約束の再会
日が当たる花道を歩くリオンとツキ。他愛のない話をする。
「ツキはさ、ずっとここにいるわけでしょ?もしこの領域から出たら何したい?旅行とかさ」
花をなるべく踏まないようにと大きな歩幅で歩くツキ。
「そうだな~。外の世界は本当に何も知らないから、、、きっと歩くだけで満足しちゃうよ」
外の世界に出た未来を想像して楽しんでいるのか、ニンヤリしながら答えた。
ただ、その目はどこか寂寥を感じさせる。
そんなことはつゆしらず、領域外のことをぶんぶんと指を振りながら解説し始めるリオン。先生気取りであった。
「ずっと昔から外に出てないなら、本当に全部目新しいよ~。ご飯も食べ物も服も何もかも見たことないうやつかも!領域でてまず生きたいのがね~、う~ん水族館かな~?この前の大会の時に行ことしてたんだけど行けなくてね~。いや~早く終わらせてって、、、あ」
「、、、っぷ、はは、ははははは!」
吹き出すツキ。今までで一番豪快で、今までで一番見どころがあるものであった。ずっと笑う。
あることが脳裏に浮かんで、彼女のことを気に掛けたリオンであったが、どうやら心配する必要はないようであった。リオンの表情も再び柔らかくなっていく。
「そっか、、、そうだね。いつか、、、いつか自由になったら行こう。その時はリオンが私を連れて行って?」
笑いすぎて零れた涙を人差し指でふき取りながらそんなことを言うツキ。
「うん」
ふっくらとした表情でリオンは答えた。
話題はリオンの学園生活についてへと切り替わる。家族や生まれについて聞いたが、国センでの日常はツキは知りえない。非常に食い気味に質問を投げかけてきた。
「この領域に一緒に入ってきた子たちとは仲がいいの?」
「あ、そっか説明してなかったね。私と同時に入ってきた五人のうち三人は友達。ほかの二人はあんまりよく知らないかな。それ以外は本当に知らない」
「あの三人だよね。ミル様が教えてくれた。”あの人たちは丁重に扱え”ってね」
恐らくミルが発言した箇所だけ、声を低くしてモノマネの要領で話すツキ。リオンはミルの予想外な言葉に疑問を持ちながらも、ミルに対する圧倒的な服従が少しずつ弱まっていることを感じ、安心したのか雑な声マネにクスっと笑う。
「ふっ、そんな声なんだ、ミルって。丁重に扱え、か、、、朱莉たちはね~本当にすごいんだよ?面白いし、強いんだ!一緒のクラブメンバーになれて本当に良かったよ」
自信満々にそう話すリオン。それは喜びと同時に詠嘆が入り混じった声であった。この感情には噓偽りない、と声自信が証明しているように。
「いいね、最高の仲間。そんな子たちと行く学校はさ?家庭と違ってさ、その~、、、幸せ?辛いことはない?」
子どもが学校になじめているか心配しているかのように質問を投げかける。リオンはそれに対して先ほどの情緒を投げ捨てるかのように元気よく答えた。
「もちろん!家のことなんて忘れるくらいにね!いろいろな人がいて、出会いがあって、毎日が新しいことだらけで!もちろんその中には悲しいこともあるけど、大好きなお母さんがず~っと言い聞かせてくれた”泣かないで”っ言葉。それを思い出して、私のポジティブさで吹き飛ばしてる。好きなんだよね~この言葉」
質問の答えからはみ出してしまうほど、その言葉が大切のようだ。ツキと同じような家庭でも、リオンには母親という一つの光があった。
「そっか、、、そっか、そっか!幸せか!ならよかった、、、本当に。”泣かないで”、、、いい言葉だね」
大笑いしてからずっと潤んでいる瞳。幸せを噛みしめる、そんな満面の笑み。どうやらこの時、この瞬間をツキは大いに満喫している、そうリオンに感じさせた。
「それで?それで?リオンの学校ではどんなことをやってるの?」
「もう本当に色々と!全部話したら長くなるけど~...」
「うん」
「その時、柚木先生がね~...」
「へ~、そんなことが」
「それでね!それでね!あんなことが起きて~...」
仲睦まじい後姿。楽園で話す二人の表情からは負の感情が消えていた。
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「はあ、はあ、はあーーー。ここまでこれば、、、大丈夫か。問題は、、、遊里君」
ただガムシャラに領域の中心へと走ったカイリ。聖教会から何とか逃げ切ることができたが、遊里のことを案じてしょうがないようだ。
(若干エネルギーを感じたから時間稼ぎしてみたけどまさか遊里君だったとは、、、それにあの聖教会の人、めちゃくちゃ強い。僕なんかじゃ全然太刀打ちできない。本当に大丈夫かな)
「自分の命が狙われていても、他の人の心配をする。君ってやつは、優しすぎるのか馬鹿なのか、、、さっぱりわからないね。」
後ろから聞きなじみのある声が耳に入る。その声がする方へと咄嗟に振り返るが、そこには誰もいない。警戒しつつも自分の周囲を何度も何度も確認をする。
徐々に強くなっていく風、花弁が散るとともに、あるはずもない桜の花が頭上からヒラヒラと。
もう一度振り返る。
そこには大きな一本の桜、そして少女。
「久しぶりだね。柊君。」
「、、、ミル」
全てが桜色に包まれる景色の中、二人は”再会”した。
「久しぶりって、、、ほとんど初対面でしょ、僕ら」
「学生の頃よく話してくれたじゃないか。」
「僕はミルとなんか話したことない」
「忘れてしまったかな。それも、、、仕方のないことか。」
「忘れてるわけないじゃないか。ずっと探してたんだから」
「、、、覚えててくれたのかい?私のことを。」
「でも、君じゃない」
「桜雨 茉央 だよ。久ぶりだ。」
「君じゃないんだよ!!」
嬉々としていたミルの声を、叫び声で遮るカイリ。後ずさりをしつつも顔を上げるとそこには涙が。
「桜雨さんじゃない、、、お前はミルだろ!追放者だろ!犯罪者が彼女の名前を勝手に名乗るなよ!!」
後ずさりが止まることはなかった。徐々に遠ざかっていく二人。それを止めるように、ミルはささやいた。
「嘘じゃない、、、私が、桜雨だ。」
カイリの足が止まる。すでに呼吸が荒くなっていたが、叫ぶことを止めようとはしなかった。
「ならせめて否定してくれよ!何もしてないって!!追放者じゃないって!!!、、、全部、、、、、他の人がやったんだろ」
我を思い出したかのように途端に声が小さくなる。ミルは、ゆっくりと、カイリの期待を裏切り、腹を裂くような答えを口に出した。
「すべて私がやった。」
「違う」
「私が犯人だと断定されているもの、」
「嘘だ」
「私がやったと疑惑がかけられているもの、」
「そんな人じゃない」
「誰にも知られていないもの、」
「やめて、それ以上言ったら」
「全て、私が起こしたものであり、私が犯人だ。」
最後の言葉と同時に腕を上げ、彼女の能力である液体を展開する。
泣きそうな顔を上げ、ミルを見つめる海
「君を、殺さないといけなくなる」
それを見たミルは上げていた腕を仮面に伸ばし、それをついに外した。
整った顔、その瞳は青く、結晶の形をしている。そんな彼女はカイリにとどめの一言を投げつけた。
「桜雨 茉央。本名、ミル。能力者の祖、結晶人であり、」
綺麗な桜が跡形もなく消え、真夜中の大都会へと移る。
豪風が吹き荒れる中、小さく呟いた。
「追放者だ。」
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