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リオン対タコ型結晶体

「まじかよ、、、」


目の前の巨大なタコのような結晶体に開いた口がふさがらないリオン。


「イタダキマ~ス」


触手を上に持ち上げ体の下をあらわにする結晶体。そこには大量の牙と口のような器官が。


「ンア~~~」


ドーン


リオン目掛け、巨体が地面にたたきつけられる。咀嚼をするためか下半身をもぞもぞと動かした。


「アレ?イナ~イ」


倒れた地面の先には土と砂のような残骸が崩れているだけであり、結晶体が見渡すとかなり距離を置いた場所にリオンは立っていた。


「、、、」


体が凍ったように動かないリオン。


「リオン様。頑張ってください。応援しています。」


結晶体につかまれ宙ぶらりんになっているツキが最小限の声出しで応援すると、そのおかげかピクリと少し動き出す。


「き、、、」


「キ?」


「きっっっっっっっしょ!!」


森にいる鳥がすべて逃げ出すほどの声を出し、感情のすべてを表現する。その体には鳥肌が立っていた。


「キショイダトー!? オンナゴトキガ!! キメタ!! マズオマエクウ!! アペタイザーオンナ!!!」


触手をうならせ、激怒する結晶体。それに振り回される他人事なツキと身震いするリオン。森と市街地を挟み、カオスな空間が生まれていた。


ツキを振りまわしつつ、突如リオンへと突撃を始める結晶体。素早く地面に触れ足場を作り後ろに建っていたビルの三階へと逃げ込んだが、ヤツは突進を止めようともせず崩壊寸前の一階へと凄まじい音を鳴らしながら突き進んでいった。


バリバリ!!


「まーじで!?もしかしてこれ崩れる!?」


とっさに飛び乗った三階の床は崩れ、一階だけでなく建物全体が崩落を始めた。


ドーン、、、


ビルはダルマ落としのように崩壊し、音が静まるまでしばらくかかった。その破片の中からは何も聞こえず、ただ人工物としての終わりを感じさせる。


「ナーンダ!! ショボイ! ショボガキ!! ゼンサイ ニモ ナラナカッター ツマンネエノ!ツマンネエノ!! ソレジャコッチモ イタダキマ~ 、、、 ハッ?」


触手の動きを止める結晶体。顔の右側触手で捕えていたツキが知らぬ間に何かツヤツヤとした物体でできた球体に包まれていたのだ。


「ナーニ?コレ?ン?イタタ、、、イタタタタタタ!!!」


それはツキをつかんでいた触手を巻き込んで球体を形成しており、いよいよ完全に触手を巻き込み完璧な球になろうとしていた。


ガシュッ!


「ウワァァァアーーーーー!!!」


切断される触手。先端部分は完全に球に飲み込まれ、本体側は断面がクッキリと、少し遅れて筋肉から血が落ちてくるほど綺麗に切り落とされている。


「ナンデ!?ナンデーーー!!!」


ガラガラッ


倒れたビルの底、がれきの下から人影が姿を現す。


「いった~、ほんとに痛かった~。 はあー、絶対に許さない」


リオンが全身を使ってユラユラ揺れながら立ち上がる。出発前からリオンについていた特殊結界もかなりボロボロになっていた。


「ユルサナイ!? ハア! ボクノセリフダダダ!! オマエガヤッタンダロコノキュウタイ! シニサラセ!」


残った七本の触手をすべて活用し、全力で球をリオンに投げつける。リオンは焦ったような顔をした。どうやら敵が作ったものを何の躊躇もなく投げつけてくるとは思っていなかったらしい。


空中で崩れる球。どうやらリオンが作り上げたらしい。急いで中腰になり、中から出てきたツキを体全体を使ってキャッチする。


ドンッ


バリンッ


当たった勢いで後ろに止まっていた車に激突し、大きな音を鳴らす。一旦状況を整理するためか、コンクリートを粉上にして広げ、その煙幕の中に身を隠した。


「ハアァァ? アイツ コンクリート モ アヤツレルノ? シラナイ! ソンナノシラナイユルサナイ! ボク ガ チシキダ! ボク ガ ジショナンダーーー!!!!!」


ガンッ





「エ?、、、、、イタイ?、、、イタイ イタイ イタイ!! イターーーイ!!!」


「うるさいな~。ちょっとは黙っててくれない?脳みそタコ野郎」


最後の言葉に深い怒りを感じた。煙が晴れ、徐々に姿が見えてくる。その手には大きな弓が。土で作った矢が結晶体の腕を貫通し、奥の建物までもを吹き飛ばしていたのだ。


「ナンデ、、、ユミ?シラナイ シラナイ! ソンナ ジョウホウ シラナイ ゾーーー!!!」


「ツキ、ずっとケース持っててくれてありがとね。投げられたときは捨てるかと思ったよ」


「え?   あ、、、はい。」


もう一度矢を作ろうと、手を下に向け地面から様々な素材をかき集める。腕の痛みからかウネウネとその場で動き続ける結晶体に大きな声で話しかけるリオン。


「ミルが作った割には頭が固かったみたいだねタコ野郎、、、それと言っておく、私はアペタイザーじゃない。メインディッシュなんだよ!!」


弓を大きく振り絞る。その瞬間、結晶体は大きく怒号を上げ、今まで以上に大きく暴れだした。


「ミ ミル、、、ミル?ミルジャナイ ミルジャナーイ!!! ウワアァア!! アイツ オカアサンジャナイー!!! ユルサナイ! ユルサナイ!! ボクハ ボクハ!! ケイセイバンゴウ キューヒャク ナナジュウ ニ!! ボク ノ オカアサン ハ! ボク ノ オカアサン ハー!!!」


バキンッ!!!




大きな銃声が町中に響き渡る。思わず動きを止めるリオン。その沈黙はあたかも時が止まったようであった。しばらくの無言後、ツキの安否を確認するためにリオンは振り向いたが、未だに地面にペタリと座り込んでいる。


ふと振り返るとそこには、脳みそのような頭に風穴が開いた結晶体がその場で動きを止めていた。死んでいたのだ。


急いでツキをコンクリートで囲み、銃声が響いたビルの屋上へと移動する。周りをじっくり観察し、見渡すと遠くの市街地で銃を持った聖教会の運転手が森とは90度の方向へと歩みを進めていた。


「あ!そっちじゃないですよー!!ミルはあっちの森の方ですってー!!あのー!!!聞こえてますかー!!!あのー!!!!!、、、ありがとうございましたー!!!!!!」


もう声が届かないと判断し、助けてくれた感謝だけは伝えるリオン。不思議そうに後姿を見つめ、ツキのもとへと戻った。


「大丈夫?見た感じ傷とかはなさそうだけど」


ツキはゆっくりと立ち上がり、深く頭を下げた。


「ありがとうございます。本当に助かりました。それにしてもこのお手荷物、とても魅力的ですね。」


最初に預けたトランクケースをまじまじと見つめるツキ。その光景を腕を組み自慢げにリオンは眺めていた。


「ふふふっ、そうでしょ~。いざって時用に超カチカチにした土と装備を入れといたんだよね~」


明らかに鼻の下が伸びていた。しかし、これを最初からツキに持たせ続けたのは、今の今まで意識していたのであろう、ミル側の人間であることを。


「まだまだ、このケースには助けてもらうことになるからね。それじゃ、行こうか、ツキ」


ツキはトランクケースを腰の高さに戻し、にっこりと頷く。もうすでに彼女たちは少し信頼しあっているように感じられた。




そんな彼女たちとは裏腹に、運転手であった聖教会は歩みを速めていた。


誰かを見ているように、


誰かに見られているように。

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