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領域の途上

バンの後方ドア。そこを開いた聖教会の後に続いた四人は目を点にした。


「うわ、なにこれスゲー!」


朱莉が驚いたように声を発する。


外から見るとただの商用車だがその中は結界領域に包まれ、豪邸のリビングのような広々とした空間が作られていたのだ。


「今のうちに体休めときやー。大事な戦いの前やからね」


カイリ達四人を椅子に座らせ、話を続ける聖教会。


「僕はハイト。君たちのことはー、、、って、聞かなくても大体わかる気がすんな。よろしく」


傷のような模様が描かれている顔全体を隠すマスクの下からでも、とても関わりやすく朗らかな性格をしていることが四人ともわかったのか、リラックスして口を開き、自己紹介を終わらせた。


「いやはや、やっぱすごいメンツやねー。ぜひとも聖教会に入ってほしいもんや」


冗談交じりにそう話すハイト。照れる3人。しかし、次の質問は真剣に聞いているようだった。


「ところで、君たちは怯えてないんか?ミル相手に」


全滅。その言葉を四人全員が一度は想像した。カイリという一人の少年を守るために命を懸けるにはまだ関係が浅すぎる。

それでもついてきているのには各々何かしら意味があるようであった。


「うーん。もしかしたら全員死ぬかもしれないですね♪でも、止まれる場所がなかったんですよ。導かれてるような」

「流れのままって感じだな」

「朱莉は何も考えてないだけでしょ」

「んだと?!」


「僕は、、、行かなきゃいけないので」


(-_-)


四人の命を懸けた行き当たりばったりな考え方にクスっと笑うハイト。


「そうか、、、そうやね。僕も怯えてられへんなー、そんな勇姿を見せられたら」


喧嘩を続けている朱莉とリオンを置いて、カイリはハイトに話しかける。


「ハイトさんも僕らと一緒に戦ってくれるんですか?」


その回答として返ってきたものは実にあいまいであった。


「んー、領域に入れたらね」


首をかしげるカイリ。


「あ、君たちあんまミルについて知らんのか」


ハイトは皆に聞こえるように話をつづけた。


「ミルは今、自分で作った結界領域の中で生活しているんよ。その領域の場所はつかめているんやけど、そのまま入れずじまい。外からわかるあやふやな情報しか取れてないんよねー。だからこそ、理由が何であれミルに指名された君が必要っちゅーわけ、、、あの事件はほんま、気の毒やったね」


カイリは首を横に振る。


「大丈夫です。それに役に立てるようですし、、、ってもしかしたら僕以外は入れないんじゃ!?」


その言葉を聞いた矢先、遊里はそれを否定した。

(-"-)


「え?何か知ってるの?」


(-_-)

頷く。


”君たちも来い”そんなミルの言葉が遊里を確信させていた。


そんな会話をヒッソリとした目つきで見続けるハイト。その目線にいち早く気付いたのは遊里であった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ガタンッ


しばらく車を進め、沿岸部のような場所へ来た運転手含め6人。


「、、、ここがミルの領域?」


朱莉がそう言うと全員が周りを見渡す。そして、全員の意見をリオンが言葉にした。


「何もないじゃん」


コンビナートのようなものが遠くに見える以外に特に変哲のない太平洋であった。


「ここ、何県なんですか?」


カイリが運転手とハイトに聞くと、二人は口を閉じた。


「すまんなー。詳しくどことかは僕らの口から言えへんのや。一般人が遊びで来れへんようにするためにな」


なるほど、と首を縦に振る。


「それで、、、結局どこにミルが?」


そう聞くと聖教会はまっすぐと水平線を指さした。


「向こう」


目を凝らす四人。しかし、そこには美しい空しか存在していなかった。


「なんかー、、、冗談いってます?」


朱莉が苦笑いで言うと、失礼だろとリオンが突っ込む。


「この向こう。海の上に広がっているんよ。ミルの結界領域は」


全員の海と空を見る目が変わった。まじまじと視線を空中に集めるさなか、ハイトと無言の聖教会二人は歩みを進める。


コツッコツッ


そこにはあり得ない音が広がっていた。水の上を心地のよい音を鳴らしながら歩いていたのだ。


「なるほど」


後をつけるカイリ。三人も顔を見合わせた後に続いた。


徐々に遠のいていく地上。ふいに聖教会は止まり、顔を後ろに向ける。


「この先や。これ以上は僕たちも入れた試しがない」


そう言うとハイトは前方に手を伸ばし始めた。伸ばし切っていない腕がピタリと止まる。


「領域、、、」


朱莉とリオンが神妙な顔で同じ言葉をつぶやいた。


ハイトはカイリの顔を見て頷き、カイリはそれに答えるように歩みを進め始める。


聖教会の腕が止まった場所。そこにはかすかに次元の裂け目のようなものが見えた。


それはベールのように海とともに波打つ。


カイリはそんな結界領域の壁にぶつかりそうになった時、恐怖から思わず目を閉じてしまった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

光が目に差し込む。鳥の声、草がなびく音、風の音色。


そんなものが目を閉じていても体感することができた。


ゆっくりと目を開く。


「ここが、、、」


ゆっくりと周りを見渡す。


苔が生え、周りの景色を遮断する連続ビル。かつての道路を感じさせる大きなみどり道。ネオンライトが消えた看板。そこら中に滴る水。


そこは、美しき廃都であった。


息をのむ。


「ここがミルの結界領域」


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