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~風、至る~

「少し、、、話をしようか。」


肘を机の上に置き、泣いていたとは思えない程冷静な声質。


立ち止まっている海のため、前の机の椅子を反対側に向ける。桜雨の机に二つの椅子が向き合うように。


改まった雰囲気にスッと着席し、手を膝に置く海。


「君は大切な決断をするとき、、、どうする?」


再び肘をつき、飛ばしてきた思いもよらぬ質問に相も変わらずキョトンとする。それを察したのか腕を机の上から動かし、桜雨は言葉を改めようとした。


「あぁ、すまない。そのーだな、、、簡単に言えば、」


「勘かな」


「、、、ほう。」


言葉を探すため窓の外を見ていた桜雨に続き、海は校庭を眺め、逆に肘をついた。


「考えてらんないよ。難しいことは、考えてらんない。だから適当に決める。そうやって来た」


「、、、君らしくはあるかな。」


色々な意味を含んでいただろう言葉。人の裏が読める桜雨にとって海は自分をも信じない人間だと思っていたのだろう。今までの会話もあってか想定内の回答であった。


「ただ、他責にはしたくないんだ」


「、、、。」


「”それ”に託すんじゃなくて、、、”その”道を自分で選びたい」


「失敗しても、運のせいにしたくはないのか。」


「”勘で決める”っていう決定は自分自身で下したい。そうじゃなきゃ、、、」


海の顔を見る桜雨。依然、窓を見る海。


「この高校に入るのも、そのために勉強するのも、サッカー部に入るのも、あいつらと友達になるのも、、、全部勘で決めた。でも不思議と後悔した経験は少ないんだ、、、いや、、、ちゃんと後悔を知らないだけか。全部適当だから」


ぎゅっと瞳孔が小さくなる。


「今自分が進みたい道を自分の考えで選んだら、、、、、、、、全部降りかかってくる」


窓に反射する顔と小さな言葉。勘や運、それらは海の心の黒さの象徴であった。


「、、、って言っても桜雨さんには関係ないか!桜雨さん賢いし!色々考えてるの?質問的に何か決めかねてることとか?」


先ほどまでの沈黙を破るためか立ち上がっては様々な素振りを見せる海。慌てながら髪の毛を掻いていると桜雨は少し笑い、海の答えに感想を言った。


「いい答えだと思う。私には、、、できなかった考え方だ。」


「桜雨さんには、、無縁な考え方だよ」


少しづつ動きに落ち着きを取り戻してきた。


「私は考えすぎてしまう、、、君の案、参考にさせてもらうよ。」


「あ、、、」


「それに君、、、賢いだろう?ずっと、ずっと。」


「いや、頭はほんとに、、、その」


頭を掻きながら桜雨の気づきを否定しようとするが、桜雨はそんな言葉を遮るように立ち上がり微笑んでは、海の目の奥を見てはそう言った。


「いつもの君と、今の君とでは全く別人だ。どちらが本物なのかはわからないが、、、私は今の君の方が好きだ。」


桜雨の言葉にぽかんとたたずむ海。彼女の言う通り、初めての会話、テスト返しの時に比べれば海のテンションは別人のように変わっていた。


手提げを持ってはゆっくりと廊下の方へ歩き出す桜雨。


「そうだな、、、私の勘が言っている。今の君なら、、、どうだい?一緒に、、。」


泣いていたとは思えない、彼女にしては朗らかな表情で振り返っては言った。



「後悔してみないかい?」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

彼の偽善も、生き方も、心の黒さを証明するにはまだ足りない。人を判断する材料にはなりえない。


今まで能天気だった人間が途端に真面目になっただけ。話した回数も指で数えられる。ただそれでも彼女の心は彼を選べと叫んでいた。根拠もなければ身勝手だ。


変えられる人間は変われると思ったのか、今までの自分と比較したのか、それとも時間がなかったのか。感覚の理由は今も未来もわからない。それでもこれは”選択”であった。



「どうだい?一緒に、、、後悔してみないかい?」



これが桜雨の勘だった。



「え?」



「興味はある?能力者について。」



初々しくも、壮絶な。

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