32話、それぞれの反応
2章書いてるんですが、結末まで考えてはあるんですが路線変更するときは更新が止まる可能性がありますのでご了承ください。
【秋ヶ原市ガス漏れ事件について語るスレ 12】
1 名前:自治隊長◆MOD
前スレは陰謀論とデマで荒れすぎ。ここでは“ガス漏れ”の事実だけを扱う。
虚偽報告は削除対象、協力よろしく。
2 名前:名無しさん
でもさー、あの夜の港に“白い影”が出たって話、まだ残ってんじゃね?
3 名前:港湾ウォッチャー
現地にいたけど避難誘導がやけに早かったんだよな。あれほんとにガス漏れだったのか?
4 名前:動画保管庫
ほらよ(※短縮URL)
保存しといた。消される前に見ろ。
5 名前:名無しさん
……なにこれ。人間の動きじゃねぇwwwww
6 名前:陰謀紳士
はいはいCG乙。春の自主制作映画でも作ってんだろ。
7 名前:名無しさん
草wwww文化祭の特撮部の仕込みだろこれwww
8 名前:い・ろ・は・す
違います!!これは本物です!銀狼さまの戦いを侮辱しないでください!!
9 名前:名無しさん
出たwww信者wwwww
10 名前:夜の見張り人
いや、俺も屋上から見た。白い髪の影が飛び回ってたのは事実。
11 名前:自治隊長◆MOD
現地報告を装ったデマは禁止。削除依頼済み。
12 名前:港湾ウォッチャー
てかガス漏れで死者ゼロって逆に怪しくね?普通なら何人か倒れてるだろ。
13 名前:名無しさん
SIDとかいう裏組織が処理したんだろwwww
14 名前:陰謀紳士
陰謀論厨は寝ろwwww明日学校だろww
15 名前:い・ろ・は・す
逃げるな!銀狼さまが人々を救ったから犠牲者は出なかったんです!
16 名前:名無しさん
いやいやwwお前の脳内にしかいねぇからww
17 名前:動画保管庫
おいマジでフレーム解析してみ?動きの速度が常識外れ。CGでここまで自然には作れん。
18 名前:名無しさん
だから学生サークルのやらせ映像だってwww信じすぎww
19 名前:夜の見張り人
……なら何で次々と動画が削除されてるんだ?
20 名前:港湾ウォッチャー
確かに。自治隊長が必死に消してるの逆に怪しいわwww
21 名前:自治隊長◆MOD
規制する。以降、銀狼関連の書き込みは禁止。
22 名前:い・ろ・は・す
規制なんて無駄です!銀狼さまの真実は、誰にも隠せません!
――スマホの画面を閉じると、深夜の部屋に静寂が戻った。
青白い光に照らされた自分の指先が、かすかに震えているのがわかる。
「……どうして、誰も信じてくれないの」
あの掲示板の連中は笑う。CGだ、映画だ、陰謀論だ――。
けれど私は知っている。
本当の銀狼さまの姿を。SIDの回線を奪い、カメラをハックして、あの勇姿をこの目で見た。
最深部に足を踏み入れた瞬間、通信が途切れたときの焦り。
必死に別のカメラを繋ぎ、機械天使との戦いを見届けたときの胸の高鳴り。
けれど、最後までは見られなかった。撤退のざわめきに飲まれて、映像は消えた。
――だからこそ不安だった。
銀狼さまが本当に生き延びたのか、確かめられなかった。
けれど二日後。
街に再びその姿が現れたとき、私は確信した。
「……よかった」
胸の奥が解けるように安堵して、思わず涙が滲んだ。
なのに、誰も信じてくれない。
世界は笑い、否定し、切り捨てる。
でも私は知っている――あの存在は確かにこの世界に生きているのだと。
「証明してみせる。銀狼さまは、本物だって」
スマホを胸に抱きしめたまま、いろはは小さく息を整える。
けれど――その心の奥には、誰にも言えない気持ちがあった。
銀狼さまにもう一度会いたい。
できれば、隣に立ちたい。声をかけたい。
けど……それは“信者”として一線を越える行為かもしれない。
「ダメダメ……推しとの距離感は大切にしなきゃ……」
顔が熱くなり、両手で覆い隠す。
思わず口から飛び出した、誰にも見せられない秘密のスローガン。
――Yes銀狼、Noタッチ!
自分で言っておきながら、恥ずかしさにベッドに転がり、枕をぎゅっと抱きしめる。
それでも笑みは消えない。
だって、銀狼さまは本当にこの世界にいるのだから。
*
SID会議室。蛍光灯が机に冷たく反射し、壁一面のモニターには歪んだ地下施設の映像が流れていた。
「……それでは、秋ヶ原都心地下でのダンジョン事案について報告します。」
進行を務める久遠の声に合わせ、通信士が映像を切り替える。
モニターには地下鉄の点検通路、崩れ落ちた雨水貯水槽、そして魔素に蝕まれ変質した壁面。
「被害総額は1500億規模。地下鉄の一部は封鎖され、避難騒ぎで都心の交通網は一時麻痺しました。しかし“銀狼”の介入により、部隊は全滅を免れています」
久遠が資料を切り替えた。
「復旧状況について報告します。
地下鉄路線は最短でも二か月閉鎖、雨水貯水槽の完全修復には半年以上かかる見込みです」
通信士が補足する。
「都心の交通網は一週間で仮復旧できますが、物流の停滞はしばらく続くでしょう」
茜が腕を組み、ため息をついた。
「……半年間も都心が不安定なままでは、市民の動揺が広がるわ」
「それでも急ぐしかない」鷲津が短く言い切る。「復旧の遅れは、我々の監視任務にも響く」
茜が腕を組み、険しい表情で口を開く。
「……それに救援は事実ですが、同時にカーティス・ロウが消息を絶ったのも事実です」
久遠が資料を投影する。赤字が浮かぶ。
【危険度:銀狼】
【旧ランク:D → 新ランク:S】
会議室にざわめきが走る。
「Sか……」鷲津が低く唸った。「幹部クラスを排除した可能性を考えれば妥当だろう」
「ええ。あれが敵に回れば、一都市が消える」茜が強く言う。「継続監視は必須です」
鷲津は短く頷いた。
「取引通り自由は与える。
ただし監視は強化する。
だが、あまり刺激をし過ぎるな、あの力がこちらに向けば取り返しが付かない。それが我々の結論だ。」
続いて、通信士が1人の少女の写真を映した。
黒いゴシックドレスに包まれ、日傘を刺した美しい少女がこちらを見つめていた。
「次に監視対象。“異世界人侵入”の可能性がある人物が1名新たに確認されました――。
夜間に都心ビルの屋上へ出没し、監視を察知しては逃走を繰り返しています」
茜の目が細まる。
「……銀狼と交錯すれば、火種になる。
問題は起こしていないが、早めに接触を謀るべきだな。」
志藤が補足するように声を上げた。
「それと、ハッカー対策について。例の“い・ろ・は・す”と名乗る侵入者、都心監視網にまで侵入していました。銀狼に肩入れしている可能性が高いとおもわれます。専属対策班を設けるべきです」
鷲津は深く頷き、場を締める。
「よし。銀狼はSランク指定。もう1人も監視対象に追加。侵入者への対策も強化する。SIDは一歩も遅れるな。
これ以上の失態は敗北と同等と考えろ。以上解散だ。」
モニターに【監視強化】の赤文字が点滅し、会議室に冷たい光が広がった。
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