~春は牡丹~
約一年前の春。
キーンコーンカーンコーン
「いやマジでこのメンツいてよかったわー」
「先生誰なんだろうな!」
「このクラスマジ当たりー!私一人だと思ってたもーん!」
「めんどくせー」
(気付けばもう二年生か。早い、、、何度も経験している、この空間も未だに苦手。今回の現世生活で”彼女”以外に何を得たんだ、私は、、、いや、”彼女”がいたから今ここにいるというべきか。)
「はーい!じゃあ出席始めるぞー!」
「うわ!後藤先生だ!」
「当たりだよ!当たり!」
「おいマジかよ顧問じゃねえか!」
「いい先生なの?」
「最悪だー!」
「おい!桜井!聞こえてるぞ!後でグラウンド三周な!」
「マジかよ!もー!!」
キャハハ
アハハハ
(自分のせいか。ここに居たって無駄なだけだと知っているのに。また三年間、、、棒に振るうのか。)
「はい!じゃあ気を取り直して出席取っていくからなー!」
「青井 俊太郎」
「はい!」
「石田 朱里」
「はい」
「上田 正樹」
「はい」
(相応しい者、、、結局何も条件が決まってない。途方もない運試しをするくらいなら、ここらで打ち止めた方がいいのか?)
「桜雨 茉央!」
「、、、、、」
「、、、おーい?聞こえてるか?桜雨さーん?」
(そもそもそんな人間は、、、いるのか?)
「桜雨さん!」
「ハッ。」
「だめだよ初日にボーっとしてちゃー!まあ、桜雨さんは成績優秀だから心配ないか!」
「おい接待かよー!」
「オレだったらぶん殴ってでしょー!」
「そんなことしねえよ!」
「なに?あの子?」
「知らないねえの?万年ボッチの桜雨だよ」
「あとで近づいてみ。側歩くだけでゾッとするんだよ」
(この手の言葉には慣れてる、、、はず。ただ、暴力よりかはずっと痛い。頭のいいところに入ったのが運の尽きか。表で悪口なんて言わなければ、手を出すことなんて滅多にない。それに、賢いと表を作るのが上手くなる。人に見せる表情がよくても心を覗けば真っ暗、そんなのが当たり前。時々、純粋無垢な人間がいても、どこかには必ず、何かがある。)
「はい!じゃあホームルーム終わり!この後は自己紹介やら仕事決めがあるから、あらかじめ色々と考えておけよー!」
「ちょっと行ってくるわ!」
「どうだった?」
「マジで寒気した!何あの女!?すごー!」
「さっきボーっとしてた子かわいくね!?」
「桜雨さんか~。僕は苦手」
「海めっちゃ好きっしょ。あのタイプ」
「あー、関わったことないからなー。まぁ僕?面食いじゃないんで。話してみないと分からないな、、、めっちゃかわいいけど」
「結局かわいいんかい。まあ、何でもいいや飲み物買いに行こうぜー」
「「「あり」」」
「はい!じゃあ今回はここまで!午前で終わりだからってはめ外しすぎるなよー!不審者情報もあるから、すぐ家に帰るんだぞ。はい、委員長後はよろしく!」
「起立!」
(漠然とした謎。)
「気を付け!」
(その暗闇も人間性、、、なのか?)
「礼!」
(それなら私は、)
「「「「ありがとうございました!」」」」
(なんなんだ?)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
キーンコーンカーンコーン
「はい、じゃあこれでテスト範囲はおしまい。来週は自習にするから、みなさん各自、勉強用具を持ってくるように」
「「「はーい」」」
「いや分かる!この前見たAVなんてさ、、、、、」
(五月、、、もう五月か。ずっと領域内にいると時間の感覚が、、、いや、長生きしすぎてるせいか。早くしないとな。領域内の”二人”に悪い。早いところ見切りをつけて、、、、、って。あ。)
「夜だ。」
(考え事をしすぎたな。悪い癖だ。早いとこ出ないと。)
「え?」
カタカタ クルクル
「あ、起きた。おはよ」
カタンッ
(柊 海と寝てるのは、、、夏蛾 諒也どうしてこんな時間まで。)
「別に寝てなかった。二人はなんで?」
「え、起きてたの?寝てると思ってやばい話しちゃった。不快に思ったならごめんね。今は勉強してるんだー。僕とこいつ、やばいんだよテストが。一年も進級ギリギリで。コーチに命令されてね、勉強しろってさ。それで練習してるんだよね、鉛筆転がす。間違いなく上達してるなー」
(目を付けていた四人組。そのうちの二人。夏蛾 諒也は、簡単に言えば空っぽな箱。いい意味では純粋無垢。頭の中で思考を凝らすこともなく、とにかく感覚で生きる人間。異質な私のエネルギーにいち早く反応しては一年のころからずっと警戒をしている。ただ、嫌ってはいない、それほどの脳がない。警戒しているだけ、本能が。どうしてこの高校に入れたんだろうか。)
「起きなよ諒也」
(柊 海、、、サイコパス。表面上は誰よりも白く、純粋。それとは反面、心の中は誰よりも、きれいに黒い。少しは存在するはずの色のゆがみが彼にはない。何をするにも必ず裏がある。今までこんな人間は見たことがないが、案外まぎれられるものなんだな、この世界に。)
「なんだよ海。まだ眠い~、、、って桜雨さん!ごめん海!先帰る!!」
ドタドタドタ
「勉強のし過ぎで壊れたか。いや、してなさ過ぎか。それじゃ、僕も帰ろうかな」
「これ、鉛筆。落ちたよ。」
「お、ありがとう。桜雨さんももう帰る?」
「うん。」
「なら、下でジュースおごるよ」
「いらない。」
「え?お礼だよ、お礼。ほら、色々とさ」
「大したことしてない。それにいらない。」
「うぇー、じゃあほかに欲しいものある?安いものなら奢るよ?お菓子とか」
「特にない。それに、いらない。」
「そっか。ざんねーん」
(なんなんだこの子は。)
「それならコイントスで決めよう!僕が買ったら飲み物奢る!」
「え、いや。だからいらな」
キーン クルクル パシッ
「表」
(見えなかった。いや、見えないようにされた。でも向こうも不正してるわけじゃない。しっかりとした賭け。)
「それなら裏。」
「、、、」
「、、、。」
「よーし!僕一番のおすすめドリンクあるんだよねー。ココア好き?飲める?」
(本当になんなんだ。しっかりと結界を張り巡らせないと心が読めない。そこまでする気はないし、したくもない。今回は流れに身を任せるか。)
「別に、、、嫌いじゃない。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「どう?おいしいでしょ?」
「まあ、温かい。」
「その感想は初めて聞いたなー。確かに今日ちょっと冷えるしね、ちょうどいい。夏になると商品変わっちゃうのが残念だけど。次ホットココアちゃんに会えるのは冬頃かな?」
(自販機に話しかけてる。サイコパスというよりかは、不思議、、、いや、サイコパスか。飲み終わったし、そろそろ帰ろう。)
「それ、頂戴」
「え?」
カランコロン
「よーし!帰ろ!帰って風呂入って寝よ!熟睡だー」
「、、、ありがとう。」
「ん?」
「いや、捨ててくれたから。」
「あー、、、」
「、、、。」
「桜雨さん」
「何?」
「いい人なんだね」
「、、、え?」
「それじゃーどうしよっか。一緒に帰る?」
「それは本当に大丈夫。」
「あ、はい」
コツコツッ コツコツッ
「それじゃ、また!」
(こうやって人と話したのは久しぶりな気がする。話したのか、話させられたのか。どっちにしろ不器用ではあったが、こういうのも。)
「、、、また。」
(悪くはないね。)




