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41話、新武器

鋼鉄の扉が横に開くと、ひんやりした空気と機械油の匂いが流れ出た。

壁面には魔術式の回路が蜘蛛の巣のように走り、天井からは無数のアームライト。奥の試射レーンからは、時折「ドン」「ビィィン」と鈍い衝撃音が響いている。


茜、悠真、連城の三人が足を踏み入れると、オーバーオールの肩紐を片側だけ引っかけ、白いTシャツをお腹の位置で結んだ小柄な影が、ころころ車輪付きの足台に乗ってスーッと滑ってきた。


「やぁやぁ、現場組! 待ってたよー!」


幼い顔立ちに三つ編み。だが瞳は研磨した鋼のように冴えている。技術班主任――ミーナ・アイアンベル。

見た目は中学生にしか見えないが、この支部の“頭脳”だ。人間ではなく、ここに流れ着いたドワーフの女性。予算度外視で武器を造り、オリジナル改造をやりすぎて本部から煙たがられ、鷲津に拾われた問題児でもある。


「今回の新しい、特別な三本。時間ないから一気に見せる。まずは……茜の」


ミーナが指を鳴らすと、作業台の長箱が自動で開いた。黒漆塗りの鞘。口金に紅の象嵌。吸い込まれるような艶。


「《紅桜べにざくら》……魔石三基直列。刀身は秘鋼《オリハ鋼》に吸魔層を積層。魔力を通せば自己励起して段階的に跳ね上がる。……本部、“魔石半分寄こせ”って圧かけてきたけど、先に使っちゃった。あとで鷲津に怒られたけど。」


茜は無言で一礼し、両手で鞘を受け取った。手に触れた瞬間、不快な違和感が襲う。


(……これは!?)


ゆっくりと鯉口を切った。

――コォン……と、ガラスを爪で弾いたような冷たい音。現れた刀身は真っ黒。波紋が波打ち、美しくも不気味に輝く。


柄を握り、ほんのわずかに魔力を流し込んだ瞬間――視界が揺らいだ。


刃の赤がきらめき、そこに小さな影が立つ。

――小学生くらいの、自分自身。無垢な顔をした“茜”が、冷たい瞳でこちらを見上げていた。


「お前には無理だよ。守れるわけない。大切な人だって、全部……失うだけ」


胸の奥に突き刺さる言葉。茜は反射的に息を呑み、握る手が震えた。


「……黙れッ!」


叫ぶと同時に刀を振る。幻影の少女は霧のようにかき消えた。だが、耳の奥に笑い声だけが残る。


(――怖いんだろ。弱いから。だから否定するしかないんだよ)


「……っ!」


茜は思わず刀を取り落とした。刃が床に響き、幻も笑いも消え去る。


「隊長!?」「大丈夫ですか!」

悠真と連城が慌てて駆け寄る。


茜は荒い呼吸を整え、かすれた声で答えた。


「……問題ない。ただ……少し、違和感があっただけだ」


隣でミーナが紅桜を拾い上げ、鯉口を切って刃をのぞく。

――だが、何も起こらない。ただ赤黒い刃が光るだけだった。


「……やっぱり。持ち主だけに干渉する。茜以外はただの折れない刀」


茜は小さく頷きながらも、胸の奥のざわめきを振り払えなかった。

(今の私には……扱いきれない。だが、最終手段として……帯刀するしかない)


「次、悠真」


ミーナが別のケースを開く。中には艶消し黒の《P90》。フレームには魔術式の走路が刻まれ、マガジン部は透明な魔力コンデンサに置き換わっている。


「《P90m》――魔道変換式。実弾なし。魔素コンデンサ駆動。フルオート、三点バースト、チャージショット対応。反動制御は逆位相陣」


「マジで……PMかよ……! 本部上層の隊員しか触れないやつだろ」


「チッチッチ。本部のやつと同じじゃない。こっちは改造して色々盛った。装填数も倍、威力も全然こっちが上。でも、少し重い」


悠真の目が輝いた。構えは自然、照準は正確。

「確かに重いが……許可ください」

「許可する」


――チュドッ、チュドッ、チュドッ!


軽い音。しかし三十メートル先の厚鋼に、直径三センチの穴が三つ。金属片が弾け飛び、壁が煙る。


「反動……ほぼゼロ。いや、電動の小刻みな振動だけだ」


「そう。弾は魔力圧縮の弾芯。命中時に展開して内部破砕。“スナイパーライフルをマシンガンで連射してる感じの威力”。でも無制限は無理。冷却忘れるなよ」


「了解!!最高です。」


悠真は口で軽口を叩きながらも、自然にセーフティを戻していた。


「最後、連城」


ミーナが両手で抱えたのは分厚い籠手型機構。前方には杭。基部に三つのインジケータ。


「《パイルバンカー改》。三発装填。魔力と圧縮空気のハイブリッド。ゼロ距離専用。外したら笑われる、でも当てたら惚れられる」


連城は黙って装着した。駆動音が低く唸り、籠手が拳に吸い付くように固定される。

腕を前に突き出した瞬間、全身の筋肉が自然と戦闘態勢に入っていた。


「発射レディ」

「許可」


――ガガッ! ドォンッ!!


杭が標的に叩き込まれる。衝撃で試射レーン全体が震え、床のボルトがきしむ。

厚さ二十センチの複合魔甲板に巨大なクレーターが刻まれ、制震壁がうねるように軋んだ。


悠真が思わず口笛を吹く。

「……これ、もし人間に撃ったらひとたまりもないな。」


ミーナが肩を竦める。

「威力はS級相当。でもゼロ距離限定。当てるには相手の懐に潜る必要ある。……それに反動も大きいから“自分の骨を折らない”のがコツ」


連城は拳をゆっくり引き抜き、残った杭痕を指でなぞる。

「……悪くない。いや、今までで一番“決定打”になる」


目元は相変わらず無表情。だが声には熱が滲んでいた。

「今まで、どれだけ殴っても倒れない奴がいた。……これなら、沈められる」


短い言葉だったが、そこに闘志と執念が確かに宿っていた。



試射が終わると、ミーナは三人を順に指差した。

「茜の《紅桜》は持ち主依存。悠真の《P90m》は冷却必須。フルは緊急のみ。連城の《パイル》は腰から床に力を流せ。骨折るな」


そして小さくため息をつく。

「……本部、魔石の半分“持ってこい”って言った。だから先に使った。鷲津に怒られた。でも現場死なせるよりマシ。壊したらまた作る。だから――生きて帰れ」


冗談めいた口調ではなかった。三人は黙って頷いた。


茜はそっと紅桜の鞘に指を置く。

(今の私には……扱いきれるだろうか。)


胸に沈む決意は重い。だが、それを抱えなければ前には進めない。



久遠「技術主任のミーナが本部に提出する魔石を全部使ったそうです。」


鷲巣「又やらかしたのかミーナは

しょうがないミーナには表ではきつく言っておくが本部には俺が謝りに行ってくる。」


久遠「良いのですか?彼女を本当に叱らなくて。」


鷲巣「あいつは隊員思いなんだ。勝手な改造は使用者に生きて帰ってほしいという手段を増やしているだから、私の頭で済むのであればそれくらいは許そう。」


久遠「ですが今回で支社の備品ほとんど使い尽くしたと言っておりましたが。」


鷲巣「………、頭がいたいなそれは。」




感想がありましたらぜひよろしくお願いします。


誤字脱字や設定がおかしいなど些細なことでも書いていただけたら嬉しいです

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