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ビターな買い物

花が咲き乱れる場所、そこは丘のような造りをしており、二人はどうやら高所にいるようだ。奥には巨大な滝と桜やイチョウの木など様々な自然が胎動する。幻想的で、あまりにも非現実的な場所。カイリがたどり着いたものとは似ているようで全く異なる景色。そんな絶景を太陽の日とツキが照らす。


ツキが心地の良いステップを踏む。そのたびに花が散るが、そこに悲壮感は何一つ感じられなくむしろ、共に踊っているように見えた。もう一度、手を差し伸べる、今度はリオンから。


ただ、ひたすらに何も考えず、二人で舞った。社交ダンスのような踊りは緩やかさと美しさが交差し、練習だなんてしているはずもないが、それは完璧だとも思える。その過程が異なっていたとしても拘束された過去を持つ二人。道は決められ、それを外れることは許されない。そんな社会を領域が遮断する。なりたいようになれたツキとそれを目の当たりにするリオン。今度はリオンの番であった、自由になるのは。


この時、この瞬間が勇気を与えたのだ。さらに前に進む勇気。


ツキが目を閉じる。それを確認したリオンのその笑みは、




不気味であった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

数日前、遊里は一人、廃れた都市の中でしばらく徘徊していた。


(-"-)


しかし、他の三人とは異なり彼は室内からのスタート。ボロボロになったショッピングモール。電気は消え、食材や物品はあちらこちらに散布している。まるでゾンビ映画の中にいる、そんな感覚を遊里に与えた。


コツコツ


変に響きわたる足音。商品棚が区切れるたびにひょろひょろと道があるか周りを見渡す。されどすんなりゴールがあるわけもなく、無限とも思える広さをただ歩き続けた。時々二階にも足を運んでみるがそこには変わらず商品棚と崩れた地面、一階を見渡せる大きな穴があるだけ。見れば見るほどそれは無限だった。


(-_-)


しょぼんとしつつも心のどこかで余裕がある。それはきっと過去にミルに言われた発言が原因であろう。


「君たちも来い」


今、遊里の心の支えでも言葉。この発言をしたうえで領域に入り込んだ遊里を無限に閉じ込めておくことはないだろうと遊里は推測しているのだ。


優秀な生徒が作る領域とは異なり、エネルギーの底が計り知れない結晶人の領域は恐らく無制限に拡張することができる。もし推測が外れている場合、遊里が生きて領域を出られる可能性はゼロに近いだろう。


今の遊里の態度は、心配事をかき消すためのものなのかもしれない。結果はどうであれ、今の彼にはただなにもないこの空間を歩き続けることしかできなかった。


しばらく探索し、歩き疲れた頃、遊里はフードコートを見つけた。かなり開けており、もし何かが近づいてきたとしても、不意打ちを受けにくいこの空間でようやく一息ついて座ることができた。


( 一一)


肘をついては、ただ暗闇の中ボーっと遠くを見つめる。気づけばスヤスヤと寝息を立てて、夢の中へと旅立っていた。


(-。-)゜゜゜


ササッ



サササッ



ササササッカランッ



カランコロンカラン


遊里がようやく目を覚ましたのはコップが落ちる音が響いてからだった。


ゆっくりと伸びをする。


音が鳴った給水場を見てみるが特に何もなし。


「ンアァァ」


強いてあるものとすれば、今にも遊里の頭を食べようとしている化け物だけだ。


バリンッ!


ガタンガタンッ




とっさに結晶を作り、その爆発で避ける遊里。大量の椅子机を吹き飛ばしつつも着地後、素早く前方を確認する。


(゜゜)


そこには影一つ存在していなかった。


だが、遊里は確実に見たのだ。縦に長い黒く染まった体、そこには短い手のようなものだけが。顔はすべて白く、口と歯だけが極端に巨大で裂けたような形相をしたナニカ。


意識を一心に働かせる遊里。彼にとって、エネルギーというものは鮮明に見えてしかるもの。ただ、それでも背後を取られてしまった。人生史に残るエマージェンシーであったのだ。


フードコートからは距離を取り、観葉植物や椅子が並ぶ広々とした通路に出る。


見晴らしはいいが、その分背後がとられやすいため、すぐに戦えるように中腰でクルクルと周囲を確認する。あんなことが起きれど、この場所は結局沈黙に落ち着き、大変気味が悪かった。


すぐにこんな場所から離れようと振り向き、走ろうとした瞬間、体がこわばる。


(;'∀')


遊里の目線の先には大量のマネキンが。綺麗に横一列に並び、それぞれ異なる服、異なるポーズを取っていた。マネキンが自分でから動き出した、というよりは動かされたと表現する方が正しいだろう。


いっそ警戒を強める遊里。もしあの化け物がマネキンを並べたのであれば、その方向にいる可能性は大いに考えられる。あれを倒すことがこの領域を抜ける条件であるなど色々考えたが、好戦的であるがゆえ、どのみちどこかでまた出会うだろう。それならば結晶を作り溜めしておいた方が自分に利があると考えた遊里。反対方向に逃げ出そうとしたが、


(゜o゜)


振り向いた先にも大量のマネキンが。そして列の真ん中には、大きな人型オブジェクトが。ショッピングモールのシンボルのようなものだろう。


これらを見て遊里は大体を察した。あの化け物は楽しんでいる、狩りを。自分が遊び道具にされていることに内心怒った遊里。ふと振り返る。


もう驚きもしなかった。


先ほどまで道を塞いでいたマネキンが目と鼻の先に。


「ンアァァァ」


バクンッ!



化け物を視認せずともしゃがんで攻撃を避ける。化け物は天井に下半身をベッタリとくっつけ、首と思われる部分だけを伸ばし、遊里を頭から喰らおうとしていたのだ。


最初の一撃を外した化け物はその恐怖の象徴ともいえる頭と口を広げたまま、彼のもとへと落下する。気づかぬうちに全方位をマネキンで囲まれていた遊里は逃げ出そうとしたが、それらは地面に黒くネチャネチャとした液体によって固定されまともに動かすことはできなかった。


バリンッ!


化け物に喰われる寸前、またしても結晶の爆発で何とか難を逃れる。マネキンもろとも吹き飛ぶ遊里、自分を包む結界にも少しづつガタがきていた。自分のエネルギーで作ったものといえど、爆発の威力は凄まじい。遊里にとってこれ以上回避のために使いたいものではなかった。


急いで体勢を立て直すもその姿を再び消した化け物。この調子で戦いを続けても相手の手のひらの上で踊るだけと考えた遊里は、不器用ながらも自分を投影しない領域を作り出し、その中で近くにあった本屋に移動する。その後、領域を閉じることにより、領域外からは彼が消えたように見えるのだ。


なんとか一息置く遊里。領域をあまり広げず、また壊すことなく縮めたのはエネルギーを保存しておくためであり、そのおかげかまだ彼には十分な余裕があった。それでも頭を嚙まれればひとたまりもないこの状況。何とか攻めるタイミングを見極める。


本棚の角に隠れ、しばらく広い廊下を見続けるとようやく化け物が姿を現した。口と体が黒く、顔だけが白いそいつは結晶体ではあるが、放出するエネルギーを限りなくゼロにすることができるのが特徴だと考えた遊里。じっと観察をし続ける。


無音で動く結晶体を気味悪さを感じつつ観察していると、


ギョロッ


急にこちらを振り向いた。


流石に遊里も人間なのか、ビクッと体をこわばらせる。急いで身を隠したため、見つかりはしなかったが、その衝撃で静かに本棚が揺れ動き、表紙を見せるように置かれていた本が落ちそうになっていた。それに気づいたのは、もう一度顔をのぞかせた時であった。


(´゜д゜`)


立ち上がってはその本を拾おうとする。


ドサッ


急いで結晶体の方を見た。



「ンアァァァァァ!!」




本棚が少し揺れた時点で気づいていたようだ。背後で大きく口を開く


一歩先を行かれた遊里。




グチャッ




上半身を食われた



それは、




マネキンであった。


「ンアァ?」


バリバリバリ


口の中でさらにひび割れるマネキン。背後の本棚から出てくる上着を脱いだ遊里。


結晶体の口内で多きな爆発が起きるとともに後頭部を殴打する。



一閃



暗い本屋の奥から一瞬にして青い閃光がショッピングモールを照らし出す。


その輝きが終わるころには結晶体は塵になり、空中にエネルギーとして消えていった。


どうやら遊里はマネキンに囲まれた時点でこれを攻撃として使うことを決めていたようだ。マネキンはそこかしこから回収され、そんなものがあるはずもない本屋に遊里が居る。そんなシチュエーションの中、この手にかからないわけがない。領域を縮小させ、あえて壊さなかった理由も、ここまでマネキンを持ってくるためであった。


(;'∀')


ホッとして息を思い切り吐き出す。どこかで音を出し、おびき出すことは決めていたようだが、まさか驚く衝撃で気づかれるとは思っていなかったようだ。


一安心しては歩き出し、服屋に寄って、喰われた代用としての上着を探し始める。ゆっくりと選別をしながら見て回る遊里。結晶体を倒しても出ることができない状況に一旦脱出を諦めたようだ。水色の中に白のフードとポイントが付いた古着のようなものを見つけ、気に入ったのか一人黙々と試着をしてみる。


(*´ω`*)


よほど気に入ったらしい。


実際、彼に良く合っているためか、褒められた。



「いいね。よく似合っている。」



籠った低い声。そしてその雰囲気。


二回目だが遊里は既に慣れていたようだ。


焦っても意味がないと考え、ゆっくりと振り返り、互いに向き合う。一方は神妙な顔つきで、一方は仮面越しに。




そう、ミルだ。

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