77話、合流
「おぉぉぉぉいぃぃぃぃ、ネェェェェリィィィィ!」
うーん、反応が無いな……聞こえてないか?
『ねぇ、あれなんかこっちに向かってない?』
「どれさ?」
『あそこ、海側の方。』
フェンリルの言われた方向をじーっと眺めながら、確かに何か羽らしきものがこっちに向かってきているような気がする。
というか黒い羽に黒い服のせいで擬態されてるな……夜目が無かったら分からないぞあれ。
「おーい! ここだネリー! ……大丈夫か!」
「ミツキさん、お待たせいたしましたわ。ええ、なかなかのダメージをもらいましたけど、この程度では死にませんですわ。」
ネリーの服はあちらこちら汚れていて、一番ひどいのがお腹の部分。布地に穴が空いている。
幸い肌は見えているが、致命傷ではなさそうだ。
「それよりも、その氷漬けになってる人は何なんですの? ……あぁ、この方は。」
「知っているのか!」
「えぇ、鹿児島支部のSランク隊員――島津連真ですわね。なかなか強かったイメージでしたが、ずいぶんとボロボロで。」
『へぇ、この世界でのSランクってあんまり強くないんだね。』
「リュカオンにだいぶやられてたけど、何とか生きてるんだ。回復薬とか持ってないか?」
「えぇ、ミツキさんのために持ってきたものがありますわ。」
「よし、それを与えよう。」
「仕方ありませんわね。」
俺は氷漬けにしていた連真を、氷を霧散させて横たわらせる。
ネリーから受け取った回復薬を見て……思わず口を開いた。
「ネリー、これエリクサーじゃねぇ?」
「ええ、五本ほど持ってきましたが、これで三本ほど渡しましたわね。」
「もったいな!! 上回復薬とかないの?」
「わたくし達の回復では、そんなもの何本も飲んだら気持ち悪くなりますわ。それに一本で済ませた方が効率が良いではありませんか。かさばりますし。」
「そうだけど! これ少なくとも家買えるよね。」
「別にお金には困っておりませんですし。」
さすお嬢ですわ。
これ作るの、滅茶苦茶時間かかるし、調合ミリ単位でミスれないし。
おいそれと使えないんだけどなぁ。
まぁ、ネリーが良いと言うなら使うか。
え、ここで気絶してる人間には口移しだって? 嫌だよ、男に口移しなんて。
SID隊員だし、多少乱暴でも大丈夫だろ。
……じゃあネリーにやらせるか?
「ネリー、口移しで飲ませる?」
「え? ミツキさんにですか?」
「何で俺なんだよ。」
「あぁ、そこに転がってる奴にです? 嫌ですわ。わたくしがするのはミツキさんだけですわ。」
……うん。連真の口にそのまま突っ込んだ。
連真が一口飲んだ瞬間、思いっきり吹き出しながら起きた。
「がはっ!! 何だこの味は、不味い!! 鬼不味い! 何しやがる! 殺す気か!!」
そうなんだよね。体力、魔力、怪我から状態異常まで全てを回復する薬が美味しいわけないんだよ。
最初は甘くて美味しいなと思ったら、急に辛くなって、その後さらに苦味が襲ってくる。
とてもじゃないけど、この世の飲み物とは思えない代物だ。
俺も初めて飲んだとき吹き出したなぁ。
「よし、起きたな。連真とか言う奴。」
「がはっ……お、お前は銀狼!? なぜここに。ダンジョンはどうした。」
「終わったよ。リュカオンも含めてな。……てかそんなことより、ネリーに頼みたいことがあったんだ。」
「はい? 何です?」
「お前は秋ヶ原支部の吸血鬼、なんでここに!」
「桜島が噴火しそうなんだよ。俺が噴火をできるだけ凍らせるから、ネリーにその後、凍らせたマグマを消し飛ばせないか?」
「なんだと、それは大変だな!!」
「ええ、よろしいですが、その前に一つお願いが……。」
「オイ! 無視するな!!」
「もしかして、血を吸うとかか!!」
「正解でーす。」
「オイ、オーイ! 無視するなって!!」
「わかった、良いだろう。頼んでばっかりも申し訳ないし。」
俺はネリーに腕を差し出した。
だが彼女は腕を無視して俺の背後に回り込み、脇に手を回してそのまま抱きしめた。
「行きましょう、ミツキさん!!」
「え? 血はちょっと……おい!!」
そのまま空に飛び上がり、俺はネリーに背後から抱き締められながら空を舞った。
背後に懐かしい膨らみを感じながら。
「え? 最後まで無視された!?」
俺は目の前で遠ざかっていく銀狼とネリーを、ただ眺めることしかできなかった。
「いったいどういうことなんだ……。」
体を見渡すと、服はボロボロになっているが、体には一切の傷もなく、折れた骨も痛みも消えていた。
「何を飲まされたんだ、俺は。」
PPPPPP、とインカムから通信が入った。
『おい、無事だったのか!!』
「おお! オババ、何とか生きてるぜ。」
『まったく、こいつは……お前の反応がダンジョンから消えて、ワシの魔力探知にも引っ掛からんから死んだかと思うたが、ダンジョンが無事に消滅したから、やりおったと思ってな。』
「いや、ダンジョンを消滅させたのは俺じゃねぇ、銀狼だ。それにカラミタスの幹部のリュカオンに俺はやられて死にかけてた。」
『なんじゃと!!』
「だが、銀狼の奴に変なもの飲まされて、今は傷一つねぇ状態だから安心してくれ。」
『無事なら良い。それよりも桜島が噴火するぞ連真! これまでの規模では考えられんほど巨大な噴火じゃ!
今そっちにヘリコプターを向かわせておる。
桜島の市民の避難は船を導入して急がせておるが、お前も早く帰ってこい! 人間じゃ自然現象には勝てん!』
「それなんだが、銀狼とネリーが今さっき向かっていったぞ。空を飛んでな。噴火どうにかするとか言っていたぞ。」
『本当に次から次へと問題が増えるのぉ……。
ひとまずヘリコプターで帰ってこい、そこは危険じゃ。いつ噴火してもおかしくないぞ!!』
「わかった。せっかく救ってもらった命だ、大人しく引かせてもらう。」
本当に――何者なんだ、銀狼は。
俺は遠ざかっていく小さな姿を、そっと見つめていた。
感想がありましたらぜひよろしくお願いします。
誤字脱字や設定がおかしいなど些細なことでも書いていただけたら嬉しいです




