16話 ダンジョン化
1. 防護・補助系
《T.A.S Mk-II》戦術支援マスク
魔素濃度に応じて自動フィルター切り替え。
暗視/熱源/魔素感知をHUDに重畳表示。
通信回線・記録機能付き。
呼吸音や心拍数も共有できるため、隊員同士の安否確認が即座に可能。
軽量ボディアーマー
魔素干渉素材で編まれた特殊繊維。
物理弾丸と中級魔術に耐性あり。
動きを阻害しない程度の軽装。
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2. 武装系
N系列(非致死)
N-01:スタンパルス・グローブ(近接スタンショック)
N-03:スモークビーコン(魔術阻害効果付き煙幕)
F系列(戦闘)
F-A1:魔力伝導刀(茜の専用)
F-B4:魔封弾ハンドガン《サイレイザー》(悠真ら一部が携行)
F-C3:アームアシスト(近接強化・連城の主武装)
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3. 探索・支援系
携行ライト&ケミカルマーカー
魔素干渉で電子機器が狂う時に備え、化学式発光スティックを使用。
ロープ/簡易ワイヤー
崩落地帯や縦穴移動用。
簡易シールドジェネレーター(小型展開結界)
短時間のみだが、魔物の突撃を防ぐバリアを展開できる。
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4. 後方支援
携行端末《T.A.S Link》(詩音が操作)
通信/地形マッピング/魔素濃度のリアルタイム測定。
後方のD(分析担当)と連動して逐次支援を送る。
授業終了のチャイムが鳴ると同時に、御影悠真は立ち上がった。
(……先生から住所は聞けた。見舞いってことにしとけば問題ない)
教室に鞄を肩にかけ、ポケットにスマホを滑り込ませる。だが――その瞬間、制服の内ポケットがわずかに震えた。
「……SID召集かよ。こんなタイミングで」
周囲を気にしつつ、廊下から校舎裏の静かな通路へ回り込む。小型の通信イヤホンを耳に挿し込むと、合成音の報告が流れた。
『Y、特異魔素反応を検知。発生源は秋ヶ原市街地、駅東側地下。魔素濃度はレベル3――上昇傾向。至急、支部に出頭を』
「了解。これより向かう」
悠真はスマホを切り替え、SID専用アプリから即座に通達を確認。 ダッシュで校舎を抜け、裏口から専用車両へ飛び乗った。
――SID秋ヶ原支部、作戦会議室。
静寂の中、五人のエージェントが揃っていた。 中央に立つのは指揮官にして、生徒会長でもあるA――御影茜。
「秋ヶ原駅東側地下構造物に発生した特異事案。これより対応任務を開始する」
茜の声は鋭く、無駄がない。それだけに、部屋の空気が瞬時に引き締まった。
ホロ投影には市街地地下の詳細地図、そして時間ごとの魔素濃度の変遷。
「魔素濃度は現在、L3。だが、中心部では局所的にL4反応を観測。範囲は半径約400メートル。対象範囲内には地下鉄の旧設備、雨水貯水施設、そして点検用通路が交錯している。今回の目的は二つ。――一般人の救出と、コアと思しき魔素濃度中心部の無力化」
支援担当であるエージェントP――桐島詩音が、後方の端末を操作しながら補足を入れる。
「地下には点検用通路を経由して潜入。途中、崩落箇所も確認されています。市街地での巻き込まれ被害は、現在のところ十名。二名が連絡不能。全員が地下設備点検の民間作業員。生存確認が急務です」
「出動隊は、戦闘部隊と救出部隊に分かれる」
茜が指先でホロ表示をスライドさせ、編成図を表示。
「第1部隊――戦闘担当。 隊長:私、(茜)ランクA。
前衛:R(連城涼牙)ランクC。
索敵・戦術補助:Y(御影悠真)ランクB。
第2部隊――救出・搬送担当。
隊長:P(桐島詩音)ランクB。
支援要員数名+サポートエージェントDによる後方通信分析」
各員のマスクにはT.A.S Mk-IIが装備され、コードネームの頭文字が刻まれている。
戦闘部隊、救出部隊ともに、各自の任務に対し静かに頷いた。
「各自、装備はAパターンを基準とし、必要に応じてB・Cパターンへ移行。行動開始は十五分後。移動車両は既に待機中」
茜の言葉に、誰も異議はなかった。
◆
夜、秋ヶ原駅東側。
封鎖された地下鉄構内の裏手、点検用通路前には、T.A.Sで装備を固めたSID部隊の姿があった。
空気は湿っており、埃と鉄の匂いが鼻を突く。水滴の音がどこかでこだまし、視界の端で虫が走る。
「では最終確認。進入経路は地下鉄線路跡から南側点検通路に入る。そこから第一層へ移行し、施設内貯水区画、旧雨水制御室を抜けて第二層へ。目的地の魔素密集区画は最深部の第三層と推定されている」
茜が指差すホロマップには、すでにリアルタイムでマッピングされた構造が広がっている。
「……だいたい想定通りか」
悠真が呟くと、前方で連城がフッと鼻を鳴らした。
「油断すんな。俺らが潜るのは“異常”の中だ。想定なんてのは外れるためにある」
「はいはい、緊張感は維持してますって」
苦笑しながらも、悠真は懐に隠した短剣の重さを確かめる。 刃には魔力封鎖加工が施されており、軽く振るだけでも空気が切れるような鋭さがある。
「では、突入」
茜の号令一声。
第1部隊が先行し、暗く湿った通路へと消えていった。
◆
第一層:旧雨水貯水エリア
沈殿槽の間を抜けるように進む部隊。ライトが濡れたコンクリートの壁を照らすたび、苔とヒビが浮かび上がる。
「動きあり……!左奥、低姿勢の……這い寄る魔物です」
T.A.S越しに詩音の声が響く。
「確認した。全員、臨戦態勢」
その瞬間、闇の中から“それ”が飛びかかってきた。 泥と粘液にまみれた異形――両腕が異様に長く、眼球が皮膚の下で泳ぐように蠢いていた。
前衛の連城が剣を抜き、一直線に切り払う。刃が肉を裂き、悲鳴のような音が響く。
「まだ来る、三体、後方からも!」
「Y、右側の通路、閉塞させろ!」
「了解!」
悠真が即座にグレネードタイプの妨害煙幕《N-03》を放つ。緑がかった煙が広がり、術式干渉で魔物の反応が鈍る。
「収束完了。前進可能」
茜の冷静な声。
短い戦闘だった。だが、その空気は確かに、緊張感を一段階引き上げていた。
◆
第二層:旧中央制御室跡
ここからは天井が低く、機械の残骸が散乱している。 足元の鉄板が軋むたびに、周囲の静けさが際立つ。
「……ここ、思ってたより深いな」
「マッピングでも第二層の全域は把握できてない。ここが“異常発生”の中核とみて間違いない」
「変な音、しないか……?」
ぴたり、と全員が止まる。 次の瞬間――鉄板の隙間から、太い触手のようなものが飛び出した。
「迂回!全員左へ移動、D、通路解析!」
『了解、左側のサブ通路に構造安定ルートあり。危険区域回避可能』
「よし、再突入」
こうして、SIDは第三層――魔素の最も濃い“中心”へと向かっていく。
それが、かつてない異常事態の入り口であることを、まだ誰も知らなかった――。
誤字脱字がかなり多いと思われます。
それでも気にしない方はどうぞお読みください。




