表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/86

36話 何してんねん

チャイムが鳴り終わると同時に、教室の空気は一気に緩んだ。

 机を片付ける音や「遊び行こー!」なんて声が飛び交い、連休前らしい浮かれたムードが広がっている。


 「よーし、イツキン!」

 悠真が椅子を半回転させて振り向き、にかっと笑った。

 「明日さ、ショッピングセンター行こうぜ! 旅行の買い物!」


 「……旅行?」

 一樹は片眉を上げる。


 「校外学習だよ校外学習。しおりに“必要な持ち物は各自準備”って書いてあったろ? せっかくだからデカいとこ行って、一気に揃えたほうが早いじゃん」


 「……別に近場でよくないか」


 「はぁ? お前のそういうとこつまんねーんだよ。どうせなら映画館もゲーセンもある“セントラルスクエア”に決まってんだろ!」


 一樹が首を傾げる。

 「あそこ……通行止めになってなかったか?」


 「何言ってんのイツキン。一週間前に解除されたじゃん。ニュースとか見てないの?」


 「俺はテレビはあんまり興味ないんだよな。アニメかCultlyキャルトリー見るか、ゲームしてるかだな」


 悠真が呆れ顔で肩をすくめる。


 「……現代っ子だねぇ」


 「お前も同い年だろ!」


 くだらないやり取りに、天城いろはが小さく笑った。


 「もしよかったら……私も、ご一緒してもいい?」


 一瞬、悠真が「おっ」と目を輝かせる。


 「もちろん! な、イツキン?」


 「……何で俺に振るんだよ」


 一樹は机に突っ伏したくなる気分を堪えながら答える。


 こうして、明日――セントラルスクエア行きが決まってしまった。


 「そうだ」悠真がポンと手を打つ。

 「せっかく同じ班なんだし、連絡先交換しとこうぜ。俺とイツキンはもう繋がってるから……天城さん、Portalkポートークやってる?」


 「うん。やってるよ」


 いろははスマホを取り出し、すぐに操作する。


 数秒後――ピロン、と一樹のスマホが震えた。

 画面には【天城いろは】の名前が新しく追加されている。


 「これで安心だね」

 いろはが柔らかく微笑む。


 (……クラスの人気者と連絡先交換とか、場違いすぎだろ俺)

 一樹は内心でため息をついた。


「じゃあさ、集合は……セントラルスクエアの入口で、朝の11時くらいでいいな?」

 悠真が指を立てる。


 「……了解」

 一樹がうなずくと、いろはも「わかりました」と頷いた。


 「よし決まり! じゃ、イツキン、帰ろうぜ」

 悠真が鞄を肩にかけて立ち上がる。


 「天城さんは?」

 一樹が問いかけると、いろはは小さく笑みを浮かべて答えた。


 「私も……正門までご一緒していい?」


 「もちろん!」悠真が即答する。


 三人並んで教室を出る。

 連休前のざわめきに包まれた校舎を抜け、夕暮れに染まる廊下を歩きながら――一樹はほんの少しだけ、これも“平穏”の一部なのかもしれないと思った。


――


帰宅してしばらく部屋でのんびりしたあと飯を食べ、直ぐに風呂。いつもの平和な日常に満足し、濡れた髪をタオルで拭きながらベッドに腰を落とす。


 「……明日、悠真が11時にセントラルスクエア集合、とか言ってたけ?」


 悠真といろはの顔が頭に浮かぶ。思い返してちょっとだけため息。

 布団に転がり、スマホを取り出す。画面をスワイプして開いたのは、いつものオカルト掲示板だった。



---


【秋ヶ原都市伝説スレ 17】


1 名前:名無しさん

 昨日セントラルスクエア辺りで“謎の美人”見た奴いる?


2 名前:名無しさん

 紫髪ロングで日傘差してた子だろ? モデル並みにスタイル良かった。


3 名前:名無しさん

 俺も見た。あれ絶対外人だわ。顔が彫刻みたいだった。


4 名前:名無しさん

 でも喋ってる言葉が全然わかんなかったぞ。英語ですらない。


5 名前:名無しさん

 異世界語きたwwwww


6 名前:名無しさん

 声かけたけど全く通じなくて詰んだわ。ナンパ人生で初めて「言語の壁」で撃沈www


7 名前:名無しさん

 草wwwwwwwwww


8 名前:名無しさん

 盗撮っぽい画像上がってたけど秒で消されてたな。SID案件か?


9 名前:名無しさん

 SIDとか陰謀論厨乙www

流石にプライバシーの侵害だろ。


10 名前:名無しさん

 でもガチで綺麗だったのは確か。あんなの秋ヶ原にいたらすぐ噂になる。


11 名前:名無しさん

 最近“銀狼”の話題減ったのに、今度は謎の美人かよ。オカルト供給多すぎw


12 名前:名無しさん

 そういや銀狼って最近どうしてんの?


13 名前:名無しさん

 暴行事件なくなったしなww 平和平和www


14 名前:名無しさん

 逆にアイツ、ただ不良狩りしてただけ説w


15 名前:名無しさん

 ……と思ったら、昨日ゲーセンで見たんだがw


16 名前:名無しさん

 は???


17 名前:名無しさん

 証拠は??ww


18 名前:名無しさん

 ほら(※画像添付)

 →黒パーカーに紺の短パン姿で、格ゲー筐体に座る銀狼の後ろ姿


19 名前:名無しさん

 wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww


20 名前:名無しさん

 なんで格ゲーやってんだよアイツwwwww


21 名前:名無しさん

 「暴行事件がなくなったと思ったら、ゲーム事件始まってて草」


22 名前:名無しさん

 しかもパーカー姿かよ、完全に本人で笑う。


23 名前:名無しさん

 秋ヶ原の平和は今ゲーセンで守られている(物理)www



 「…………」


 俺はスマホを握りしめ、思わず叫んだ。


 「何してんだおまえぇぇぇ!!」


 頭の奥から、あの甲高い声が響く。


 『あ? バレちゃった? にひひっ♪』


 「にひひっ♪じゃねぇ!!なんでゲーセンなんか行ってんだよ!」


 『だってさー、最近の不良、わたしの顔見ると速攻で逃げんだもん。ザコばっかでつまんないんだもん。』


 「……おまえがやりすぎるからだろ!」


 『だからさ、代わりに格ゲーやってみたの。おもしろかったよ? あんたと悠真がさ、やってたでしょ? それを思い出してさ。』


 「おもしろかったじゃねぇ! 筐体壊すんじゃねぇぞ!」


『あー……うんダイジョウブ。』


 「おい……何した」


  『えへへっ☆ ちょっとパンチマシーン殴ったらさぁ、ヒビ入っちゃってさ。まぁ大丈夫大丈夫~♪』


 「それは壊れて当たり前だろ!!」


 『にひひっ♪ でもさぁ、喧嘩するよりマシじゃん? 秋ヶ原も平和平和、ってやつでしょ?』


 「………………」


 俺は布団に突っ伏し、頭を抱えた。


 (……俺の平穏、返してくれ)



感想がありましたらぜひよろしくお願いします。


誤字脱字や設定がおかしいなど些細なことでも書いていただけたら嬉しいです

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ