時とは比べものにならないほど、吐き捨てるような命令。
ビッガートスクは動きを止め、吸った魔力を体外に出す。
動物にある野生本能。生存本能が絶え間なく送られる。
逆らうな、機嫌を損なえば、殺される。
このビッガートスクは箱入りだ。生まれた時からこの場所で大切に育てられた。故に、生徒は脅かすだけのおもちゃだと思っていた。
しかし、その潜在意識が一気に変わった。
二度と、手を出さない。
言葉の通じない魔獣でさえ、周囲の魔獣たちも震え上がり、少しでも気を損ねないよう気配を極限まで薄めている。
この森のボス元、野生で学園に引き取られた『マナ・シェイカー』でさえもだ。
元、野生だからこそ、理解しているのだ。
あまり使いたくなかったけど、仕方がないわ。
見ているだけなら、何もしなかったけれど。手を出したのはそっちよ。
完全に魔力は抜けきり、元のサイズに戻ったビッガートスクは食べられる小動物のように逃げ出したい気持ちと逃げ出せば殺されるという矛盾の気持ちでいっぱいだった。
「ふう」
ルナの出した息にに、ビクリとビッガートスクは体を大きく震わせる。
「もう、こんなことをしちゃダメだよ」
「キュッ?」
ビッガートスクの額を少し撫でて、青い瞳に慈愛の色を滲ませた。縛り付けられていた拘束がなくなったように気が軽くなる。
「ルナ!」
遠くからアストの声が聞こえた。
ルナは手を離して、小さく手を振った。
その隙にビッガートスクは森の茂みへと入っていった。
ルナはその途端、糸が切れたようにその場に倒れた。
小話(少し前のアレクたち)
ウィリデ「おお!あれって、ラトだろ」
ラヴィ「ラト?」
ウィリデ「そっ、あのビッガートスクのこと。イタズラ好きなんだよな。よく新入生をビビらせんだよ」
パトリック「それで、死にかけてたら世話ないですよ」
ウィリデ「だが、アイツのイタズラくらいで死ぬようじゃ、この先、生きていくなんてできるわけねぇよ」
パトリック「うっ」
アスト(心)「あそこにいるのルナだろな」




