~雨の中の蚕~
ドンッ!
「お願い!勉強教えて!!」
(、、、次は冷えたココア。)
「よく一緒にいる友達は?夏蛾君とか。」
「いやーあいつ家で勉強するって言ってさー、どうせしないくせに。今もほら、部活してる。この前逃げ出したっきり、ノーベン。まあ、、、でもほら、、、お馬鹿じゃん?怒られても気にしないんだよね」
(この高校のサッカー部は豊作なんだろうな、きっと、色々な意味で。)
「まあ、いいよ。教えてあげる。でもココアはいらない。」
「いやいやー、もらっといてよ~ね?」
「、、、。」
「、、、」
「あー、ごめん。口に合わなかったかな?あはは、なら大丈」
「君は、見返りを大切にしているんだね。」
「え?あ、、、え?」
「いや、勝手な私の感想だけどね。気にしなくていいよ。」
「、、、その節はー、あるかもなあ」
(何も言わず隣に座ってきた、、、。)
「なんかされたらお返ししないとムズムズしちゃうんだよね。逆もまたしかり!」
(これが心の黒さの原因か。すべてが偽善のような。)
「見返りって言葉にされるとなんか申し訳ないなー、裏があるみたいで。まあでもさ、このココア含め、気持ちの表れだよねー、ちゃんと感謝してるよ?っていう」
(教えてもらうことは前提なのか。偽善者であり、自信家。一番厄介かもしれないな。)
「ということで!勉強の方、お願いします!」
(逃げ道を完全に断たれた、、、か。)
「はあ、、、まあ、いいよ。」
(、、、満面の笑みだ。)
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「よっしゃ平均点!」
「マジかよ点数低!!」
「田中お前すごいな!95点だってよ!」
「この程度の問題を間違えてしまうとは。反省反省」
「まあ、全然勉強してなかったから、無難に85だわ」
(人というのはやはり比べたがるな。まあ、それが健全な発育の賜物か。競争心も、、、もはや消えてしまった。強いて気になるとするなら、、、。)
「はあ、、、はあ、、、」
(彼は赤点を回避できたのか?とてつもなく腕が震えているが、、、。別に私には関係ない、か、、、、、、、、、、、、、、。いや、、、。)
「気になるな。」
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キーンコーンカーンコーン
「はーい、じゃあテスト返却はおしまいねー。次の授業はいつものだから授業用具忘れないようにー。号令ーよろしく!」
「起立」
「はあはあ」
「気を付け」
「はあはあはあ」
「礼!」
「「ありがとうございました」」
「はあはあはあはあ!」
(、、、なぜかすごく息が上がっている。どうし、、、こっち見た。)
ダダダダダッ
(な、なんだ。)
「ありがとうー!!ほんとにありがとうー!!!」
「う、うん。どういたしまして。あと声大きい。」
「赤点ギリギリ回避できたよー!!!桜雨さんのおかげだー!!!」
「うん。よかったね。あと声大きい、手もいたい。」
「ありがとねー!ありがとねー!!」
「あのふたりあんなに仲良かったんだ」
「変なのー」
「出来てんじゃん、変人同士」
「うーわ、気持ちワリッ!」
「先駆けか、羨ましっ!」
「海、、、海あいつテスト週間であそこまで、、、」
「桜雨さんによく近づけるな~。僕怖くて無理だよ」
(変な目で見られてる。あの三人にすら、、、。)
「はあ、目を覚ましてくれ。」
「いててっ!桜雨さん、いたい!ハッ!」
(自分がうるさいことに気が付いたかな。)
「、、、ほんとにありがとうね!!」
「うるさいぞ柊ー。桜雨さん困ってるだろー」
「「はははっ」」
「すいませんうれしすぎてー」
「それに喜べるほどの点数じゃないだろ」
「いや歴代最高っすよ!、、、」
(手がまだ痛い、、、、。)
「、、、ふっ、なんだろうな。」
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(またこんな時間。彼らは、、、テストが終わったから部活か。久しぶりの静かな教室は、、、落ち着く。)
「、、、そろそろ帰った方がいいのか。」
(彼女たちはまあ、退屈なんだろうが、私が居ようが居まいがそれは変わらない。ただ久しぶりに帰るといつも怒られる。ここいらで一旦帰るのが適切かもしれないな。家に、、、領域に。)
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日が落ちた部活終わり。
「はい、あがりー」
「マジかよお前UNOつえぇよ!」
「僕最初より手札増えてる~」
東日本サッカー部において強豪校に入るとは思えない小ささを誇る部室で日課のようにUNOで遊ぶ三人。
「海、こういう勝負事強いよね~」
「こいつ何かをかけた途端強くなるからな!」
「卑し~」
「ふふっ、そんな褒めても昼飯代はいただくよ」
ガチャ
「お前ら部活終わりに何してんだよ」
ただでさえゆとりがないと言えるこの部室にもう一人入ってきた。
「田埜もUNOやろうよ。明日の昼飯代賭けてね」
「はあー、、、まあ、いいよ。負ける気しないし」
「いったな!」
「次は負けないよ~」
カードをシャッフルし、配り始める海。教室でも部活でも、お馴染みいつもの四人組。彼らが集まって今まで賑わわないことはなかった。今回を除いて。
「、、、」
「、、、」
「、、、」
「「「それでさ」」」
息の合った一言目であった。
「、、、ん?どうしたの?みんなして」
顔を見合わす海以外。
「多分俺らが言いたいことは同じだから代表して言うわ、、、お前、桜雨さんとどういう関係?」
「そうだぞ!羨ましい!彼女か!やっぱり彼女か!?」
「あの桜雨さんと!すごいね~海は。僕は近づけないや」
「え?、、、いやいやいや!違うよ!単にテスト勉強教えてもらっただけ!なんなら向こうは僕のこと友達未満だと思ってるよ!」
唐突の沈黙から放たれた一言が予想だにしなかったのか、焦りを見せる。
「本当か!?本当なんだな!!信じるぞ!」
海、安心する。
「って言っても。勉強教えてもらうだけならほかの人でもいいだろ?どうなんだよ海。ちょっとは興味あるのかー?前かわいいって言ってたもんなー?」
海、表情を変えた。
「田埜こういう時めっっっちゃうざいよね。別になにもないよ」
「海は桜雨さんのオーラを感じないの~?なんかほらボワッっとしたさ~」
「なんか少し感じるよな。周りのみんなも言ってるわ」
「俺も感じるぞ!」
「それよくわかんないんだよねー。何も不快には感じないけど、、、」
「よく聞くエネルギーってやつなのかもな」
田埜の鋭い見解に対して、皆が感じる”それ”に興味を抱くことなく淡々とUNOのターンを進める海。
「ただ、初めて話した時、ビビッと来たんだよね。”勉強は”!桜雨さんに教えてもらおっ!って」
「なにそれ運命じゃ~ん」
「神の啓示のタイミングしょうもなくね!?」
「海の感は当たるからなー。次また話しかけてみたらどうだ?」
「あくまで勉強の時だけだよ、、、でもありかも。かわいいし」
「やっぱ気になってんじゃねーか!!」
「どうでしょうねー?はい、田埜お前UNO言ってない」
自分の手札を凝視しつつも田埜のミスを指先だけで指摘する。
「嘘ぉ!なんでそんなとこ見てんだよ」
「ハイ凡ミス~おバカ~」
「よっしゃ!!これで俺も勝てる!かも!!」
「やべえ!巳毘に負けたら俺のプライドが!」
騒がしい三人と同じ箱の中、見つめる手札から次の一手だけでなく、他のことも考えていたようだ。
(、、、ほんとに話しかけてみよっかなー。なんか、面白そうだし)
バサッ
「UNO。あがり」




