74話 ミツキvsリュカオン
試験があり勉強しながら書いてるので更新が遅れています。
申し訳ないです
2章を書き終わったら
更新を何日間か止めますのでご了承ください
拳が交わるたび、世界が震えた。
ミツキの拳がリュカオンの頬をかすめ、氷片が飛ぶ。
反撃の拳が返る。風が爆ぜ、灰が渦を巻く。
どちらも一歩も引かない。
殴る、弾く、踏み込み、跳ぶ。
それはもはや戦いというより“嵐”だった。
『おー、いいじゃんミツキ! やっちゃえ!やっちゃえ!』
「うるせぇ、集中させろ!」
『はいはい♪ あ、惜しい。』
「お前の実況いらねぇ!」
銀狼の拳がうなりを上げる。
氷の文様が腕に広がり、右手に魔力を込める。
拳が地を叩くと、地面の砂浜が瞬時に凍りつき、リュカオンの方に広がった。
リュカオンは咆哮を上げ、足元を蹴る。
黒い衝撃波が地を裂き、氷ごと押し返す。
「氷で止められると思うな、銀狼ッ!」
リュカオンの拳が風を裂き、銀狼の頬をかすめた。
血が飛び、白髪が揺れる。
だが、その刹那――銀狼は笑った。
「遅ぇよ。」
逆袈裟に蹴り上げた足が、リュカオンの顎を捉える。
黒狼の巨体がわずかに浮き上がる。
『にひひっ、いいねぇ! 一発入ったじゃん!』
「まだだ、押し切る!」
銀狼は滑るように踏み込み、両腕を交差。
拳に纏った氷がみるみるうちに鋭い刃のように変化する。
「――《アイスクロウ》ッ!!」
放たれた一撃一撃が、氷の爪となって空を裂いた。
だが、リュカオンもその全てを拳で弾いた。
黒毛の間から走る赤い線――傷はつくが、深くはない。
「はん、獣人が肉体で戦わずに魔法の真似事か?」
「そっちこそ、魔法も使えねぇ脳筋かよ?」
両者の声が重なった瞬間、拳と拳がぶつかり、衝撃波が爆ぜた。
海が割れ、砂が舞い上がる。
二人の姿が見えなくなるほどの衝撃。
フェンリルの声が、頭の奥で響く。
『いけいけ、ミツキ! そこだそこ!』
「だぁ!! うるせぇ、真面目に戦ってんだろうが!」
『えぇ~、私は見てるだけだと退屈なんだもん。てかさ、ミツキ、喧嘩売られたの私なんだから変わってよ。』
「はぁ? こんな早く倒さねぇといけねぇ時に何でだよ!」
『お願い、お願い、お願い~~!! じゃないと、ミツキの体でもっと暴れてやる!!』
「マジでやめろ! いまの時点でもかなり手に余ってんだよ!!」
砂が晴れる。
銀狼とリュカオンが、同時に踏み込む。
黒狼の咆哮が世界を震わせた。
「よそ見してんじゃねぇぞ、銀狼ッ!!」
拳が衝突した瞬間、地面がめり込む。
リュカオンの全身から黒いオーラが噴き上がった。
それは炎でも魔素でもない――“生命そのもの”の暴走だった。
「……ちっ、面倒なモードに入りやがった。」
『あーあ、出ちゃったね。あれ、身体狂化。』
「獣人の強化は人間のそれとは違う。」
『理性と引き換えに獣の力を開放する技。お約束だよね。』
リュカオンの姿が一瞬で膨張した。
筋肉が鳴り、骨が軋む。
黒毛が逆立ち、瞳孔が爛々と輝く。
「お前の拳、ようやく効いた。だが――ここからは俺の番だ。」
踏み込みと同時に、空気が破裂する。
銀狼が反応した時には、もう目の前に拳があった。
ドゴォッ!!
氷の防御が砕け、銀狼の身体が吹き飛ぶ。
地を転がりながら、ミツキが呻いた。
「クソッ……速さが上がってやがる……! こっちも身体強化の魔力量を上げて…。」
『ミツキ、あの状態のままだと正面からはキツいよ。』
「分かってる……だから、こちらも力任せでいくしかない!」
リュカオンが咆哮とともに跳び上がる。
地面が陥没し、空気が震える。
その影が迫る――瞬間、フェンリルの声が低く響いた。
『……にひ♪ ミツキ、変わって。今度は私の番。』
「おい、勝手に――っ!」
身体の奥で何かが這い上がってくる。
徐々に意識が薄くなって視点が変わっていく。
白銀の瞳が紅に染まり、爪が伸びる。
フェンリルの笑い声が、心の奥で響いた。
『やっほー、クソ狼! 昨日は勝ち逃げみてーな事しやがって……今度はボッコボコにしてやるよ♪』
灰の海に、再び衝突音が轟いた。
地が裂ける。
拳と拳がぶつかるたび、空気が鳴いた。
「ぐっ……!」
フェンリルの腹に拳がめり込む。
肺の奥まで衝撃が響き、口から熱い息が漏れる。
だが、笑い声は止まらない。
「にひひっ……やるじゃん、クソ狼のくせに!」
「テメェこそよく吠えるガキだ。――黙らせてやるッ!」
リュカオンが踏み込み、肩でぶつかる。
フェンリルの身体が弾かれ、砂浜を滑りながら背後の岩に叩きつけられる。
鈍い音とともに岩が砕ける。
「がはっ……この野郎!」
フェンリルが反撃。
氷のステップで滑るように距離を詰め、回転蹴りを叩き込む。
――ドガァッ!!
リュカオンの頬が歪み、牙が折れて飛ぶ。
だが、倒れない。
むしろ笑っていた。
「ガハハハッ!! 効くなぁ銀狼ッ!! もっとこいよ!!」
黒い腕が伸びる。
フェンリルの尾を掴んだ。
「ちょっ!? 離せっ!!」
「捕まえたぞォッ!!」
そのまま豪快に振り回し、地面へと叩きつける。
――ドゴォォォン!!
地面が抉れ、砂煙が舞う。
フェンリルの身体が数メートル跳ね上がり、再び地に落ちる。
「ぐっ……はぁ……。やるじゃん……♡」
よろめきながらも立ち上がると、唇から笑みが漏れる。
「けど、尻尾引っ張るのはセクハラだよ?変態」
「ハッ、喋る暇があるならこいよ銀狼!」
リュカオンが飛び込む。
拳が正面から迫る。
フェンリルはその腕を掴み、肩で引き寄せ、逆に足を絡ませ――
「お返しっ!!」
――バキィィッ!!
豪快な投げが決まり、リュカオンの背が地に叩きつけられた。
「おおっとぉ~、痛かった? ねぇ、どんな気持ち?」
「ククク……調子乗ってんじゃねぇぞ、ガキがァッ!!」
リュカオンが起き上がるや否や、爪で地面を引き裂き、岩片を蹴り上げる。
フェンリルがそれを避けた瞬間、背後に黒い影が現れた。
「後ろだッ!!」
「わかってるってぇのッ!!」
フェンリルは腰をひねり、反撃の肘を放つ。
が、リュカオンの膝蹴りが先に腹を貫いた。
「がはっ……ッ!」
そのまま胸倉を掴まれ、頭上へ持ち上げられる。
「銀狼ッ! 今日こそ叩き潰すッ!!」
――ドガァァァァン!!
フェンリルが地面に叩きつけられる。
骨が軋み、地面が波打つ。
けれど――笑っていた。
「んっふふ……まだまだぁ……♡」
リュカオンが顔をしかめる。
「化けモンめ……!」
フェンリルが跳ね起き、尻尾を鞭のようにしならせてリュカオンの頬を打つ。
パシィィン!!と乾いた音が響く。
「おら、目ぇ覚ませバカ犬ッ!」
リュカオンが怒号を上げ、拳を構える。
「ぶっ殺すッ!!」
フェンリルがにひひっと嗤い、同じように拳を構える。
「おっけー♡ じゃ、どっちが上か決めよっか!」
両者の足が地を蹴り、灰が爆ぜた。
拳、爪、蹴り、尾。
獣の四肢すべてが武器と化し、夜の闘争が続く。
フェンリルの回し蹴りが顎を砕き、リュカオンの膝が腹を裂く。
血が舞い、氷が割れ、砂が焦げる。
お互いの肉体が削れ、笑いが混じる。
「ハァッ……ハァッ……やりやがる、この俺様と張り合うとは、カーティスの奴が負けたのも理解できる。」
「ふん……私はまだ本気じゃねぇーし。
さっさと本気でこいよ。」
「ふ、言われなくても来てやるよ。
《獣化》」
リュカオンの姿が真っ黒の大きな狼へと姿を変え遠吠えと共に世界が揺らいだ。
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